栗花落と姫と妖と……

新しい生活

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「美味しいです」

「本当？実は初めて作ったの。家庭科でも切るのとか苦手で……」

「上手に切れてますよ」と繋がったきゅうりを見せられる。

「うそ、切れてなかった……」

「初めてにしては上出来だと思いますよ。でも包丁を使う時は気をつけてくださいね」

「わ、分かりました」と自分も1口。

「このコーヒーは、なんのブレンドなの？」

「五種類の豆を挽いてもらってるんです。この先のコーヒー専門店で気に入ってしまって、毎回お願いしてます」

「今度行ってみたい」

「良いですよ。店内でも試飲できますから好みのものが見つかるかもしれませんね」

この近くを散歩してみたいと言うと、それもひとりではダメと言われ、自由がないと言うと危ないからと言われる。

「本来ならばアルバイトも……」

「それだけはさせて。ちゃんとここに帰ってくるから……」

あと一つでも好きなことが出来ないようなら家出でもしてやろうかと思ったが、バイトはせめて平日の水曜だけにして欲しいと言われる。

「ゴールデンウィークは忙しいから、その後に店長に話してみるけど……」

「我儘ばかり押し付けて悪いと思っています。ただ……」

「思い出せ……でしょ？」

コクンと頷くので、考えさせて欲しいとだけ言う。