天満堂へようこそ 5

天幻界の血

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王が何かを伝えたいのはよくわかったが、具体的に何をしなさいと言うものでも無かったので、心の中に留めておくことにしておいた。

「そろそろ日が暮れますので屋敷の方へ」とノアがムーたちの気配を辿ってくれる。

「森の奥にいますね……連れてきましょうか？」

「良い、儂が戻そう」

そう言った瞬間目の前にムーとブランが現れた。

「どうやったの？」

「イメージを持つのじゃ。ここに戻ってこいとな」と悪戯っ子の様に目を細める。

みんなで屋敷に帰ると、結月やルーカス達も帰ってきており、ムーたちが臭いからとお風呂に強制的に行かされることになった。
地下の大浴場に行くと、王が男全員来いと言い、ユーリ、ニコル、ノアにイヴァン、ルーカスまで勢揃いし、風呂の中での挨拶となってしまった。

「おっさん！なんで俺までここなんだよ！」

「良いではないか！お前、天界には全くと言って良いほど来ないだろうが！」

「親父の使いで行ってるだろ？」

「相変わらず生意気な小童じゃ！見ろ！この奏太の可愛らしいことと言ったら……」

「何100年ぶりに会った甥から息子になってメロメロか！」

「悪いか！」

と、言い合いをしている中、相変わらずニコルとノアは剣の話で盛り上がっている。

「ユーリさん、イヴァンさんなんだけど……」

「ええ、堅そうな方ですが悪い方ではないと思いますよ？みなさんが使ったものをちゃんと片付けていらっしゃいますし」

「でも俺、嫌われているみたい……」

「そんなことは無いです。姫から聞きましたが、元々が平民からの王宮上がりだそうですので、コンプレックスがあるのではないかと」

「普通はなれないの？」

「頑張って試験に受かっても文士止まりでしょう。ですので、かなりの努力をされたと思います」

そんなことを話していると、失礼しますと湯に入ってきたので、今日はごめんねと謝る。

「いえ、私の方こそ申し訳ありません。教育係にと言われ、頑張らなければと……」

「いいよ。でも、やっぱり仕事があるし車の学校も行かないといけないから、合間にしてほしいんだ」

「ノアさんとスケジュールを合わせ、負担にならないよう配慮いたします」

「それと、結月さんの手伝いなんだけど……」とユーリと顔を見合わせる。

「何か問題でも？」

「もし、姫様が試食だと食べ物を出された時は、飲み物は飲まないでください。必ず、実験台ですので」

「ですが、薬草に精通していると各界では知らない方はいませんが。なのでこちらで人外専門の薬店をしていらっしゃるのではないのですか？」

「人間用も普通にチェーン店としてやってるけど、この間、ムーとブランの色が変わっちゃって……」と小さい湯船で遊んでいる2匹を見る。

「ではどのようにしたら……」

「危なそうなものは私が止めます。作業部屋の横にも部屋があるのですが、そちらにお茶やコーヒーなどを用意してありますので、そちらからお持ちください。この間は普通に紅茶を入れたら、ブレンドしておいたと言われ、全身イボだらけになってしまいました……」

「ユーリさんも？」

「たまに悪戯するので、朝は自室から必ず持っていっています」

ガラッと入口の扉が開いたと思ったら、「お前達いつまで入ってるんだ！」と男湯に結月が入ってきた。

誰も外に出てなかったから良かったものの、ルーカスの「一緒に入りたかったのか？」の一言に結月がキレ、氷の塊を湯の中に落とされてしまった。

「もー！結月ちゃん乱暴なんだからぁ」と呑気に出ていく２匹。

「仕方ない、晩餐に行くとしようか」

みんな魔法で髪や体など乾かして着替えているが、自分はタオルがないと出来ないので遅くなってしまう。

「奏太様失礼致します」とイヴァンが魔法で乾かしてくれ、着替えも渡されたので「ありがとう」と言ってみんなの後に続く。

噴水の前に沢山の明かりが灯され、周りを魔法で囲んでいるのか、風がなく寒くもない。
大きなテーブルには真っ白なテーブルクロスが敷かれ、各々席につくと近くにローズ夫妻がいた。

「結月さんに呼ばれたの」と言い、夫婦で天王に挨拶をしに行った。