下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
60 / 68
封印

.

しおりを挟む
「何してるの?片付けようよ……」

金と銀が、部屋ができたから持っていく本を探してるといい、翡翠は選んだであろう絵本を、寝転びながら見ている。

紫狐に至っては「フリフリダンスの……」とあるはずのない本を探しており、「片付けるまでおやつ禁止!」とつい叫んでしまった。

「雪翔、ちょっといいか?」

「那智さんどうしたの?」

「俺は今から一足先に帰るが、お前体の調子はどうだ?」

「何で?」

足が軽くなったこと以外何も無いというと、「航平に分け与えたのは俺の八尾の力だ。それでも能力が少し出すぎた所があったから、雪翔の場合どうなったのかと思ってな」

「力使ってないからわかんないけど、気を付けろってことだよね?」

「そういう事だ」と頭を撫で撫でされるので、「やっぱり僕、もう少し身長が欲しい……」と肩を落とす。

「今手を置くのに丁度いい位置なのに……」と残念がられたが、「また歩けるようになったら変わるだろ?」ともいわれた。

那智が先に帰り、翌朝荷物を先に送ってもらってから「また来るからね」と言って栞と冬弥と帰宅したのは早朝。

それから久しぶりの下宿を手伝おうと、冬弥と二人で厨房に入ると、秋彪と玲、那智の三人がボウルに山積みにされた野菜を切っており、ポカーンと見ていた自分と冬弥を見て、早く変わってくれと言ってくる。

玲は大鍋で味噌汁を作っており、秋彪はお茶やご飯などをワゴンに乗せて運んでおり、那智は野菜と格闘……

「あ、朝ごはん何?」

「焼き魚と米と味噌汁に漬物!」

那智がどうだとばかりに胸を張って言うので、もしかしてずっと魚料理だったのかと聞くと、肉料理の時は冬弥の狐たちが作っていたらしい。

「サラダを切るのだけが面倒で、いつもジャンケンなんだが……そうそう、賢司の所から野菜が送られてきた。漬物用だけは洗ったんだが、あとは任せる」

「じゃあ、私はぬか床でも見ましょうかねぇ」

「僕は?」

「この切った野菜を何とかしてくれ……」

もしかしなくてもお皿に載せてドレッシングかけたらいいとか思ってたんじゃないよね?と聞くと、ダメだったか?と普通に聞き返されてしまう。

千切りになっていないキャベツ。
ほぼ1センチ感覚の輪切りのきゅうり。

少し考えてから野菜庫を開けてパプリカの赤と黄色を取り出して、種をとってから横にし、手際よく千切りにして、一番大きいボウルにすべてを入れて軽く塩コショウをして混ぜる。

「なんで塩コショウしてるんだ?」

「これでレモン汁掛けるだけで美味しいから。パプリカも甘いし。それにこんなぶつ切りじゃ今から切り直しても間に合わない……」

「言ったなー!」

「ごめんなさい!だって、魚に関しては凄いのになんで野菜はこうなの?」

「人数が多いだろ?もう腕が疲れてくるんだよ。野菜切り出すと」

それもそうだと思いながらも時計を見て、時間が!と、冬弥を呼び朝ごはんのチャイムを鳴らす。

「いっちばーん!」と海都がやって来て、おかずを取っていき、席に置いてからご飯を大盛り、味噌汁も大盛りで盛り付け、「雪翔こっち来いよ」とお盆にご飯を乗せて持ってきてくれる。

いただきますと言って魚を食べていると、「那智さんの魚は美味い!」と絶賛していたので、話を聞くと、魚料理が多くて最初は文句を言ってた者も、那智の魚料理が美味しいから文句を言わなくなったことや、野菜料理は玲が上手だという事を聞き、「秋彪さんは?」と聞くと、「秋彪さんは運んだあとすぐに一緒にご飯食べ出すから、料理は食べたことがない」と言う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神さまのお家 廃神社の神さまと神使になった俺の復興計画

りんくま
キャラ文芸
家に帰ると、自分の部屋が火事で無くなった。身寄りもなく、一人暮らしをしていた木花 佐久夜(このはな さくや) は、大家に突然の退去を言い渡される。 同情した消防士におにぎり二個渡され、当てもなく彷徨っていると、招き猫の面を被った小さな神さまが現れた。 小さな神さまは、廃神社の神様で、名もなく人々に忘れられた存在だった。 衣食住の住だけは保証してくれると言われ、取り敢えず落ちこぼれの神さまの神使となった佐久夜。 受けた御恩?に報いる為、神さまと一緒に、神社復興を目指します。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

毒小町、宮中にめぐり逢ふ

鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。 生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。 しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。

京都和み堂書店でお悩み承ります

葉方萌生
キャラ文芸
建仁寺へと続く道、祇園のとある路地に佇む書店、その名も『京都和み堂書店」。 アルバイトとして新米書店員となった三谷菜花は、一見普通の書店である和み堂での仕事を前に、胸を躍らせていた。 “女将”の詩乃と共に、書店員として奔走する菜花だったが、実は和み堂には特殊な仕事があって——? 心が疲れた時、何かに悩んだ時、あなたの心に効く一冊をご提供します。 ぜひご利用ください。

孤独な少年の心を癒した神社のあやかし達

フェア
キャラ文芸
小学校でいじめに遭って不登校になったショウが、中学入学後に両親が交通事故に遭ったことをきっかけに山奥の神社に預けられる。心優しい神主のタカヒロと奇妙奇天烈な妖怪達との交流で少しずつ心の傷を癒やしていく、ハートフルな物語。 *丁寧に描きすぎて、なかなか神社にたどり着いてないです。

下宿屋 東風荘

浅井 ことは
キャラ文芸
神社に憑く妖狐の冬弥は、神社の敷地内にある民家を改装して下宿屋をやっている。 ある日、神社で祈りの声を聞いていた冬弥は、とある子供に目をつけた。 その少年は、どうやら特異な霊媒体質のようで? 妖怪と人間が織り成す、お稲荷人情物語。 ※この作品は、エブリスタにて掲載しており、シリーズ作品として全7作で完結となっております。 ※話数という形での掲載ですが、小見出しの章、全体で一作という形にて書いております。 読みづらい等あるかもしれませんが、楽しんでいただければ何よりです。 エブリスタ様にて。 2017年SKYHIGH文庫最終選考。 2018年ほっこり特集掲載作品

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...