栗花落と姫と妖と……

浅井 ことは

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新しい生活

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お昼休みはまだ終わっていないが、震える手でスマホを取りだし、説明だけでもメッセージを送ろうと栗花落を探すが、指が震えて上手く押せない。

直接電話をしていいのだろうか?

だが、このまま昇降口の傘立てに座り込んでいる訳にもいかない。

プルルルルと音がし、『もしもし、何かありましたか?』とすぐ電話に出てくれた栗花落。

「私……お昼ご飯食べてて……窓から人影が……。見に行ったら……」

『今どこです?』

「しょ、昇降口」

『そこにいてください』

居てくださいと言われても5限目が始まってしまう。

でも、足が震えて上手く歩ける気もしない。

チャイムが鳴り、どうしようと思っていると、「姫!」と栗花落が駆け込んでくる。

「栗花落……さん」

「……どこに行ったんです?臭いが。なにかに触れましたか?」

「扉を開けただけ……」

立ち上がらせてもらった瞬間、涙が止まらなくなってわんわんと泣いてしまう。

大丈夫と頭を撫でられ、少し落ち着いたところで「帰りましょう」と言われる。

「でも、まだ」

「だめです。鞄を取ってきます。ほんの少しだけここに居てください」

うん。とまた座ったのはいいが、ここは女子校。

若い大学生の男性が授業中の教室に入るなんて有り得ない!

そうは思うのに体が言うことを聞かない!



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