52 / 102
盛夏
.
しおりを挟む
流石に海やプールは疲れると昼寝をしに行き、クーラーをつけて横になると、背中がひりひりするので、洗面所に見に行くと顔まで真っ黒だった。
「こんなに焼けたの初めてかも」
顔を洗ってベッドに戻り、横になっているといつの間にか寝ていた。
起きていくと、まだ海都は寝ていると言われ、夕飯の支度を手伝う。棟梁が台を作ってくれたので、車椅子のままでも野菜などは切れるし、手伝うぶんには困ることは無かった。
「雪翔君、ハムときゅうり切っておいてね、今日は冷やし中華だから」
「うん」
ザルから冷えたきゅうりを取り出し、斜めに切ってから縦に細く切っていく。ハムも細切りにしてお皿に載せると、卵が来たのでそれも切り、あとはいいと言われたので、手を洗ってから板の間に上がる。
「栞さん、やっぱり僕……学校行きたいな」
「えぇ?まだお医者さんがいいって言ってないし……那智様にも相談しないと」
「ダメって言われてるもん」
「そうねぇ、まだまだ時間はあるからゆっくり考えましょう?ね?」
「分かった……」
夕飯を食べ終わってから隆弘の部屋に行き、パソコンの説明書でわからない所を聞くと、設定してくれると言うので部屋まで来てもらい、ホームページに検索できる大手サイトを貼り付けてもらう。
「良かった。何度やってもできなくって……」
「以外に面倒だからなぁ。でも、これですぐ画面が出るから楽になると思うぞ」
「ありがとう。それで……」
「なんだ?」
「あ、お茶のむ?」と誤魔化して冷蔵庫からお茶を取り出して氷を入れたグラスに入れて渡す。
ソファに腰掛けてどう言おうか迷っていると、学校か?と聞かれる。
「海で同級生に会って、新学期から来れるといいねって。でも、みんな行かなくていいって言うし……」
「そうだな。無理していかなくてもいいとは思うし、高卒の試験も今はあるから大学にも行ける。中退しても事故なら、仕事に就いても何も言われないと思うしってみんなで考えてた。だが、俺はどっち付かずでもあるんだよ」
「え?」
「たしかに今は治すことが先決だし、まだ何も終わってないよな?」
「うん」
「雪翔は思い出すのは怖いか?」
「怖い……でも、思い出せるのなら知りたいとも思う」
「キツイかもしれなくても?」
「自分のことだから……」
「よし!明日は学校まで見に行ってみるか?少しずつ慣らしても良いかもしれないし」
「連れてってくれるの?」
「内緒だぞ?それに見るだけだからな?」
「分かった!ありがとう」
明日の朝涼しい時間に行くことを決めて隆弘は部屋に戻り、手すりに捕まってお風呂に入る。
風呂から出ると紫狐が金と銀を連れて怒った顔で立っていた。
「しーちゃん?」
「行っちゃダメです!」
「知りたいんだ……」
「紫狐は那智様たちとお約束があるのです!学校には行かせてはいけないって!」
「お願い!見るだけだから……隆弘さんもいるし平気だよ。無理はしないから!」
「紫狐は那智様にご報告です!ま、前も……もっと早くに言っていればと後悔してます!」
金と銀まで連れて姿を消したので、絶対に来る!と思ってビクビクしていたが、遅くなっても那智は来ず、紫狐も帰ってこない。
「明日の朝かなぁ?」
仕方なく薬を飲んでから横になり、起きるともう明るくなっていた。
「こんなに焼けたの初めてかも」
顔を洗ってベッドに戻り、横になっているといつの間にか寝ていた。
起きていくと、まだ海都は寝ていると言われ、夕飯の支度を手伝う。棟梁が台を作ってくれたので、車椅子のままでも野菜などは切れるし、手伝うぶんには困ることは無かった。
「雪翔君、ハムときゅうり切っておいてね、今日は冷やし中華だから」
「うん」
