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秋の国
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「冬弥さんにも、重次さんにも食べてもらってる。あまりのご飯だけど、軽く食べておいた方がいいよ。それに、疲れた顔してる」
「僕……嫌だったんだ。蛇見ると怖くなるし、荷馬車にも札がはられてたりして。だから僕が持ってたら巻物とかみんな取られちゃうって思って、冬弥さんに頼って……結局一人では何も出来なかった……」
「そんな事ない。雪翔は一人でよく頑張ってたよ?ここからたまに水盆で見させてもらってたんだけど、知らないところで頑張ってたよ?だから泣くな」
「うん……」
気が抜けたのかそのまま眠ってしまい、目が覚めた時には外は真っ暗になっていた。
自分用に作ってもらった部屋だとはわかっていたので、廊下に出て広間に一旦向かうことにし、襖を開けると、全員と言っていいみんなが揃っていた。
「どうしたの?」
祖父に聞くとぎゅーっと抱きつかれ「よう頑張った!」と褒められ、とにかく座るように言われて祖父と那智の間に座る。
「那智さん、栞さんたちは?」
「家にいる。連れてきたら発狂しそうだったし、侑弥はまだ小さい。何度も行き来させるのはあまり良くないしな。それに、玲と秋彪が付いててくれてる」
「無事ならいいんだ」
「それより、雪翔の使う札だが、もし外されたりしたらわかるのか?」
「うん、いくつか試したけど感覚で無くなったとかわかるよ?」
那智と話していると、昴と胡蝶に明日から順番に話を聞かれること、その順番で自分が一番最後だとわかり、三日後だと言われたのでゆっくりするようにと言われる。
解散と言われてもたくさん寝てしまったので、祖母の所に行って、おにぎりかなにか無いかな?と聞くと、「暖かいもののがいいでしょう?」と女中になにか頼んでくれていたので、食堂に移りご飯を待つ。
「お待たせ致しました」
お盆で運ばれてきたのは、赤だしの味噌汁。
具は大根と揚げにワカメ。
漬物は家か持ってきた糠漬けがあり、温かいご飯にしばらく食べていなかった向こうの魚の鯖。
それとだし巻き玉子。
ひと口食べて、冬弥が作ったものだとわかり、美味しいと全部食べて「ご馳走様でした」と手を合わせる。
「おお、ここにおったか」
「蘭さんも来てくれたの?」
「妾の社にも現れ、近くの社にまで手を出しておったことを話さねばならぬらしい。それよりもかなり疲れておろう?」
「僕大丈夫だよ?」
「顔色が優れぬようじゃが……食事が摂れているところを見ると、あとはよく眠れば良いであろ。それと……これを預かってきた。後で読むといい」
渡されたのは、鈴蘭の透かし模様の入った白い封筒。
すぐに栞だとわかって、中の便箋を出す。
──────
雪翔君へ
私も侑弥も元気にしてます。
話は聞きました。
お城ですべてを話して、体を休めてから帰ってきてください。
怒らないから!
侑弥も毎日、あの大きなくまのぬいぐるみで遊んでいて、時折雪翔君の部屋の方を見ることがあります。
侑弥もお兄ちゃんがいないってわかっていて、寂しいんだと思うので、帰ってきたら沢山遊んであげてね。
冬弥様と雪翔君が無事に帰ってくる事を、家で侑弥と待ってます。
栞
──────
「僕……嫌だったんだ。蛇見ると怖くなるし、荷馬車にも札がはられてたりして。だから僕が持ってたら巻物とかみんな取られちゃうって思って、冬弥さんに頼って……結局一人では何も出来なかった……」
「そんな事ない。雪翔は一人でよく頑張ってたよ?ここからたまに水盆で見させてもらってたんだけど、知らないところで頑張ってたよ?だから泣くな」
「うん……」
気が抜けたのかそのまま眠ってしまい、目が覚めた時には外は真っ暗になっていた。
自分用に作ってもらった部屋だとはわかっていたので、廊下に出て広間に一旦向かうことにし、襖を開けると、全員と言っていいみんなが揃っていた。
「どうしたの?」
祖父に聞くとぎゅーっと抱きつかれ「よう頑張った!」と褒められ、とにかく座るように言われて祖父と那智の間に座る。
「那智さん、栞さんたちは?」
「家にいる。連れてきたら発狂しそうだったし、侑弥はまだ小さい。何度も行き来させるのはあまり良くないしな。それに、玲と秋彪が付いててくれてる」
「無事ならいいんだ」
「それより、雪翔の使う札だが、もし外されたりしたらわかるのか?」
「うん、いくつか試したけど感覚で無くなったとかわかるよ?」
那智と話していると、昴と胡蝶に明日から順番に話を聞かれること、その順番で自分が一番最後だとわかり、三日後だと言われたのでゆっくりするようにと言われる。
解散と言われてもたくさん寝てしまったので、祖母の所に行って、おにぎりかなにか無いかな?と聞くと、「暖かいもののがいいでしょう?」と女中になにか頼んでくれていたので、食堂に移りご飯を待つ。
「お待たせ致しました」
お盆で運ばれてきたのは、赤だしの味噌汁。
具は大根と揚げにワカメ。
漬物は家か持ってきた糠漬けがあり、温かいご飯にしばらく食べていなかった向こうの魚の鯖。
それとだし巻き玉子。
ひと口食べて、冬弥が作ったものだとわかり、美味しいと全部食べて「ご馳走様でした」と手を合わせる。
「おお、ここにおったか」
「蘭さんも来てくれたの?」
「妾の社にも現れ、近くの社にまで手を出しておったことを話さねばならぬらしい。それよりもかなり疲れておろう?」
「僕大丈夫だよ?」
「顔色が優れぬようじゃが……食事が摂れているところを見ると、あとはよく眠れば良いであろ。それと……これを預かってきた。後で読むといい」
渡されたのは、鈴蘭の透かし模様の入った白い封筒。
すぐに栞だとわかって、中の便箋を出す。
──────
雪翔君へ
私も侑弥も元気にしてます。
話は聞きました。
お城ですべてを話して、体を休めてから帰ってきてください。
怒らないから!
侑弥も毎日、あの大きなくまのぬいぐるみで遊んでいて、時折雪翔君の部屋の方を見ることがあります。
侑弥もお兄ちゃんがいないってわかっていて、寂しいんだと思うので、帰ってきたら沢山遊んであげてね。
冬弥様と雪翔君が無事に帰ってくる事を、家で侑弥と待ってます。
栞
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