48 / 68
秋の国
.
しおりを挟む
「本当にいい子ですねぇ」
撫で撫で撫で撫で撫で撫で………………
「ぼ、僕……まだ禿げたくないよ……」
「大丈夫、禿げません!」
「冬弥様……」
「あ、橙狐ちゃんだ」
「お久しぶりです。あの、何やら荷馬車の下に……我らが取ろうとするも、消えてしまうので見てもらいたいのですが」
影からひょこっと顔を出していた橙狐が戻り、代わりに漆と琥珀が出てくるので、自分もと檪に出てきてもらい、馬車をゆっくりと進めながら見てきてもらう。
「雪、札が。我らでは取れん」
「かなり古いもののようだけどねぇ、この馬車を買った時に気づかなかったのかい?」
琥珀に言われたので重次を見ると、買った時にすべて見たが札など無かったという。
「雪翔、翡翠はどうした?」
「あ、今出します」と漆に翡翠を差し出すと、じーじ!と言って翡翠が喜んで遊び、漆に至っては人で言う「鼻の下が伸びた」状態で可愛がっている。
「良いのかなぁ?漆様に遊んで貰って。それもじーじって……」
「いいんだよ。実はの話し、漆は大の子供好きなのさ」
「琥珀様は?」
「私は普通だねぇ。いつも教育係をさせられてるから慣れちまったよ。漆の事をみんな怖いと思ってたんだろうねぇ。影の中でも一番泣いてきたのは紫狐だしねぇ」と琥珀がチラッと紫狐を見ると、「も、もう泣いてませんー!」と冬弥の後ろに隠れている。
「ね?」
と言われ、くすくすと笑っていると、「馬車止めますから雪翔、札とってください」と言われたので、ここは白だろうと、白を呼び出す。
「白、下の札とるのに、僕が潜らないといけないんだけど……同じような力があるなら白にも取れるんじゃないかと思って」
「見てきます。皆様はそのままで待っていてください」
白がするっと幌から出ていき、暫くすると地震のように馬車が揺れたが、桔花も楓も何も感じなかったのか、バケツの水を飲んで休憩したままでいた。
「これが複数張り付いていて、まだ新しいように思えるが、かなり劣化している」と白が札を持ってきてくれた。
見た感じ、紙自体は古いものではなく、白の言うように最近貼られたものとわかる。
「なんて書いてあったんだろう?」
「一部が焼け焦げた様な感じになってますねぇ」
「白、他にはなかった?」
「これで全部だった」
ありがとうと言って戻ってもらい、札を真ん中においてみんなで見る。
「我らにもこれは読めぬな」
「漆……あんた複雑な文字はいつも無視してるじゃないか」
「そうでもないぞ?いくつか同じ文字が使われてる。特にこの札からは嫌な感じがしないが、いつ貼られたかだな」
「重次さん、宿で荷馬車預けてる時って誰でも厩に入れるよね?」
「馬と荷は別になってますから馬は関係ないと思います。それに、荷台にも私の狐を常に夜置いてましたし」
撫で撫で撫で撫で撫で撫で………………
「ぼ、僕……まだ禿げたくないよ……」
「大丈夫、禿げません!」
「冬弥様……」
「あ、橙狐ちゃんだ」
「お久しぶりです。あの、何やら荷馬車の下に……我らが取ろうとするも、消えてしまうので見てもらいたいのですが」
影からひょこっと顔を出していた橙狐が戻り、代わりに漆と琥珀が出てくるので、自分もと檪に出てきてもらい、馬車をゆっくりと進めながら見てきてもらう。
「雪、札が。我らでは取れん」
「かなり古いもののようだけどねぇ、この馬車を買った時に気づかなかったのかい?」
琥珀に言われたので重次を見ると、買った時にすべて見たが札など無かったという。
「雪翔、翡翠はどうした?」
「あ、今出します」と漆に翡翠を差し出すと、じーじ!と言って翡翠が喜んで遊び、漆に至っては人で言う「鼻の下が伸びた」状態で可愛がっている。
「良いのかなぁ?漆様に遊んで貰って。それもじーじって……」
「いいんだよ。実はの話し、漆は大の子供好きなのさ」
「琥珀様は?」
「私は普通だねぇ。いつも教育係をさせられてるから慣れちまったよ。漆の事をみんな怖いと思ってたんだろうねぇ。影の中でも一番泣いてきたのは紫狐だしねぇ」と琥珀がチラッと紫狐を見ると、「も、もう泣いてませんー!」と冬弥の後ろに隠れている。
「ね?」
と言われ、くすくすと笑っていると、「馬車止めますから雪翔、札とってください」と言われたので、ここは白だろうと、白を呼び出す。
「白、下の札とるのに、僕が潜らないといけないんだけど……同じような力があるなら白にも取れるんじゃないかと思って」
「見てきます。皆様はそのままで待っていてください」
白がするっと幌から出ていき、暫くすると地震のように馬車が揺れたが、桔花も楓も何も感じなかったのか、バケツの水を飲んで休憩したままでいた。
「これが複数張り付いていて、まだ新しいように思えるが、かなり劣化している」と白が札を持ってきてくれた。
