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南中心街から秋へ
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「檪って人形になれたんだ……」
「なれない訳では無いが、滅多になることは無い」
「へえ、どんな姿になるんだろうね」
具沢山のコンソメスープに、少し硬いパンを浸して食べ、後片付けをしていると夏樹が「遅くなった」とやって来て、役人となにか話したあとにこちらに来る。
「災難だったな、雪翔」
「僕、結界張っただけだよ?捕まえたのは檪」
「そうか。この辺りは野党なんてほとんど出ないんだけどな……荷馬車はこれか?」
「うん」
「馬はいいが、ぱっと見どこにでもある馬車だよなぁ」
ひと通り見て、「良く見ないと機能性がいい事なんてわからない」と言っていたので、やはりいいものを買ったのだろう。
「あの人どうなるの?」
「一先ず役場に連れていくんだけど、そのあとは専門の役人達に任せることになると思う」
「翡翠の匂い探知はやっぱり凄いのかな?」
「聞く話だけだと相当鼻がいいんだな。紫狐、重次、詳しく話してくれ」
片付けの続きをしてから、荷台に積み込み話し終わったであろう夏樹のところに行き、これからも普通に旅をしていいのかと聞く。
「ゆーきーとーくーぅーん!」
「げっ!ジイジ?」
「父上、来なくていいと言ったと思うんですけど?」
「私の方の役場に連れていくことにしてもらったんだよ」
「まぁ、その方がいいと思いますけど」
「全く、海側から来たら良かったのに……」
「だって、そっちから行くとジイジ達に止められると思ったんだもん」
「勝手に出ていくからだよ?ちゃんと説明してくれたら止めたりはしないさ」
「最初に勝手に決めたの、ジイジ逹じゃん!」
「それは、みんな反省しておるよ。あっかんべまでされてバアバも落ち込んでるし」
「あれはあれで面白かったけどな。みんなのあの顔」と夏樹はくつくつと笑っている。
「お館様……あの……」
「ああ、旅はそのままで構わん。重次は引き続き雪翔を頼む。で、何か術を使ったとか?」
「うん、これなんだけど……」と馬車に刺していたうちの一つの針を抜いて見せる。
確認はしなければと思いながら、今引き抜いた一つは巻いてある札も無事だったので、まだ使えるなと一つ渡したあとに全部回収してチェックする。
「これが術に繋がるって事なのか?」
「うん、僕の車椅子にも仕込んであるよ。それのお陰で入ってこれなかったみたい」
「成程……」
「で、紫狐がしきりに馬鹿だと言っていたこの男の事は、情報の共有としてみんなに話すからそのつもりでな?」
「え?強制的に戻されるのはやだよ?」
「ジイジが保証しよう。ただ、少し手を貸させておくれ」
「何?」
「このトンネルを通るのはいいが、同じこやつらの仲間が潜んでるとも限らん。境界線等で縄張りがわかれておるのがほとんどだから、優先的に通れる様にさせておくれ。今夜は野宿だそうだが、宿なら……「だめ!」
「はははっ!残念だったな父上!」
「ならばせめてこの荷馬車が止められる様に確保を……「やだ!」
ガクッと肩を落としているが、旅自体は基本的に自分たちで行きたい事、今回のようなことがあれば連絡はするが、それ以外の春休みが終わるまでの三ヶ月間はこのまま自力で旅をしたいことを伝え、男を引き取って早く行ってと祖父を急かす。
「なれない訳では無いが、滅多になることは無い」
「へえ、どんな姿になるんだろうね」
具沢山のコンソメスープに、少し硬いパンを浸して食べ、後片付けをしていると夏樹が「遅くなった」とやって来て、役人となにか話したあとにこちらに来る。
「災難だったな、雪翔」
「僕、結界張っただけだよ?捕まえたのは檪」
「そうか。この辺りは野党なんてほとんど出ないんだけどな……荷馬車はこれか?」
「うん」
「馬はいいが、ぱっと見どこにでもある馬車だよなぁ」
ひと通り見て、「良く見ないと機能性がいい事なんてわからない」と言っていたので、やはりいいものを買ったのだろう。
「あの人どうなるの?」
「一先ず役場に連れていくんだけど、そのあとは専門の役人達に任せることになると思う」
「翡翠の匂い探知はやっぱり凄いのかな?」
「聞く話だけだと相当鼻がいいんだな。紫狐、重次、詳しく話してくれ」
片付けの続きをしてから、荷台に積み込み話し終わったであろう夏樹のところに行き、これからも普通に旅をしていいのかと聞く。
「ゆーきーとーくーぅーん!」
「げっ!ジイジ?」
「父上、来なくていいと言ったと思うんですけど?」
「私の方の役場に連れていくことにしてもらったんだよ」
「まぁ、その方がいいと思いますけど」
「全く、海側から来たら良かったのに……」
「だって、そっちから行くとジイジ達に止められると思ったんだもん」
「勝手に出ていくからだよ?ちゃんと説明してくれたら止めたりはしないさ」
「最初に勝手に決めたの、ジイジ逹じゃん!」
「それは、みんな反省しておるよ。あっかんべまでされてバアバも落ち込んでるし」
「あれはあれで面白かったけどな。みんなのあの顔」と夏樹はくつくつと笑っている。
「お館様……あの……」
「ああ、旅はそのままで構わん。重次は引き続き雪翔を頼む。で、何か術を使ったとか?」
「うん、これなんだけど……」と馬車に刺していたうちの一つの針を抜いて見せる。
確認はしなければと思いながら、今引き抜いた一つは巻いてある札も無事だったので、まだ使えるなと一つ渡したあとに全部回収してチェックする。
「これが術に繋がるって事なのか?」
「うん、僕の車椅子にも仕込んであるよ。それのお陰で入ってこれなかったみたい」
「成程……」
「で、紫狐がしきりに馬鹿だと言っていたこの男の事は、情報の共有としてみんなに話すからそのつもりでな?」
「え?強制的に戻されるのはやだよ?」
「ジイジが保証しよう。ただ、少し手を貸させておくれ」
「何?」
「このトンネルを通るのはいいが、同じこやつらの仲間が潜んでるとも限らん。境界線等で縄張りがわかれておるのがほとんどだから、優先的に通れる様にさせておくれ。今夜は野宿だそうだが、宿なら……「だめ!」
「はははっ!残念だったな父上!」
「ならばせめてこの荷馬車が止められる様に確保を……「やだ!」
ガクッと肩を落としているが、旅自体は基本的に自分たちで行きたい事、今回のようなことがあれば連絡はするが、それ以外の春休みが終わるまでの三ヶ月間はこのまま自力で旅をしたいことを伝え、男を引き取って早く行ってと祖父を急かす。
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