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赤と城
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「そうですね。教えられた場所の目印にここがありました。この先に滝のある森があるはずなんですが」
「分かった。エマさん平気?」
「はい、ちょっと酔った感じがしますけど」
「急がなくちゃ……」
空を掛けるのが逃げていなければきっと気持ちよかっただろうななどと考え、目の前に見える森を目指す。
上からみるとドーナツのような形をしており、真ん中に滝があったのでそこに降りる。
「ニコルさん、下ろしてあげて……」
「エマ……」
「ごめんなさい。まだ着いていないのに」
「それより、ここに持たれて。ニコルさん後どのくらい?」
「滝の裏手から入ると扉があると聞いてます。そこからは迷路のようになっていて、道を間違えば罠が動くと。道順は覚えましたので……エマはおぶって行きます」
「あ、俺の上に乗せていいよ?俺じゃ戦えないし、元に戻りそうにもないから」
「では、お言葉に甘えます」
滝の奥は涼しく、岩の扉を開けると中には松明が置いてあったので火をつけて手に持つ。
ニコルの案内で迷わずに何とか真ん中辺りまでつくと、戸棚にいくつかの旅用品が置いてあった。
「何これ?」
「ここで合っているようです。姫様が置いておくと言ってましたので……ほら、天満印がついてます」
小さく彫られた天満印を見て一安心し、棚の中を漁って敷物を出し、エマを横に寝かせる。
「俺水汲んでくる」
「私が……」
「いいよ。付いててあげて」
すぐ側の川から水を汲んで戻り、置いてあった薪に火をつける。
コップに水を入れて渡すと、少しずつ飲んでくれたのでホットするが、どこに繋がっているんだろうと気になって、ニコルに聞く。
地面に現在地と進む方向だけ書かれ、城と繋がっていることがまず分かる。
「ここから姫様たちが来ます。私達は今いるここから途中の抜け道を使って街の方に出る予定ですが、 出た先は民家だそうです」
「民家?」
「ええ、王家の抜け道でも、ここは王のみが知る道だとか」
「リアムさんも知らないところ?」
「そうなります。結界も張っているそうで、誰かが入ればわかると言ってました」
「分かった。ここでみんなを待つ必要ないなら急ぎたいけど。きっとベッドなんかもあるだろうし、エマさん休ませて上げないと」
「こんなときに申し訳ございません」
「なんで?おめでたい事だからいいじゃん。だから謝らないでよ。エマさん、動けそう?」
「はい……」
「ここの荷物持っていこう。また休めるところがあったら休みながら進んだらいいと思う」
「分かりました」
ニコルが支度している間に、自分の背中に毛布をかける。これで少しはエマも楽だろう。
背に乗ったエマの体が熱いと感じ、ニコルに告げる。
こんな時に結月が居てくれたら心強いのにと思いながらも、ニコルの道案内で走り、突き当たりにはしごを見つける。
「分かった。エマさん平気?」
「はい、ちょっと酔った感じがしますけど」
「急がなくちゃ……」
空を掛けるのが逃げていなければきっと気持ちよかっただろうななどと考え、目の前に見える森を目指す。
上からみるとドーナツのような形をしており、真ん中に滝があったのでそこに降りる。
「ニコルさん、下ろしてあげて……」
「エマ……」
「ごめんなさい。まだ着いていないのに」
「それより、ここに持たれて。ニコルさん後どのくらい?」
「滝の裏手から入ると扉があると聞いてます。そこからは迷路のようになっていて、道を間違えば罠が動くと。道順は覚えましたので……エマはおぶって行きます」
「あ、俺の上に乗せていいよ?俺じゃ戦えないし、元に戻りそうにもないから」
「では、お言葉に甘えます」
滝の奥は涼しく、岩の扉を開けると中には松明が置いてあったので火をつけて手に持つ。
ニコルの案内で迷わずに何とか真ん中辺りまでつくと、戸棚にいくつかの旅用品が置いてあった。
「何これ?」
「ここで合っているようです。姫様が置いておくと言ってましたので……ほら、天満印がついてます」
小さく彫られた天満印を見て一安心し、棚の中を漁って敷物を出し、エマを横に寝かせる。
「俺水汲んでくる」
「私が……」
「いいよ。付いててあげて」
すぐ側の川から水を汲んで戻り、置いてあった薪に火をつける。
コップに水を入れて渡すと、少しずつ飲んでくれたのでホットするが、どこに繋がっているんだろうと気になって、ニコルに聞く。
地面に現在地と進む方向だけ書かれ、城と繋がっていることがまず分かる。
「ここから姫様たちが来ます。私達は今いるここから途中の抜け道を使って街の方に出る予定ですが、 出た先は民家だそうです」
「民家?」
「ええ、王家の抜け道でも、ここは王のみが知る道だとか」
「リアムさんも知らないところ?」
「そうなります。結界も張っているそうで、誰かが入ればわかると言ってました」
「分かった。ここでみんなを待つ必要ないなら急ぎたいけど。きっとベッドなんかもあるだろうし、エマさん休ませて上げないと」
「こんなときに申し訳ございません」
「なんで?おめでたい事だからいいじゃん。だから謝らないでよ。エマさん、動けそう?」
「はい……」
「ここの荷物持っていこう。また休めるところがあったら休みながら進んだらいいと思う」
「分かりました」
ニコルが支度している間に、自分の背中に毛布をかける。これで少しはエマも楽だろう。
背に乗ったエマの体が熱いと感じ、ニコルに告げる。
こんな時に結月が居てくれたら心強いのにと思いながらも、ニコルの道案内で走り、突き当たりにはしごを見つける。
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