天満堂へようこそ 5

帰還

.

会社から駅に近いのは便利だが、やはり外国人にしか見えないノアと電車に乗るととにかく目立つ。
身長も190センチはあるだろうし、スーツの上からでも逞しいのがよく分かる。おまけにきれいな銀髪となれば、見ない人はいないだろう。
それに比べて平均的な身長の俺は子供にしか見えないかもしれない。
少し背が伸びたかもしれないが、175センチあればいい方だ。

「サングラスから眼鏡に変えてもらって初めて乗ったけど、やっぱり目立つね」

「申し訳ありません。これが精一杯小さくした体ですので」

「本当はどのぐらいあるの？」

「私の家系はみんな体が大きいのですが、兄で2.5メートル。私が2.8メートル程でしょうか......外国の方は大きい方が居るときいたので、平均にしてみたのですが」

「髪色は？」

「そこまでは変えることは少ないです」

「俺は本当はどのぐらいなのかな？」

「何れ分かるときが来るかと思いますが」

「あ、次でおりるよ」

ドアが開き、先に降りたのはいいが、後ろからゴン！といい音が聞こえてくる。
振り向くとやはり頭をぶつけており、大丈夫？と駆け寄る。

「すいません。よそ見をしてしまいまして……」

「冷やさなくていい？」

「大丈夫です」

駅員さんも来ていたが、外国語だと思ったのだろう。どうして良いか分からずに立っているので、大丈夫ですからと言い改札を出る。

出てすぐにビルがあったはずだと記憶をたどり、ビルの名前を見てから中に入る。

エレベーターで目的の階まで行くとすでにクリスマスツリーが飾られ、商品が所狭しと並んでいる。

「目がチカチカしますね」

「俺もあまり好きじゃないけど、仕事だと思えば大丈夫かもしれない」

「何を探すのですか？」

「手作り用品。プレゼント系のところは見なくても良いかなと思って」

「わかりました。それにしても女性が多いですね」

「今の時間だと帰りの学生が多いのかな？」

「あった！」

以外にも手作りケーキなどの物が少なく使いきりのセットで売っているものが多い。
型も紙で出来ており、混ぜる物などもすぐに壊れてしまいそうなものばかりだった。

「これで3800円もするの？」とノアに値段を見せると、「材料も揃っていますが小さいの一つ出来ればいい方ですね。これにフルーツや生クリームなどの材料を合わせると、5000円はいると思いますが」

「だよね。前のお弁当セットもそうだけど、若い子は使いきりがいいのかな？家庭では何度でも使えるものがいいんだけど」

店舗をいくつか回り、デパートへ行くと、やはり同じ様な商品しか置いてなく、プレゼントの方に力を入れているようだったので、タクシーに乗ってbarへと向かう。

カランカラン

久しぶりに入り口のベルの音を聴き、カウンターを見ると、ニコルがエマに色々と教えているところだった。