下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
83 / 87
東の浮遊城

.

しおりを挟む
いつもと同じように、普通に話してくれと頼み、簡単にお昼を済ませてから、重次に見つかってリハビリです!と庭に連れ出される。

「庭で何するの?」

「まず、足の筋力がないと思いまして立つ練習からです」

「は?」

「立てますよね?」

「うん。立つことは出来るけど」

とにかく立ってくれと言われ、足に力を入れて立つ。

「では、そのまま立っててくださいね?」

「え?うん。わかった……」

何をするのだろうと思ったら、三郎と四郎が横に立ち、真似をしてくれと言って、まずは両手を横に伸ばす。

「こけそうになったら支えますから大丈夫です」

「うん……」

両手を横に伸ばしたあと、重次に脇の下を持たれて車椅子から五歩程離れる。

「坊ちゃん、腕の筋力もないですねぇ」

「それをいわれると言い訳の仕様がないんだけど」

「ちょっと失礼しますね」

後ろに回られたと思ったら、今度は姿勢が悪いと言われて背筋を伸ばされ、曲がってしまう膝も真っ直ぐにされる。

「キツッ!」

「では、暫くそのままで」

「嘘!すっごく腕がプルプルするんだけど!」

「これからは毎日の体力作りもと冬弥様、那智様に言われております」

「えー!」

同じ格好をしているのに、三郎たちは片足になってケンケンをして周りを回り始め、もうダメだと思う頃には逆立ちをしながら腕立てをしていた。

「もうダメ!」

「そこからが我慢です!」

重次の意地悪!と思いながらもしばらく堪えて、尻餅をつく前にみんなに支えられる。

「次は?もう、肩が上がらないよ」

「さて、温泉に行きましょうか」

「温泉で何するの?」

そう言ってるあいだに担がれて温泉まで連れてこられ、タオルを腰に巻いて、敷いてあるタオルの上に寝ろと言われてその通りにする。

「マッサージしながら解していきます。岩盤浴にも使われる石の上にタオルが敷いてあるので、体の芯から温まりますよ」

程よく体が温まり、膝や足首、腕や肩などを解され、最後に全体を軽くマッサージされてから、湯に浸かる。

「気持ちいい!」

「しばらくこれの繰り返しです」

「どうしてこれになったの?」

「最初は違う内容のものにしようとの話だったのですが、車椅子生活が長いことと、それに伴って体の成長に対して握力など基本的な部分が弱いとの冬弥様の判断から、無理のない程度に基礎体力をつけようとの話になりまして……」

「それで我らが幼少の頃にやっていた基本が良いのではないかと」

「ちょっと待って。風の一族の幼少期って何歳ぐらい?」

「覚えてるか?」

「確かこれは歩けるようになったらさせられるものだったと思うが……」

「みんな覚えてない頃何て赤ちゃんの時じゃん!」

「ですが、これでかなり体幹はしっかりとします。それに今の坊ちゃんは、辛うじて歩ける程度。前の様な事があった時にせめて逃げれるくらいにはと思っております。それに、腕を使うにしても、車椅子の車輪をたまに押すくらいなので、相当筋力が弱いと見ました」

「そう言われたらそうなんだけど。どのぐらい続けるの?」

「毎日朝にと思っておりますが」

さらっと言われ、昼と夕方にはまた違う事させられるんだろうなとついていけるかどうか心配になってきてしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...