ザルから冷えたきゅうりを取り出し、斜めに切ってから縦に細く切っていく。ハムも細切りにしてお皿に載せると、卵が来たのでそれも切り、あとはいいと言われたので、手を洗ってから板の間に上がる。
「栞さん、やっぱり僕……学校行きたいな」
「えぇ?まだお医者さんがいいって言ってないし……那智様にも相談しないと」
「ダメって言われてるもん」
「そうねぇ、まだまだ時間はあるからゆっくり考えましょう?ね?」
「分かった……」
夕飯を食べ終わってから隆弘の部屋に行き、パソコンの説明書でわからない所を聞くと、設定してくれると言うので部屋まで来てもらい、ホームページに検索できる大手サイトを貼り付けてもらう。
「良かった。何度やってもできなくって……」
「以外に面倒だからなぁ。でも、これですぐ画面が出るから楽になると思うぞ」
「ありがとう。それで……」
「なんだ?」
「あ、お茶のむ?」と誤魔化して冷蔵庫からお茶を取り出して氷を入れたグラスに入れて渡す。
ソファに腰掛けてどう言おうか迷っていると、学校か?と聞かれる。
「海で同級生に会って、新学期から来れるといいねって。でも、みんな行かなくていいって言うし……」
「そうだな。無理していかなくてもいいとは思うし、高卒の試験も今はあるから大学にも行ける。中退しても事故なら、仕事に就いても何も言われないと思うしってみんなで考えてた。だが、俺はどっち付かずでもあるんだよ」
「え?」
「たしかに今は治すことが先決だし、まだ何も終わってないよな?」
「うん」
「雪翔は思い出すのは怖いか?」
「怖い……でも、思い出せるのなら知りたいとも思う」
「キツイかもしれなくても?」
「自分のことだから……」
「よし!明日は学校まで見に行ってみるか?少しずつ慣らしても良いかもしれないし」
「連れてってくれるの?」
「内緒だぞ?それに見るだけだからな?」
「分かった!ありがとう」
明日の朝涼しい時間に行くことを決めて隆弘は部屋に戻り、手すりに捕まってお風呂に入る。
風呂から出ると紫狐が金と銀を連れて怒った顔で立っていた。
「しーちゃん?」
「行っちゃダメです!」
「知りたいんだ……」
「紫狐は那智様たちとお約束があるのです!学校には行かせてはいけないって!」
「お願い!見るだけだから……隆弘さんもいるし平気だよ。無理はしないから!」
「紫狐は那智様にご報告です!ま、前も……もっと早くに言っていればと後悔してます!」
金と銀まで連れて姿を消したので、絶対に来る!と思ってビクビクしていたが、遅くなっても那智は来ず、紫狐も帰ってこない。
「明日の朝かなぁ?」
仕方なく薬を飲んでから横になり、起きるともう明るくなっていた。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
下宿屋 東風荘 5
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*゜☆.。.:*゚☆
下宿屋を営む天狐の養子となった雪翔。
車椅子生活を送りながらも、みんなに助けられながらリハビリを続け、少しだけ掴まりながら歩けるようにまでなった。
そんな雪翔と新しい下宿屋で再開した幼馴染の航平。
彼にも何かの能力が?
そんな幼馴染に狐の養子になったことを気づかれ、一緒に狐の国に行くが、そこで思わぬハプニングが__
雪翔にのんびり学生生活は戻ってくるのか!?
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆
イラストの無断使用は固くお断りさせて頂いております。
下宿屋 東風荘
浅井 ことは
キャラ文芸
神社に憑く妖狐の冬弥は、神社の敷地内にある民家を改装して下宿屋をやっている。
ある日、神社で祈りの声を聞いていた冬弥は、とある子供に目をつけた。
その少年は、どうやら特異な霊媒体質のようで?
