下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

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南中心街から秋へ

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重次が地図を出して、「ここからここまで」と線を引き、「必ず出ます!私一人でお守りすることはできますが、数にもよります。手を抜いて村のものを倒し、逃げるのは容易いですが、そのままにしておくと凍死したりもします。家まで運んで解放して等していては先に進めません。坊っちゃまがみんなを助けたいという気持ちと、自分が助からなければいけないという気持ち。坊っちゃまなら相手を思うことでしょうが、逃げることを優先しますし、坊っちゃまもしてください」

「そんな事……」

「決断するのも大切な事です。坊っちゃまが一人一人面倒が見れるのでしたらお止めしません」

「そんないい方酷いよ」

「坊っちゃまは強くなられたいんでしょう?旅を選んだ時に当たる壁だと思いました。まずは周りをよく見てください。そして逃げてください。それは約束してくださいね」

「ど、努力する」

次の日は朝からチラチラと粉雪が降っていたが、積もる様子もなかったのでそのまま出発し、桔花の背にも暖かくて軽い毛布をかけておいた。

「ここからまっすぐ街道行くの?」

「先に買い物をします。火鉢だけでは寒いでしょう?」

「ジャンバー着てるからなんとかなってるけど、秋に行ったらもっと寒いんだよね?」

「今日は境界まで行きます。吹雪いてきたら近くに泊まりますが」

「うん」

そう言いつつ、また書き写しに専念し、紫狐にも手伝ってもらう。

「ひーたんもー」

「絵本読んでてよ」

「むむー!」

そのあと買い物をし、火鉢を追加で買っておいてあるが、今つけたらもっと寒くなった時に耐えられなくなると思い、みんなでくっついて暖を取り、書き写している横では、金と銀が翡翠と一緒にぶんぶく茶釜を読んでいた。

「それ、どんな話だったっけ?」

紫狐の話では、「和尚さんが古い茶釜を買ってきて、お湯を沸かそうと火にかけたら、茶釜が「熱い!」って悲鳴をあげたんですー。気味悪がった和尚さんは、古道具屋にただで譲ったんですー。

古道具屋さんは家に持って帰って、あとから使おうとして、その茶釜がタヌキが化けたものだと知ったんですけど、タヌキはその姿のまま元に戻れなくなってしまったというので、古道具屋さんはタヌキの言われたままに見せ物小屋を作ってあげて、分福茶釜と言って見せ物をしてたくさんのお金を稼いだんですー。

でも、タヌキは病気になってしまったのですー。それも茶釜の姿のまま死んでしまったんですよ?古道具屋さんは茶釜をお寺に運んで供養してもらったんですー」

「たぬきのまま死ねばよかったのにな」
「もうどっちが本当の姿かわからなかったんじゃない?」
「でもさ、火葬?土葬?」
「いや、その前に古道具屋のおっちゃんぼろ儲けってやつだよなー」

相変わらず的を得てはいるが、本音丸出しの絵本の評価には頭を抱えてしまう。
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