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南中心街から秋へ
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檪に言われ、重次が方向を変えて荷台一つ分の脇道にそれる。
後ろの荷馬車も見ていたが、こちらよりも大きい馬車だったのでついてくるのは諦めたのだろう。
自分たちの馬車だけが脇道の森に入り、少し細いがしっかりとした街道に出てからスピードをあげて進み、また森の中を通って、細い街道を行く。
「ここが山側?」
「はい。何にもないですし、道もあまり良くないので揺れます」
「周りは木しかないもんね」
「急いでますが、道が悪いのでこのままの速度で進みます。夕刻近くには町が見えると思いますよ」
「うん。だったら僕、胡蝶さんに言われた事してるね。書き写さないと……」
「しーちゃん、みんな中のがいいのかな?」
「ひーちゃんは火鉢がいいみたいですー。そのうち戻ると思いますよ?」
重次の後ろ側に木の箱があったので、それを机替わりにしながら、一巻から書き写しながら本をめくり、おかしな所がないか見ていく。
一冊はそんなに厚い本ではないが、書き写すとなると、二つ分はやはり手間がかかり、揺れているので進むのも遅い。
「うーん……」
「どうしたのですか?」
「前に解読したのと変わらないんだけど、また地図みたいなマーク見つけちゃった」
「書き写してまた繋げるんですよね?」
「うん、そうする。別のノートに書いておこうかな」
小さなメモ帳に書き写し、写しているものと、解読済みのものにもマークを入れておく。
「見直すと結構見落としがあるんだなって思って。もしかしてテストも……」
「ゆっきー、これはテストでは無いですから。紫狐は航平さんから、ゆっきーが、勉強のことを言ったらこのハリセンで叩くようにと言われてますー」と、薄紫色の画用紙でできたハリセンを見せてくる。
ニコニコして持つ紫狐が可愛かったが、あえて「やめてー」と怯えた振りをして嫌がってみせると、「あ、虫です!」と懐からさらに小さいハリセンを出して、虫を叩いた。
叩いたのはいいが、その音が紙の音ではなく、明らかに何か入っている音に聞こえたので、大きい方のハリセンを持つ。
「うそ!中に木の棒が入ってる!こんなので叩かれたら痛いじゃん!」
「あ、ああ……秘密兵器が!」
「それが小さいなら、しーちゃんにぴったりの中くらいのがあるんだよね?」
「うう……ありますー」
「見せて?」
「こ、これは冬弥様が作ってくれたもので……」
「み・せ・て!」
無理やり出させると、前後と中心に軽いが鉄板が入っており、間は硬い木で作られていてそれなりに重かった。
「これで殴ったらダメだからね?たんこぶどころじゃないから!」
「し、紫狐はそんなことかんがえてないですぅー。航平さんと、冬弥様に言われたことを守ってるんですぅー」と、そっぽを向いている。
絶対にやるつもりだったんだと、取り上げようとしたら、重次の足元に隠れてしまったので、「ずるい!」と言っていたら、豪快に重次に笑われてしまった。
後ろの荷馬車も見ていたが、こちらよりも大きい馬車だったのでついてくるのは諦めたのだろう。
自分たちの馬車だけが脇道の森に入り、少し細いがしっかりとした街道に出てからスピードをあげて進み、また森の中を通って、細い街道を行く。
「ここが山側?」
「はい。何にもないですし、道もあまり良くないので揺れます」
「周りは木しかないもんね」
「急いでますが、道が悪いのでこのままの速度で進みます。夕刻近くには町が見えると思いますよ」
「うん。だったら僕、胡蝶さんに言われた事してるね。書き写さないと……」
「しーちゃん、みんな中のがいいのかな?」
「ひーちゃんは火鉢がいいみたいですー。そのうち戻ると思いますよ?」
重次の後ろ側に木の箱があったので、それを机替わりにしながら、一巻から書き写しながら本をめくり、おかしな所がないか見ていく。
一冊はそんなに厚い本ではないが、書き写すとなると、二つ分はやはり手間がかかり、揺れているので進むのも遅い。
「うーん……」
「どうしたのですか?」
「前に解読したのと変わらないんだけど、また地図みたいなマーク見つけちゃった」
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「うん、そうする。別のノートに書いておこうかな」
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「見直すと結構見落としがあるんだなって思って。もしかしてテストも……」
「ゆっきー、これはテストでは無いですから。紫狐は航平さんから、ゆっきーが、勉強のことを言ったらこのハリセンで叩くようにと言われてますー」と、薄紫色の画用紙でできたハリセンを見せてくる。
ニコニコして持つ紫狐が可愛かったが、あえて「やめてー」と怯えた振りをして嫌がってみせると、「あ、虫です!」と懐からさらに小さいハリセンを出して、虫を叩いた。
叩いたのはいいが、その音が紙の音ではなく、明らかに何か入っている音に聞こえたので、大きい方のハリセンを持つ。
「うそ!中に木の棒が入ってる!こんなので叩かれたら痛いじゃん!」
「あ、ああ……秘密兵器が!」
「それが小さいなら、しーちゃんにぴったりの中くらいのがあるんだよね?」
「うう……ありますー」
「見せて?」
「こ、これは冬弥様が作ってくれたもので……」
「み・せ・て!」
無理やり出させると、前後と中心に軽いが鉄板が入っており、間は硬い木で作られていてそれなりに重かった。
「これで殴ったらダメだからね?たんこぶどころじゃないから!」
「し、紫狐はそんなことかんがえてないですぅー。航平さんと、冬弥様に言われたことを守ってるんですぅー」と、そっぽを向いている。
絶対にやるつもりだったんだと、取り上げようとしたら、重次の足元に隠れてしまったので、「ずるい!」と言っていたら、豪快に重次に笑われてしまった。
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