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南へ__
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重次に押してもらい、歩いているのは重次。自分は車椅子に乗って前に進めてもらうだけ。それが心苦しかったが、誰もいない街道で一応の車椅子の仕掛けを話しておくことにした。
「__で、僕が術を発動したら身が守れるんだけど、メモに簡単に書いたのを見ると、その周りに張ったら二重効果が得られるの。だから、襲われたら僕が守るから」
「その中で私の攻撃は外に出来るんですか?」
「できるよ。ちゃんと試したもん」
「坊ちゃんまもお強くなられましたね。最初に海でお会いした時も、感の良い方とは思ってましたが、一年で大分成長されました」
「そうかな?書物ばかり見てたから、知識としては分かるんだけど、実際は助けてもらわないと何も出来なくて。この旅も本当は一人でって思ってたんだ。だけど、狐の国のこと全く知らないし、周太郎さんでもよかったんだけど、彼だと何かあった時に僕守り切れないって思って……ごめんね。巻き込んで」
「いえ。彼らと較べると、私の方が確かに間ですから。四郎には負けますが、それなりの国の知識もありますし、三郎と同じくらいは戦えます。周太郎さんの怪力には負けますが」
「やっぱり、周太郎さんは怪力なんだ」
「ええ。彼に適う者がいるかどうか位力持ちです。しかし彼も強いですが、優しすぎます」
「うん。それは僕も思う。前もそうだったけど、自分を犠牲にしちゃうんだ。だから連れてこれなかった」
「私は逃げろと言われたら逃げますよ?」
「それでいいんだ。逃げてくれたら誰か呼んできてもらえるし、僕にも狐たちがいるもん」
地図を見て、周りの町の景色も見ながら、やはり東の祖父の家とは段々と作りが変わってきていることに気づく。
日本家屋が多い東の地と較べると、那智の家とはまた違うが洋風の家が増えてきている。
それでも明治時代と言った感じはするのだが、お茶屋や食事処なども暖簾ではなく看板になっており、南が洋風だと秋と冬の北はどうなっているんだろうと更に興味が出て来た。
「坊っちゃま、坊っちゃまは必ず路銀を1万は持っていてください。そうすれば宿にも泊まれ、食事もできます。私とはぐれた時は必ず念じて誰かを呼んでください」
「はぐれるの決定みたいだよ?」
「もしもの時ですよ。離れないと誓います。お昼はどうしますか?」
「建物は洋風が多くなってきたけど、料理はどうなの?」
「まだ中心街ではないですが、和食が多いです。それと、汁物系が多いです。この国は暑いので日持ちする食材をよく使いますから、向こうで言うベーコンに似たものもありますよ」
「へぇ。どこかで食べられるといいな。あ、あそこの看板は何?」
「食事処です。入ってみますか?」
行きたいと言って中に入ると、テーブル席と座敷があり、なんだか居酒屋みたいとつい賢司の顔を思い出してしまう。
おすすめ定食に決めて待っていると、魚の肉団子の具沢山スープに、オムレツとご飯がついていて、見たことのない果物がついていた。
「オムレツだよね?」
「はい。この辺りでも街の真似をするようになったみたいですね。この魚の団子はお分かりでしょう?」
「うん。これ好きだよ。野菜はむこうと似てるのかな?ジャガイモと人参と……ブロッコリーもどき?」
「ちょっと食感は違うと思いますが。この果物はブドウに似た味がしてよく食べられているものです」
重次に教えてもらいながらも箸を進め、この辺りではまだスプーンやフォークがないことを聞き、お箸で食べながらもうお腹一杯とお茶を飲み、薬を忘れずにと言われたのでちゃんとカバンから出して飲む。
「ここからはどう行くの?この分かれてる道の方は?」
「どちらから行ってもつく場所は同じですが、この脇道はまだ境の辺りなので山賊が出るかもしれません」
「__で、僕が術を発動したら身が守れるんだけど、メモに簡単に書いたのを見ると、その周りに張ったら二重効果が得られるの。だから、襲われたら僕が守るから」
「その中で私の攻撃は外に出来るんですか?」
「できるよ。ちゃんと試したもん」
「坊ちゃんまもお強くなられましたね。最初に海でお会いした時も、感の良い方とは思ってましたが、一年で大分成長されました」
「そうかな?書物ばかり見てたから、知識としては分かるんだけど、実際は助けてもらわないと何も出来なくて。この旅も本当は一人でって思ってたんだ。だけど、狐の国のこと全く知らないし、周太郎さんでもよかったんだけど、彼だと何かあった時に僕守り切れないって思って……ごめんね。巻き込んで」
「いえ。彼らと較べると、私の方が確かに間ですから。四郎には負けますが、それなりの国の知識もありますし、三郎と同じくらいは戦えます。周太郎さんの怪力には負けますが」
「やっぱり、周太郎さんは怪力なんだ」
「ええ。彼に適う者がいるかどうか位力持ちです。しかし彼も強いですが、優しすぎます」
「うん。それは僕も思う。前もそうだったけど、自分を犠牲にしちゃうんだ。だから連れてこれなかった」
「私は逃げろと言われたら逃げますよ?」
「それでいいんだ。逃げてくれたら誰か呼んできてもらえるし、僕にも狐たちがいるもん」
地図を見て、周りの町の景色も見ながら、やはり東の祖父の家とは段々と作りが変わってきていることに気づく。
日本家屋が多い東の地と較べると、那智の家とはまた違うが洋風の家が増えてきている。
それでも明治時代と言った感じはするのだが、お茶屋や食事処なども暖簾ではなく看板になっており、南が洋風だと秋と冬の北はどうなっているんだろうと更に興味が出て来た。
「坊っちゃま、坊っちゃまは必ず路銀を1万は持っていてください。そうすれば宿にも泊まれ、食事もできます。私とはぐれた時は必ず念じて誰かを呼んでください」
「はぐれるの決定みたいだよ?」
「もしもの時ですよ。離れないと誓います。お昼はどうしますか?」
「建物は洋風が多くなってきたけど、料理はどうなの?」
「まだ中心街ではないですが、和食が多いです。それと、汁物系が多いです。この国は暑いので日持ちする食材をよく使いますから、向こうで言うベーコンに似たものもありますよ」
「へぇ。どこかで食べられるといいな。あ、あそこの看板は何?」
「食事処です。入ってみますか?」
行きたいと言って中に入ると、テーブル席と座敷があり、なんだか居酒屋みたいとつい賢司の顔を思い出してしまう。
おすすめ定食に決めて待っていると、魚の肉団子の具沢山スープに、オムレツとご飯がついていて、見たことのない果物がついていた。
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「はい。この辺りでも街の真似をするようになったみたいですね。この魚の団子はお分かりでしょう?」
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重次に教えてもらいながらも箸を進め、この辺りではまだスプーンやフォークがないことを聞き、お箸で食べながらもうお腹一杯とお茶を飲み、薬を忘れずにと言われたのでちゃんとカバンから出して飲む。
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