下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

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秋の国

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「本当にいい子ですねぇ」

撫で撫で撫で撫で撫で撫で………………

「ぼ、僕……まだ禿げたくないよ……」

「大丈夫、禿げません!」

「冬弥様……」

「あ、橙狐ちゃんだ」

「お久しぶりです。あの、何やら荷馬車の下に……我らが取ろうとするも、消えてしまうので見てもらいたいのですが」

影からひょこっと顔を出していた橙狐が戻り、代わりに漆と琥珀が出てくるので、自分もと檪に出てきてもらい、馬車をゆっくりと進めながら見てきてもらう。

「雪、札が。我らでは取れん」

「かなり古いもののようだけどねぇ、この馬車を買った時に気づかなかったのかい?」

琥珀に言われたので重次を見ると、買った時にすべて見たが札など無かったという。

「雪翔、翡翠はどうした?」

「あ、今出します」と漆に翡翠を差し出すと、じーじ!と言って翡翠が喜んで遊び、漆に至っては人で言う「鼻の下が伸びた」状態で可愛がっている。

「良いのかなぁ?漆様に遊んで貰って。それもじーじって……」

「いいんだよ。実はの話し、漆は大の子供好きなのさ」

「琥珀様は?」

「私は普通だねぇ。いつも教育係をさせられてるから慣れちまったよ。漆の事をみんな怖いと思ってたんだろうねぇ。影の中でも一番泣いてきたのは紫狐だしねぇ」と琥珀がチラッと紫狐を見ると、「も、もう泣いてませんー!」と冬弥の後ろに隠れている。

「ね?」

と言われ、くすくすと笑っていると、「馬車止めますから雪翔、札とってください」と言われたので、ここは白だろうと、白を呼び出す。

「白、下の札とるのに、僕が潜らないといけないんだけど……同じような力があるなら白にも取れるんじゃないかと思って」

「見てきます。皆様はそのままで待っていてください」

白がするっと幌から出ていき、暫くすると地震のように馬車が揺れたが、桔花も楓も何も感じなかったのか、バケツの水を飲んで休憩したままでいた。

「これが複数張り付いていて、まだ新しいように思えるが、かなり劣化している」と白が札を持ってきてくれた。

見た感じ、紙自体は古いものではなく、白の言うように最近貼られたものとわかる。

「なんて書いてあったんだろう?」

「一部が焼け焦げた様な感じになってますねぇ」

「白、他にはなかった?」

「これで全部だった」

ありがとうと言って戻ってもらい、札を真ん中においてみんなで見る。

「我らにもこれは読めぬな」

「漆……あんた複雑な文字はいつも無視してるじゃないか」

「そうでもないぞ?いくつか同じ文字が使われてる。特にこの札からは嫌な感じがしないが、いつ貼られたかだな」

「重次さん、宿で荷馬車預けてる時って誰でも厩に入れるよね?」

「馬と荷は別になってますから馬は関係ないと思います。それに、荷台にも私の狐を常に夜置いてましたし」
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