下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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東の浮遊城

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ミルクが来たので飲ませ、荷解きに行くのに親狐に任せたいというと出てきてくれたので、そのまま那智と迷いながらもなんとか広間につく。

「なんだこれ……」

「荷物の山だね……」

俺のスーツケースが!と那智が嘆いている横で、祖父と三郎が到着したと女中に言われて玄関まで行き、荷物を片付けたいことを話すと、「そんなもの女中に任せておけば勝手にやる。その為の選ばれた女中じゃからの」と祖父に言われ、食堂となっている広い部屋にある椅子とテーブルの端に座って、持ち込んだジュースを飲みながら、祖父に聞かれたことを話していく。

「お爺ちゃん。やっぱり、僕のこの力が関係してるんじゃないのかな?」

「なぜそう思う?」

「だって、あんな栞さん見たことなかったし、殺気っていうか……」

「子を守ることで頭がいっぱいじゃったんだと思うが、否定はせん。冬弥にも聞いたが八尾の出せる力を超えていたそうじゃ。雪翔の力と上手く合った……えーと、リンクしたというやつじゃ」

「リンク……」

「何にせよ、胡蝶も来ておるし、翡翠も頑張ってくれておる。時たまイチゴがどうのと言うておるがの」

「大丈夫なんだよね?」

「勿論じゃ。さてと、そろそろ冬弥も支度が終えた頃じゃろう。付いてきなさい」

祖父に連れていかれたのは大きな扉の前。
那智も航平もおり、何の変哲もない木の扉のようなところを、冬弥が術で開けると、中には赤い橋が真ん中にかかっていた。

「ここは本来は見せちゃいけないんですけど、父上は存在を知ってますし、那智も”多分”天狐になるでしょうし、雪翔と航平には見ておいてもらっていいと思ったので。この橋の左側が、この国の地図。反対側は小さな池みたいですが水盆です。ここから人間の世界も狐の世界も見れますから、あの男を探すのにいいと思いましてねぇ」

「相手にはバレないの?」

「雪翔の術、何でしたっけ。遠見法みたいなのは、バレます。無にならないと相手に気づかれますから。これは大丈夫ですが、感情は消してください。昴さんの所で雪翔には気配がバレそうでしたから」

「あ、前に見てたって言ってたヤツ?」

「ええ。ここからは私が探しますが、こっちの狐の国の方は入り込んでないか航平にお願いしたいんです。何もなければそれでよし。もし居たらどの辺かわかればそれだけでもいいんです。もちろん私と一緒にとなりますが」

「俺はいいですけど」

「父上は情報収集。那智は子守りで。で、見てください。この私の任されているエリアなんですけど、綺麗に光ってるでしょう?」

「なんじゃ?自慢か!」

「ここまで統治するのは大変だったんですよ?それと、各社にも気を置いてきました。冬休みのあいだは問題ないと思います」

「それはいいんだが、俺に子守は無理だ」

「そうですか?似合ってましたよ?」

「叔母上が無理やり括り付けるから仕方なくだ!」

「可愛いと思ってるくせに」

「ひ、否定はせん」

「僕は何するの?」

「雪翔は四郎と解読を。見直してください。あと一つとは言え、短刀まで出てきてますから、記述はあると思うんです」
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