見た感じ、紙自体は古いものではなく、白の言うように最近貼られたものとわかる。
「なんて書いてあったんだろう?」
「一部が焼け焦げた様な感じになってますねぇ」
「白、他にはなかった?」
「これで全部だった」
ありがとうと言って戻ってもらい、札を真ん中においてみんなで見る。
「我らにもこれは読めぬな」
「漆……あんた複雑な文字はいつも無視してるじゃないか」
「そうでもないぞ?いくつか同じ文字が使われてる。特にこの札からは嫌な感じがしないが、いつ貼られたかだな」
「重次さん、宿で荷馬車預けてる時って誰でも厩に入れるよね?」
「馬と荷は別になってますから馬は関係ないと思います。それに、荷台にも私の狐を常に夜置いてましたし」
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
八百万の学校 其の弐
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
神様にお仕えする家系の第十七代目当主となった佐野翔平。
引退した祖父に、勘のいい祖母。
鈍感な兄をも巻き込み、家族みんなで神様のお悩み相談!?
そして家事を極めんとする火之迦具土神。
そんなほのぼのファンタジー其の弐!開幕!!!
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
※イラストの無断使用は禁止です。
ナマズの器
螢宮よう
キャラ文芸
時は、多種多様な文化が溶け合いはじめた時代の赤い髪の少女の物語。
不遇な赤い髪の女の子が過去、神様、因縁に巻き込まれながらも前向きに頑張り大好きな人たちを守ろうと奔走する和風ファンタジー。
下宿屋 東風荘 3
浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※
下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。
毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。
そして雪翔を息子に迎えこれからの生活を夢見るも、天狐となった冬弥は修行でなかなか下宿に戻れず。
その間に息子の雪翔は高校生になりはしたが、離れていたために苦労している息子を助けることも出来ず、後悔ばかりしていたが、やっとの事で再会を果たし、新しく下宿屋を建て替えるが___
※※※※※
【完結】孤独な少年の心を癒した神社のあやかし達
フェア
キャラ文芸
小学校でいじめに遭って不登校になったショウが、中学入学後に両親が交通事故に遭ったことをきっかけに山奥の神社に預けられる。心優しい神主のタカヒロと奇妙奇天烈な妖怪達との交流で少しずつ心の傷を癒やしていく、ハートフルな物語。
*丁寧に描きすぎて、なかなか神社にたどり着いてないです。

腐れヤクザの育成論〜私が育てました〜
古亜
キャラ文芸
たまたま出会ったヤクザをモデルにBL漫画を描いたら、本人に読まれた。
「これ描いたの、お前か?」
呼び出された先でそう問いただされ、怒られるか、あるいは消される……そう思ったのに、事態は斜め上に転がっていった。
腐(オタ)文化に疎いヤクザの組長が、立派に腐っていく話。
内容は完全に思い付き。なんでも許せる方向け。
なお作者は雑食です。誤字脱字、その他誤りがあればこっそり教えていただけると嬉しいです。
全20話くらいの予定です。毎日(1-2日おき)を目標に投稿しますが、ストックが切れたらすみません……
相変わらずヤクザさんものですが、シリアスなシリアルが最後にあるくらいなのでクスッとほっこり?いただければなと思います。
「ほっこり」枠でほっこり・じんわり大賞にエントリーしており、結果はたくさんの作品の中20位でした!応援ありがとうございました!
貧乏神の嫁入り
石田空
キャラ文芸
先祖が貧乏神のせいで、どれだけ事業を起こしても失敗ばかりしている中村家。
この年もめでたく御店を売りに出すことになり、長屋生活が終わらないと嘆いているいろりの元に、一発逆転の縁談の話が舞い込んだ。
風水師として名を馳せる鎮目家に、ぜひともと呼ばれたのだ。
貧乏神の末裔だけど受け入れてもらえるかしらと思いながらウキウキで嫁入りしたら……鎮目家の虚弱体質な跡取りのもとに嫁入りしろという。
貧乏神なのに、虚弱体質な旦那様の元に嫁いで大丈夫?
いろりと桃矢のおかしなおかしな夫婦愛。
*カクヨム、エブリスタにも掲載中。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる