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浅井 ことは

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魔界から幻界へ

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商店街の一角にある流行っていない今にもつぶれそうな薬屋。
高級食材など商店街にあるはずもなく、一番いい肉ばかり買っても怪しまれるので、朝のうちに買い付けに行っている。

近所で買うのは酒屋でビールやウイスキー、調味料など。
八百屋と鮮魚店では普通に秋刀魚なども買う。
精肉店では安い細切れなどを買うが、最近ではその肉はムー用になっている。

「まぁ、貧乏暮らしの様に振る舞ってはいる」

「もっといいところに住めば?」

「考えたんだが……街中に行くと確かに儲かるだろうがな、それはそれで薬局だけとはいかないんだ。一応医師免許など色々持ってはいるんだが……」

「それ、どうやってんの?」

「幻界のやつがいてな、うまくその時に合わせた証明書を作ってくれる」

「で?」

「街では美容外科やエステが今はもうけれるだろう。ある程度、サプリとして効果のある痩せ薬を混ぜたら儲かるだろうが。とにかく人間を雇うのが面倒だ。だから薬屋だけでいいと思ってるよ。住みかもあるしな」

「じゃぁ、あの場所から動く気はないんだな」

「今のところは。まぁ、手狭になったら考えんこともないが。で、この宴はいつまで続くんだ?」

「魔界でも一応朝は来る。暗さは変わらんが、三日三晩は続くだろう」

「そうか。では残りの食事をいただこうか」

「俺はまだ回らないといけないとこがある。ゆっくりしてくれ」そう言って人混みの中に消えていくのを確認し、ムーを連れて席を立つ。

部屋に向かう途中誰にも会わず、着替えと荷物を整理する。

「帰るのですか?」

「あぁ、家にな」

窓から抜け出し、ゲートも魔方陣も開かずに森の離れでそのまま姿を消す。

「ここは?」

「幻想界。幻界と呼ばれている。
ここが本来の私の家があるところだ」

「へぇー。あ、ちょうちょが飛んでる」

「あれは妖精だ。羽のはえた小さい人って所だ」

「花も凄い……」

「長くは滞在しない。材料集めとちょっと家に顔を出しに行くだけだ」

「僕もですか?」

「もちろんだ。今から家に向かいながら材料を集めていく。
魔界とは違いここには危険なことはないからゆっくりするといい」

歩きながら幻草・幻石・幻とかげなど収集していく。
袋一杯集める頃には城の前に着いていた。

「ここだ」

門の前には門番がいて、顔を見るなり敬礼をし門を開けてくれる。
礼など言わずに当たり前のように中にはいる。
そのまま王座の間まで行き、扉を開け勝手に入っていく。
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