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東の浮遊城
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言われたことに取り掛かる前に部屋に案内され、置いてあった荷物の中から、筆記用具とノートなどを取り出して机に置く。
服も羽織ものやひざ掛けを先に出し、残りはゆっくりでいいかと箪笥を見ると、先に送った服が綺麗にしまわれており、本棚にもたくさんの本が置かれていた。
廊下を進むと、いくつかの部屋が開いていたので、中を覗き込んで誰の部屋か確認し、途中の渡り廊下の隅から降りれるようになっていたので、庭に降りて散策する。
前に来た時には何もなくガランとしていたのに、荷物が置かれるだけで女中の狐も忙しく働き、とっても賑やかになっていた。
「雪翔ー」
「はーい。庭にいるー」
那智に呼ばれて返事をし、渡り廊下まで戻ろうとして花壇に刺さっている鉄の細い棒に目を留める。
一本引き抜いて見ると、長さは15cmほど。
「これだ……」と花には悪かったが一本だけ貰って那智のところに行き、棒を見せる。
「なんだ?その棒」
「花壇に刺してあったんだ」
「倒れないようにするやつか」
「多分。僕、これ欲しい」
「はぁ?そんな物どうするんだよ」
「うん……使えないかなーって思って。それより用事じゃないの?」
「あ、そうだった。広間に集まれって言われたから迎えに来た。ちょうど見かけたし」
「なんだろう?」
那智と広間に行くと、昴と胡蝶も座っており、「ここじゃ」と胡蝶に呼ばれて隣に座る。
「よう無事であったな」
「栞さんが助けてくれたから……」
「彼女はもう大丈夫じゃ。妾とあの子狐とで治したからの」
「もう起きてるの?」
「一度目は覚めたが、疲れておるのであろ。また眠っておる」
「そっか……」
「そんなに暗い顔をせずとも良い。怪我がなくて何よりじゃ」
「うん……」
「雪翔、その棒はなんだ?」
「那智さんにも聞かれたんだけど、僕、試したい事があって、さっき花壇でこれ見つけて。貰ってきちゃった」
「何に使うのかは知らんが、気をつけて持てよ?」
「うん、分かった」
「みんな揃ったようじゃの」と祖父が切り出したので前を向くと、手には色々な色の紐の束が持たれていた。
「今からこれを配る。この紐はじゃな「勝手に持ち出すなくそじじい!」」
「昴さん?」
「また勝手に城に潜り込んだんだろ」
「抜け道があるのが悪い。それに、管理がなっておらん!でじゃ、この紐じゃが、手首でも足首でも好きなところにつけてくれ。それをつけてるものの位置が分かるようになるでの」
「色は?」
「関係ない。それに儂と冬弥の気が入っておる。配る前に昴と胡蝶も気を入れてくれんか」
昴と胡蝶が気を入れ、好きな色を選べと言われたので、緑色を選ぶ。
「ミサンガみたい」
「みさ?」
「人間の世界にもこんなのがあるんだ。でもこの折り方って複雑に出来てるね」
「そりゃそうだ。一応宝物だからな。何かあればこの気を入れた者と連絡が取れるスグレモノなんだが、勝手に蔵から持ち出すの爺さん位だ」
「お爺ちゃん、泥棒見たい」
「みたいじゃなくて、真似すんなよ?」
「しないよ。でも宝物庫って言うくらいだから、これすごい価値があるの?」
「その折り方に価値があるんだ。数も限られてるし、値は付けられん」
服も羽織ものやひざ掛けを先に出し、残りはゆっくりでいいかと箪笥を見ると、先に送った服が綺麗にしまわれており、本棚にもたくさんの本が置かれていた。
廊下を進むと、いくつかの部屋が開いていたので、中を覗き込んで誰の部屋か確認し、途中の渡り廊下の隅から降りれるようになっていたので、庭に降りて散策する。
前に来た時には何もなくガランとしていたのに、荷物が置かれるだけで女中の狐も忙しく働き、とっても賑やかになっていた。
「雪翔ー」
「はーい。庭にいるー」
那智に呼ばれて返事をし、渡り廊下まで戻ろうとして花壇に刺さっている鉄の細い棒に目を留める。
一本引き抜いて見ると、長さは15cmほど。
「これだ……」と花には悪かったが一本だけ貰って那智のところに行き、棒を見せる。
「なんだ?その棒」
「花壇に刺してあったんだ」
「倒れないようにするやつか」
「多分。僕、これ欲しい」
「はぁ?そんな物どうするんだよ」
「うん……使えないかなーって思って。それより用事じゃないの?」
「あ、そうだった。広間に集まれって言われたから迎えに来た。ちょうど見かけたし」
「なんだろう?」
那智と広間に行くと、昴と胡蝶も座っており、「ここじゃ」と胡蝶に呼ばれて隣に座る。
「よう無事であったな」
「栞さんが助けてくれたから……」
「彼女はもう大丈夫じゃ。妾とあの子狐とで治したからの」
「もう起きてるの?」
「一度目は覚めたが、疲れておるのであろ。また眠っておる」
「そっか……」
「そんなに暗い顔をせずとも良い。怪我がなくて何よりじゃ」
「うん……」
「雪翔、その棒はなんだ?」
「那智さんにも聞かれたんだけど、僕、試したい事があって、さっき花壇でこれ見つけて。貰ってきちゃった」
「何に使うのかは知らんが、気をつけて持てよ?」
「うん、分かった」
「みんな揃ったようじゃの」と祖父が切り出したので前を向くと、手には色々な色の紐の束が持たれていた。
「今からこれを配る。この紐はじゃな「勝手に持ち出すなくそじじい!」」
「昴さん?」
「また勝手に城に潜り込んだんだろ」
「抜け道があるのが悪い。それに、管理がなっておらん!でじゃ、この紐じゃが、手首でも足首でも好きなところにつけてくれ。それをつけてるものの位置が分かるようになるでの」
「色は?」
「関係ない。それに儂と冬弥の気が入っておる。配る前に昴と胡蝶も気を入れてくれんか」
昴と胡蝶が気を入れ、好きな色を選べと言われたので、緑色を選ぶ。
「ミサンガみたい」
「みさ?」
「人間の世界にもこんなのがあるんだ。でもこの折り方って複雑に出来てるね」
「そりゃそうだ。一応宝物だからな。何かあればこの気を入れた者と連絡が取れるスグレモノなんだが、勝手に蔵から持ち出すの爺さん位だ」
「お爺ちゃん、泥棒見たい」
「みたいじゃなくて、真似すんなよ?」
「しないよ。でも宝物庫って言うくらいだから、これすごい価値があるの?」
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