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天幻界の血
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「ノア、コーヒーくれないか?ちゃんと説明するから」
「ルーカス様、コーヒでしたら私が……」
「いい、今のノアじゃ話にもならん。それに一呼吸おくことで冷静になれるだろうよ」
「コーヒーです。私はいつでも冷静ですが」
「そんなに殺気だってか?弱い人間なら一睨みで殺せそうなぐらいだ」
「それより奏太様は?」
「お前ほんとうに奏太に忠実だな。とにかくだ、今から家の玄関の方まで転移して、エマはユーリと変わってくれ。ノアは奏太からの伝言だ。俺と仕事しろ!机とかに奏太の細かい案とか入ってないのか?」
「ありますが」
「なら、今奏太が気にしていることはなんだ?」
「プロジェクトの事です」
「よし、俺じゃ嫌かもしれんが補佐を頼む。ほら、行くぞ!エマ、何かあり次第すぐに結月を呼べ。わかったな」
「了解です」
部屋の扉を開け、奏太の様子を見る。
まだ大分と汗はかいているが、顔は泣きそうな表情をしている。
「姫、ルーカス様は」
「連絡が来て、今は会社。エマがもう来るとの事だ」と頭を指差す。
「ユーリ、ここに結界張れないか?誰も入ってこれないように」
「何をなさるおつもりですか?まさか夢に入ろうなどとは思っていませんよね?」
「そのまさかだ。もう一つの魔力がなんなのかがわからない以上、入るしかない」
「危険です!」
「わかってる。だからこの薬をまず奏太に注射しないといけないと思ってな」
「何ですかそれは」
「安定剤みたいなものだ。また暴れられても困るしな。何か寝言でいっていたか?」
「ただ行っては駄目だと位しか。本当にはいるつもりですか?」
「ただの興味なら最初からしてる。今から私がこいつの中に入ったら、無防備になる。エマとお前で守れ。外界からの遮断、そして入っている間誰も声を出すな。5分したらこの注射を私に打て。こちらに強制的に戻れる」と、黄色い液体の入った注射器をユーリに渡す。
コンコンとノックのおとがし、エマが入ってくる。
「悪いな呼び出して」
「いえ、それよりこれは?」
「奏太の魔力が少しおかしくてな、今から私が奏太を起こしにはいる。ユーリの指示にしたがってくれ」
「わかりました」
ベッドを囲むように魔方陣を書き、準備をおえると目でユーリに合図する。
「エマさん今から一言も言葉は発しないでくださいね」
頷くエマを見てから奏太に触れ、呪文を唱える。
意識がだんだんと中に入っていく感覚があり、奏太の意識がもっとも強い所まで入り込む。
ボッと目の前が火に包まれた感じがしたが、熱くはない。
夢の中に入ったのがわかった瞬間でもあった。
熱いとはこの目の前の火事の事だろう。
奏太が見ている夢の中は、平屋だての家が一軒。窓から見える風景は幻界のものであり、草原の奥には城がある。
部屋の中にはみんなが揃っており、出ていこうとしている私を引き留めるユーリとルーカス。泣き崩れるユーリたちの両親と姉。
「ルーカス様、コーヒでしたら私が……」
「いい、今のノアじゃ話にもならん。それに一呼吸おくことで冷静になれるだろうよ」
「コーヒーです。私はいつでも冷静ですが」
「そんなに殺気だってか?弱い人間なら一睨みで殺せそうなぐらいだ」
「それより奏太様は?」
「お前ほんとうに奏太に忠実だな。とにかくだ、今から家の玄関の方まで転移して、エマはユーリと変わってくれ。ノアは奏太からの伝言だ。俺と仕事しろ!机とかに奏太の細かい案とか入ってないのか?」
「ありますが」
「なら、今奏太が気にしていることはなんだ?」
「プロジェクトの事です」
「よし、俺じゃ嫌かもしれんが補佐を頼む。ほら、行くぞ!エマ、何かあり次第すぐに結月を呼べ。わかったな」
「了解です」
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まだ大分と汗はかいているが、顔は泣きそうな表情をしている。
「姫、ルーカス様は」
「連絡が来て、今は会社。エマがもう来るとの事だ」と頭を指差す。
「ユーリ、ここに結界張れないか?誰も入ってこれないように」
「何をなさるおつもりですか?まさか夢に入ろうなどとは思っていませんよね?」
「そのまさかだ。もう一つの魔力がなんなのかがわからない以上、入るしかない」
「危険です!」
「わかってる。だからこの薬をまず奏太に注射しないといけないと思ってな」
「何ですかそれは」
「安定剤みたいなものだ。また暴れられても困るしな。何か寝言でいっていたか?」
「ただ行っては駄目だと位しか。本当にはいるつもりですか?」
「ただの興味なら最初からしてる。今から私がこいつの中に入ったら、無防備になる。エマとお前で守れ。外界からの遮断、そして入っている間誰も声を出すな。5分したらこの注射を私に打て。こちらに強制的に戻れる」と、黄色い液体の入った注射器をユーリに渡す。
コンコンとノックのおとがし、エマが入ってくる。
「悪いな呼び出して」
「いえ、それよりこれは?」
「奏太の魔力が少しおかしくてな、今から私が奏太を起こしにはいる。ユーリの指示にしたがってくれ」
「わかりました」
ベッドを囲むように魔方陣を書き、準備をおえると目でユーリに合図する。
「エマさん今から一言も言葉は発しないでくださいね」
頷くエマを見てから奏太に触れ、呪文を唱える。
意識がだんだんと中に入っていく感覚があり、奏太の意識がもっとも強い所まで入り込む。
ボッと目の前が火に包まれた感じがしたが、熱くはない。
夢の中に入ったのがわかった瞬間でもあった。
熱いとはこの目の前の火事の事だろう。
奏太が見ている夢の中は、平屋だての家が一軒。窓から見える風景は幻界のものであり、草原の奥には城がある。
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