天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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赤と城

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途中で熱が出たことと、食事は取れたことを話し早く見てくれとせがむ。

「男どもは隣の部屋に行ってろ……って無いのか!じゃあ、見るな!」

見るなと言われても見えるものは仕方が無い。
パチパチとエマの意識があるのか確認した後、腹に手を当て赤ちゃんの様子などを魔法を使ってみているのか、目を瞑っている。

「ニコル……」

「はい」

「お前、天草は分かるか?」

「いえ……魔草ならわかりますが」

「魔草と同じだ。違うのは葉の裏に赤い筋があるかないかだけだ。取ってこい……ムーは何度か見ただろう。一緒にいけ」

「うん、エマさん病気なの?」

「そうだ。だから沢山とってきてくれ。後いつも私が使ってる赤い実も天草の側に生える。それもたっぷりとな」

「うん、ニコルさんいこー」

籠を持って出ていってすぐ、「赤ん坊はもしかしたらダメかもしれない」と言われ、無理に乗せたからかもと落ち込む。

「お前のせいじゃない。早く付いて体を冷やしたのは良かった。両方助けたいが、薬が無いから作らないといけないんだ。それまでエマに頑張ってもらうしかない」

「姫様……赤ちゃんの方を。ニコルの子ですから出ても育ちます」

「だめだ!早すぎる。どっちも助けるつもりだが、お前がしっかりしないと、腹の子も助からん。出血もないし急いで薬を作るから意識をしっかりと持て」

「はい……」

その後続々とみんなが来たので、埃など入らない様にエマの周りに結界を張る。

「奏太!無事か?」

「お父さん。ノアは?」

「後におる」

みんなが揃い、事情を説明する。
その間だにとってきた薬草を鍋に入れて結月が薬を作っている間、いつもの奇声が聞こえることも無く、みんなが黙ってエマを見ていた。

「ユーリ、白と黄色の葉だけを摘んできてくれ」

「すぐに!」

「ジョナス、疲れてるところ悪いんだが、外を見てきてくれ。予定ではすぐにここを離れる事になってた。おっさん何とかならないのか?」

「抜け道は塞いできたから戻れん。薬を飲ませたら儂が全員転移させる。それでいいかの?」

「どこに行くの?」

「中心からここまでは、実はそれほど離れておらん。ここからさらに奥のまだ未開の地に小さいが城を建てたんじゃ。まだ使われてはおらんが。そこに行こうと思う」

「そこに民はいるのか?」

「外れに村があるが、放牧民が住んでおるだけののどかな所じゃよ」

「兵は?」

「城の儂の部屋から、忠臣のみ行っておるはずじゃ。制限をかけてあるから、違うものは入れんし、消えるようになっておる」

「姫、これだけしか……」

「十分だ。全部入れろ」

「緑が透明になった……」

「万能薬があれば良かったんだが、それでは腹の子にはきつい。これなら子にも影響はない熱冷ましだ。後は体力が戻るのを……エマの頑張り次第だが」

「エマさんなら大丈夫だよ!」

戻って来たジョナスからの報告では周りに人の気配は無いと言うので、冷却してエマに飲ませる。

「残りはデカイが瓶に移して持っていく。ユーリ落すなよ」

「ではみんな集まってくれ。奏太結界を解いてくれんか?」

「あ、はい」

みんなが揃ったところで魔法で一瞬にして城の中へと入る。

「この部屋ならいいじゃろう。水も使えるし、必要なものは揃っているからの」

「ニコル、付いててやれ」

「ルーカス様」

「いいから!俺は自分でなんとか出来る」

「奏太、お前の部屋も作ってあるから着替えて来なさい」

教えてもらった部屋までノアと行き、着替えを済ます。
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