妖怪と人間が織り成す、お稲荷人情物語。
※この作品は、エブリスタにて掲載しており、シリーズ作品として全7作で完結となっております。
※話数という形での掲載ですが、小見出しの章、全体で一作という形にて書いております。
読みづらい等あるかもしれませんが、楽しんでいただければ何よりです。
エブリスタ様にて。
2017年SKYHIGH文庫最終選考。
2018年ほっこり特集掲載作品
化想操術師の日常
茶野森かのこ
キャラ文芸
たった一つの線で、世界が変わる。
化想操術師という仕事がある。
一般的には知られていないが、化想は誰にでも起きる可能性のある現象で、悲しみや苦しみが心に抱えきれなくなった時、人は無意識の内に化想と呼ばれるものを体の外に生み出してしまう。それは、空間や物や生き物と、その人の心を占めるものである為、様々だ。
化想操術師とは、頭の中に思い描いたものを、その指先を通して、現実に生み出す事が出来る力を持つ人達の事。本来なら無意識でしか出せない化想を、意識的に操る事が出来た。
クズミ化想社は、そんな化想に苦しむ人々に寄り添い、救う仕事をしている。
社長である九頭見志乃歩は、自身も化想を扱いながら、化想患者限定でカウンセラーをしている。
社員は自身を含めて四名。
九頭見野雪という少年は、化想を生み出す能力に長けていた。志乃歩の養子に入っている。
常に無表情であるが、それは感情を失わせるような過去があったからだ。それでも、志乃歩との出会いによって、その心はいつも誰かに寄り添おうとしている、優しい少年だ。
他に、志乃歩の秘書でもある黒兎、口は悪いが料理の腕前はピカイチの姫子、野雪が生み出した巨大な犬の化想のシロ。彼らは、山の中にある洋館で、賑やかに共同生活を送っていた。
その洋館に、新たな住人が加わった。
記憶を失った少女、たま子。化想が扱える彼女は、記憶が戻るまでの間、野雪達と共に過ごす事となった。
だが、記憶を失くしたたま子には、ある目的があった。
たま子はクズミ化想社の一人として、志乃歩や野雪と共に、化想を出してしまった人々の様々な思いに触れていく。
壊れた友情で海に閉じこもる少年、自分への後悔に復讐に走る女性、絵を描く度に化想を出してしまう少年。
化想操術の古い歴史を持つ、阿木之亥という家の人々、重ねた野雪の過去、初めて出来た好きなもの、焦がれた自由、犠牲にしても守らなきゃいけないもの。
野雪とたま子、化想を取り巻く彼らのお話です。
少年、その愛 〜愛する男に斬られるのもまた甘美か?〜
西浦夕緋
キャラ文芸
15歳の少年篤弘はある日、夏朗と名乗る17歳の少年と出会う。
彼は篤弘の初恋の少女が入信を望み続けた宗教団体・李凰国(りおうこく)の男だった。
亡くなった少女の想いを受け継ぎ篤弘は李凰国に入信するが、そこは想像を絶する世界である。
罪人の公開処刑、抗争する新興宗教団体に属する少女の殺害、
そして十数年前に親元から拉致され李凰国に迎え入れられた少年少女達の運命。
「愛する男に斬られるのもまた甘美か?」
李凰国に正義は存在しない。それでも彼は李凰国を愛した。
「おまえの愛の中に散りゆくことができるのを嬉しく思う。」
李凰国に生きる少年少女達の魂、信念、孤独、そして愛を描く。
下宿屋 東風荘 6
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*°☆.。.:*・°☆*:..
楽しい旅行のあと、陰陽師を名乗る男から奇襲を受けた下宿屋 東風荘。
それぞれの社のお狐達が守ってくれる中、幼馴染航平もお狐様の養子となり、新たに新学期を迎えるが______
雪翔に平穏な日々はいつ訪れるのか……
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆
表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。
宵待ちカフェ開店です
真風月花
ライト文芸
寂しさを抱えた者が暮らす宵待荘での日々は、とても穏やか。沙雪は、母親代わりのすみれさんを助けるために、下宿している宵待荘でカフェを開いている。なのに沙雪の大好きな准教授、伊吹先生が帰国するから、心穏やかでなんかいられない。
佐世保黒猫アンダーグラウンド―人外ジャズ喫茶でバイト始めました―
御結頂戴
キャラ文芸
高校一年生のカズキは、ある日突然現れた“黒い虎のような猫”ハヤキに連れられて
長崎の佐世保にかつて存在した、駅前地下商店街を模倣した異空間
【佐世保地下異界商店街】へと迷い込んでしまった。
――神・妖怪・人外が交流や買い物を行ない、浮世の肩身の狭さを忘れ楽しむ街。
そんな場所で、カズキは元の世界に戻るために、種族不明の店主が営むジャズ喫茶
(もちろんお客は人外のみ)でバイトをする事になり、様々な騒動に巻き込まれる事に。
かつての時代に囚われた世界で、かつて存在したもの達が生きる。そんな物語。
--------------
主人公:和祁(カズキ)。高校一年生。なんか人外に好かれる。
相棒 :速来(ハヤキ)。長毛種で白い虎模様の黒猫。人型は浅黒い肌に金髪のイケメン。
店主 :丈牙(ジョウガ)。人外ジャズ喫茶の店主。人当たりが良いが中身は腹黒い。
※字数少な目で、更新時は一日に数回更新の時もアリ。
1月からは更新のんびりになります。
遥か
カリフォルニアデスロールの野良兎
キャラ文芸
鶴木援(ツルギタスケ)は、疲労状態で仕事から帰宅する。何も無い日常にトラウマを抱えた過去、何も起きなかったであろう未来を抱えたまま、何故か誤って監獄街に迷い込む。
生きることを問いかける薄暗いロー・ファンタジー。
表紙 @kafui_k_h
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる