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南中心街から秋へ
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「もう、なんで変なものもたすのかなぁ。しーちやん、みんなに渡したらダメだよ?」
「みんな持ってますよ?いっちーも!」
「鉄板入り?」
「普通のですー!頭に紙風船乗せて戦うのですー」
「鉄板入りで?」
「その時はこのピンクのハリセンでしますー!」
「誰?そんなの考えたの!」
「栞様ですよ?勝手に出てくんだから、悪いことしたらこれでペシッてしてねっと言われて、そのあと冬弥様が、これでは面白くないと、かっこよくしてくれましたー」
「とにかく!鉄板入りは禁止ね?」
「じゃあ、ちゃんとお約束は守ってくださいねー」
紫狐が栞に言われているというお約束を聞かされ、頭を抱えていると、檪が「書き写しはもういいのか?」と聞いてきたので再開し、荷台が止まるまで続けて一旦影の中にしまう。
「坊っちゃま、ここからさらに脇道に入ると町なのですが、休まれます?」
「僕はいいよ。桔花と重次さんに合わせる」
「あと一息なので進みましょうか。宿が取れるといいのですが」
「並んでた人達は動けたのかな?」
「脇道にそれることが出来た者は、私たちよりはあとに着くと思います。この道は地元の人しか通らないところなので、順調に進めましたが、もう一つ手前は混んだと思いますから」
町はすぐに見え、いくつか荷馬車が止まっていたが、混んでいるようでもなかったので部屋を取り、桔花を繋いでお疲れ様と体を撫でる。
「もう怖くないですか?」
「うん。目がうるうるしてて可愛い。それに、良く見ると尻尾までさらさらだよね」
「毎日朝に手入れしてますから」
「そんなに早く起きてるの?」
「癖もあります。これでも風の一族ですので、物音一つ、気配でも起きます。それに、毎日の手入れでもっと仲良くなろうと思いまして」
「恋人みたいだね」
「馬愛です!」
「あははっ!もう、笑わさないでよ。今度僕もやりたい。それと、入口に温泉て書いてあったけど」
「この辺りは、温泉が出ます。露天風呂から海が見えたらいいんですけど、場所的にもうだいぶ離れましたから、見えても山ですね」
「山って夜は怖いイメージがあるよ?ザワザワって音と、暗いのにたまに湯気が出てたりして」
「それは気温差で出るのだと聞いたことがあります。確かに夜中は静かで不気味ですが、鍛錬にはいい所ですよ?」
「みんな山で修行するの?」
「幼い時は山で訓練します。山のど真ん中に何も持たされずに置いていかれて、何日で戻れるか競い合ったりしました」
「ご飯とかどうするの?」
「覚えている山菜をとったり、うさぎを狩ったりですが、たいてい罠にかからなければ、その辺の草食べてました」
お風呂に向かい、岩風呂があったのでそこに浸かりながら続きを聞かせてとせがみ、「大抵、五歳くらいから始まると思ってもらえれば。その頃には能力の差が出てきてますから、その山での出来によって色々と分けられます」
「でもみんな強いんだよね?」
「基本的なことは学びますから。ですがそこで脱落したものもやはりいますし、飛びぬけて早く帰還したものもいれば、最後に到着したにも関わらず、評価が高かったりと色々とあります。ただ帰ってきただけなのか、何かを得て帰ってきたのかでも変わりますから」
「厳しいんだ……」
「なので、三郎は武術、四郎は文学の方に精通してます。勿論、秀でていると言うだけで四郎も相当一族の中では強いのですが」
「重次さんも文学?」
「私はどっちつかずですよ?ただ、本を読むのが好きなだけで、南の屋敷でも使用人の振りをして皆様の手伝いをすることが多いので、知識だけはと最初に詰め込んでいたのですが、今では書庫の整理までさせられてますから」
「みんな持ってますよ?いっちーも!」
「鉄板入り?」
「普通のですー!頭に紙風船乗せて戦うのですー」
「鉄板入りで?」
「その時はこのピンクのハリセンでしますー!」
「誰?そんなの考えたの!」
「栞様ですよ?勝手に出てくんだから、悪いことしたらこれでペシッてしてねっと言われて、そのあと冬弥様が、これでは面白くないと、かっこよくしてくれましたー」
「とにかく!鉄板入りは禁止ね?」
「じゃあ、ちゃんとお約束は守ってくださいねー」
紫狐が栞に言われているというお約束を聞かされ、頭を抱えていると、檪が「書き写しはもういいのか?」と聞いてきたので再開し、荷台が止まるまで続けて一旦影の中にしまう。
「坊っちゃま、ここからさらに脇道に入ると町なのですが、休まれます?」
「僕はいいよ。桔花と重次さんに合わせる」
「あと一息なので進みましょうか。宿が取れるといいのですが」
「並んでた人達は動けたのかな?」
「脇道にそれることが出来た者は、私たちよりはあとに着くと思います。この道は地元の人しか通らないところなので、順調に進めましたが、もう一つ手前は混んだと思いますから」
町はすぐに見え、いくつか荷馬車が止まっていたが、混んでいるようでもなかったので部屋を取り、桔花を繋いでお疲れ様と体を撫でる。
「もう怖くないですか?」
「うん。目がうるうるしてて可愛い。それに、良く見ると尻尾までさらさらだよね」
「毎日朝に手入れしてますから」
「そんなに早く起きてるの?」
「癖もあります。これでも風の一族ですので、物音一つ、気配でも起きます。それに、毎日の手入れでもっと仲良くなろうと思いまして」
「恋人みたいだね」
「馬愛です!」
「あははっ!もう、笑わさないでよ。今度僕もやりたい。それと、入口に温泉て書いてあったけど」
「この辺りは、温泉が出ます。露天風呂から海が見えたらいいんですけど、場所的にもうだいぶ離れましたから、見えても山ですね」
「山って夜は怖いイメージがあるよ?ザワザワって音と、暗いのにたまに湯気が出てたりして」
「それは気温差で出るのだと聞いたことがあります。確かに夜中は静かで不気味ですが、鍛錬にはいい所ですよ?」
「みんな山で修行するの?」
「幼い時は山で訓練します。山のど真ん中に何も持たされずに置いていかれて、何日で戻れるか競い合ったりしました」
「ご飯とかどうするの?」
「覚えている山菜をとったり、うさぎを狩ったりですが、たいてい罠にかからなければ、その辺の草食べてました」
お風呂に向かい、岩風呂があったのでそこに浸かりながら続きを聞かせてとせがみ、「大抵、五歳くらいから始まると思ってもらえれば。その頃には能力の差が出てきてますから、その山での出来によって色々と分けられます」
「でもみんな強いんだよね?」
「基本的なことは学びますから。ですがそこで脱落したものもやはりいますし、飛びぬけて早く帰還したものもいれば、最後に到着したにも関わらず、評価が高かったりと色々とあります。ただ帰ってきただけなのか、何かを得て帰ってきたのかでも変わりますから」
「厳しいんだ……」
「なので、三郎は武術、四郎は文学の方に精通してます。勿論、秀でていると言うだけで四郎も相当一族の中では強いのですが」
「重次さんも文学?」
「私はどっちつかずですよ?ただ、本を読むのが好きなだけで、南の屋敷でも使用人の振りをして皆様の手伝いをすることが多いので、知識だけはと最初に詰め込んでいたのですが、今では書庫の整理までさせられてますから」
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