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赤と城
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バタバタとした夕食が終わる頃には、先にブランが天王に連れ出され、王特製の檻で一日守られることになった。
「おはようございます。お加減はいかがですか?」
「うん、昨日よりいいんだけどさ……」
「なにか心配事でも?」
「ブランじゃないけど、俺も体の節々がムズムズするんだ」
「もしかしたら、変化の兆候かも知れません。姫様に報告した方がいいと思います」
「何かを毟られる事はないと思うけど、言って置いて。で、もうあれ着るの?」
「食事の後でいいと思うのですが、ムーさんたちは喜んでもう首に巻いてますよ?」
「だろうね。時間とか決まったのかなぁ?」
着替えながらノアに聞くが、ノアも知らされていないという。
やはり突然出る形になるのだろう。
朝食の席に行くと、エマとルーカスしかいなかった。
「みんなは?」
「おはようございます。姫様や王は支度に時間がかかるとのことで、先に食事されて、ニコルとジョナスさんは二人で見回りに……それより、朝食も食べてみてください。魔界にない食材が沢山あったので、色々と作ったんですよ」
「うん、ありがとう」
「奏太、これだけ見ておいてくれ。お前が見たら消しておかないといけないからな」
ノアと二人で紙を見ると、ベランダでの並び順と、結界がどこまで張られるかなど書いてあった。
「ノア、どうだ?」
「はい。これは父が書いたのでしょう?」
「よく分かったな」
「剣士と防御のやり方は父の得意とする配置になってますので。かと言って敵は入れず、味方が動きやすい位置になっていますので」
「なら、もういいか?」
いいと言うと、指から炎を出し器用に紙だけ燃やす。
「さ、食べて食べて」とスープや魚などの料理を持ってきたエマは御機嫌だった。
「いい事あったの?」
「え?ほら、今日は王子のめでたい日だから……ね、ルーカス様」
「エマ、奏太に誤魔化しはきかないぞ?」
「いいことなら教えてよ……あ!」
よくお腹に手を当てていると思って、「赤ちゃん?」と口に出す。
「ふふ、昨夜姫様に見てもらったらそうなんですって。ニコルも喜んでくれて」
「おめでとう!いつ生まれるの?」
「今はまだ安定期ではないけど、2ヶ月半くらいなんですって。だから後7、8ヶ月くらいかしら。人間より少し早いとは母から聞いてて……」
「だからエマには魔界へ帰れと言ったんだがな、言うこと聞かないんだ。奏太からも言ってくれ」
「うん、ご飯とか嬉しいけど、ここ危ないからさ……ルーカスさんの言った通りに帰って休んだ方がいいよ」
「そうです、折角出来たお子なんですから」
「それは嫌なの!っていいましたよね?ルーカス様!具合が悪いなら帰りますけど、ちゃんと自分ぐらい守れ……ないかも」
「どっちだお前は!」
「いえ、妹が生まれる時に、母が魔法を一切使ってなかったのを思い出して」
「妹さんがいるの?」
「ええ、10歳違うんですけど」
「結月に聞いてこい。男にはわからん事だ」
「ほんとに?」
「奏太、流石に俺に子供はいないぞ?遊びはするが気をつけてるからな。エマに何かあったらさすがの俺もニコルと親父、エマの両親に顔向けできんだろう」
「ノア、ルーカスさんがまともな事言ってるけど、今日大雨とかにならないよね?」
「外はいい天気ですが……」
「全く!とにかく食え」
「うん、いただきます」
食事をとった後、ルーカスに体の変化のことを聞くと、ノアと同じことを言われた。
「俺も結月も徐々に変わっていったが、最後はお前と同じように節々が痛かったりした。長く人間界にいたからもしかしたら、1度に変化するのかもしれないな」
「おはようございます。お加減はいかがですか?」
「うん、昨日よりいいんだけどさ……」
「なにか心配事でも?」
「ブランじゃないけど、俺も体の節々がムズムズするんだ」
「もしかしたら、変化の兆候かも知れません。姫様に報告した方がいいと思います」
「何かを毟られる事はないと思うけど、言って置いて。で、もうあれ着るの?」
「食事の後でいいと思うのですが、ムーさんたちは喜んでもう首に巻いてますよ?」
「だろうね。時間とか決まったのかなぁ?」
着替えながらノアに聞くが、ノアも知らされていないという。
やはり突然出る形になるのだろう。
朝食の席に行くと、エマとルーカスしかいなかった。
「みんなは?」
「おはようございます。姫様や王は支度に時間がかかるとのことで、先に食事されて、ニコルとジョナスさんは二人で見回りに……それより、朝食も食べてみてください。魔界にない食材が沢山あったので、色々と作ったんですよ」
「うん、ありがとう」
「奏太、これだけ見ておいてくれ。お前が見たら消しておかないといけないからな」
ノアと二人で紙を見ると、ベランダでの並び順と、結界がどこまで張られるかなど書いてあった。
「ノア、どうだ?」
「はい。これは父が書いたのでしょう?」
「よく分かったな」
「剣士と防御のやり方は父の得意とする配置になってますので。かと言って敵は入れず、味方が動きやすい位置になっていますので」
「なら、もういいか?」
いいと言うと、指から炎を出し器用に紙だけ燃やす。
「さ、食べて食べて」とスープや魚などの料理を持ってきたエマは御機嫌だった。
「いい事あったの?」
「え?ほら、今日は王子のめでたい日だから……ね、ルーカス様」
「エマ、奏太に誤魔化しはきかないぞ?」
「いいことなら教えてよ……あ!」
よくお腹に手を当てていると思って、「赤ちゃん?」と口に出す。
「ふふ、昨夜姫様に見てもらったらそうなんですって。ニコルも喜んでくれて」
「おめでとう!いつ生まれるの?」
「今はまだ安定期ではないけど、2ヶ月半くらいなんですって。だから後7、8ヶ月くらいかしら。人間より少し早いとは母から聞いてて……」
「だからエマには魔界へ帰れと言ったんだがな、言うこと聞かないんだ。奏太からも言ってくれ」
「うん、ご飯とか嬉しいけど、ここ危ないからさ……ルーカスさんの言った通りに帰って休んだ方がいいよ」
「そうです、折角出来たお子なんですから」
「それは嫌なの!っていいましたよね?ルーカス様!具合が悪いなら帰りますけど、ちゃんと自分ぐらい守れ……ないかも」
「どっちだお前は!」
「いえ、妹が生まれる時に、母が魔法を一切使ってなかったのを思い出して」
「妹さんがいるの?」
「ええ、10歳違うんですけど」
「結月に聞いてこい。男にはわからん事だ」
「ほんとに?」
「奏太、流石に俺に子供はいないぞ?遊びはするが気をつけてるからな。エマに何かあったらさすがの俺もニコルと親父、エマの両親に顔向けできんだろう」
「ノア、ルーカスさんがまともな事言ってるけど、今日大雨とかにならないよね?」
「外はいい天気ですが……」
「全く!とにかく食え」
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食事をとった後、ルーカスに体の変化のことを聞くと、ノアと同じことを言われた。
「俺も結月も徐々に変わっていったが、最後はお前と同じように節々が痛かったりした。長く人間界にいたからもしかしたら、1度に変化するのかもしれないな」
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