下宿屋 東風荘 7

南へ＿＿

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お風呂は、大きな風呂ではなく家族風呂のような少し大き目の浴槽に、洗い場が三つと小さかったが、他にお客がいなかったので、ゆっくりと浸かることが出来、重次には本来ならば一緒に風呂などと言われたが、旅の間はそうしてくれと頼んで、部屋に戻って食事をしてからは、地図を広げて行く道を確認する。

「あ、ここです。崩落のあった箇所ですが。この道をいこうと思っていたのですが、迂回していくので、秋のエリアに入ると、農村近くからになりますね」

「農村……秋彪さんも農村の出身て聞いた事がある」

「彼は冬との境なのでもっとこっちの方でしょう」と重次が指さした場所には、街のマークもなく、周りは山だらけだった。

「この南の国では見るところとかある？」

「見るところといえば漁港となりますが、中心街は通るので、芝居小屋など東とあまり変わりません。食べ物や置いてあるものが少し違いますが」

「他は？」

「他ですか？考えておきます。違う秋や冬等ならば、見てみたいところはあるんですが、自分のいる国だと、結構思いつかないものですよ？」

お布団を敷かせていただきますと仲居さんが入ってきたので、荷物を片付けて横にどき、出ていく時に「仲の良いご兄弟ですね」と言われたので、誰かに聞かれたら兄弟ってことにしておこうと言って、薬を飲んで横になる。

朝は魚の蒸し物と味噌汁に煮物だったが、味付けが少し濃く、元々暑い国なので味付けが濃いと重次に教えられた。

出発前に荷物の確認をして、街道に出ると、丁度一台の荷車が通ったので、重次が交渉してくれ、乗せてもらえることになった。

御者台のおじさんは、屋台を出していたが、祭りの終盤で客もいなくなってきたので早めに店じまいをしたのだという。

「おじさんの屋台って？」

「南の魚のだんご汁だよ。寒いからよく売れるんだけどね、今年は早くになくなったからそうそうに店じまいさ。兄弟で帰るところかい？」

「違うよ。色々と旅してるの僕達」

「そうかい。なら、次の街は大きいから、市場に行った方がいいよ。そのあとの町は小さいから少し高いし、何より外れにある洞窟が今人気だって聞いたから見てくるといい」

「洞窟があるの？」

「小さな洞窟だよ。俺も行ったんだがね、苔が光ってて綺麗だったのと、奥に掘られた天狐様の像が見事だったねぇ」

「今まで聞いたことがありませんが」

「見れるようになったのは夏だ。それ迄は城が危ないから入っちゃなんねぇって事で封鎖されてたんだと。俺ん家はそこから近いからすぐ見に行ったけど、中は思ったより広かったなぁ」

場所を詳しく教えてもらい、街の入口で下ろしてもらって、重次が乗せてもらった礼にといくらか渡していたので、タダじゃないんだといくら払ったのか聞くと、「この程度の距離なら二人で500円と言ったところです。食事がついたり雨が降っていればもう少し色をつけて渡しますが、基本300～500円と思って下さい。一人でもです。屋根があるかないかでも変わりますから。500以上行ってくる荷馬車には乗ってはいけませんよ？」

「うん、わかった」