下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

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南中心街から秋へ

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白雪姫を読むと、「鏡に向かって綺麗かどうかきくのー?」
「知らない人からものもらったらいけないんだよ!」
「ひーたんもリンゴ!」

いつものように言いたい放題言っていて、ずっと我慢していたのか、重次がゲラゲラと笑い出してしまった。

「素直な感想じゃないですか。私も思わず納得しそうになりました」

「僕も思わないことはないけど、さすがに素直すぎでしょ?」

「ですが、一度読んだだけでかなり理解が早いので、そこは驚いてますが」

「そう言われるとそうなんだけどね、金たち見てたら、侑弥に読んで聞かせるのが怖くなっちゃうよ。前も家で、天女の羽衣読んでたら、隠すなんてずるいとか、羽衣見つけて天に帰るところでは、当たり前だとかって言うんだよ?お父さんとかお母さんて、こんな気分なのかな……」

「まだ小さいですから、そんなに深く考えなくても良いのでは?そろそろ町につきますけど、だいぶ南のハズレに来たので宿は期待しないでください」

みんなに本を片付けてと言ってから、書き写したものなども仕舞い、降りる準備をしていると、町と言うよりも前に見たことのある村のような集落が目に入った。

「ここ、村じゃないの?」

「ここは村ですが抜けると街があります。まだ栄えている方なので、野党などはいないと思いますが、夜は見張りをつけますので安心してください」

村を抜け町に出ると、今までと建物が大きく違っており、洋風と言うよりは古い二階建ての建物。人間の世界でいう一戸建てが沢山並んでおり、扉も引き戸が多かった。

「重次さん、あっちの民家みたいだね」

「そうですね。街の中心から離れるとこのような建物が多いです。もっと先に行くと、平屋建ての家屋が多くなります」

「秋の国はどんな感じなのかな?」

「南とも東とも違いますから驚くと思いますよ?」

一番大きな建物で宿を取り、桔花を繋いで重次と一緒に体を拭き、ブラシをかけてから宿に入り、先にお風呂に入る。

「坊っちゃま、私もお風呂を頂いてきます。あと連絡をしますが、なにか伝えておくことはありますか?」

「本の解読したものを胡蝶さんと昴さんが見たいって言ってたことだけ伝えて」

重次が出ていってから、机に向かって一日一枚と決めた課題を解いていき、このあたりの夕餉はなんだろうと紫狐を呼んで聞く。

「この辺りは、芋です。昔ですけど、ここを通った時は芋しか出ませんでした。今は分かりませんけど、米が出るかどうか……」

「そんなに寂れた町なの?」

「紫狐も一度しか南から東に行ったことがないのです。それもかなり昔なので、今のこの辺りのことはわからないのですー」

「芋ってサツマイモかな?」

「じゃがいものような芋です。よく取れる芋で、秋の国は主食だったように思います。特に田舎は……ここは海から回ってきてないのでかなり田舎ですから、裕福ではないと思いますー」

「そうなんだ。もうすぐ秋の国に入るのかな?」

「そろそろだと思いますよ?でも、ここから山道は避けていくと思うのですけど、そうすると何日か山を越えるのに時間がかかります」

「山越えするの?」
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