下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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異界

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「玲さん?」

「前に書物で読んだことがあるんだ。高い妖力を持つものしか入れないってな。何も力を持たないものが入ると消えてしまうとか、しまわないとか……色々書いてあった。まさか本当にあるとは思わなかったが……」

「檪、僕が白に包まれてって言ってたけど、影にいる金たちは大丈夫なの?」

「本体。雪に何もなければ問題は無い。俺も力を貸すから。ただ、中がどうなっているのかは見たことが無いから何とも言えん」

「那智、どうします?」

「俺は行く。興味もあるし、散らされなければいいんだろ?」

「那智には私が力を分けます。開いたらすぐに行きますからあとのことは任せました」

無茶苦茶な話だと言ったが、冬弥は今行かなくてどうするんだ?と言った顔をしているので何を言っても無理だろう。

「白、黒と連絡は取れるのかな?」

「中でだとわかりません」

「だよね。白お願いできる?」

「お守りします」

いやいやをする翡翠を航平に押し付け、冬弥と那智と一緒に並び、入口であろう壁に手をおくと、スゥっと体が中に吸い込まれる。

「壁の中?何ここ……」

「息は出来るんだな」

「そう見たいですねぇ。でも、道も何も無いですよ?」

「檪……」

中は部屋でも無く、ただの空間。
それも絵の具の紫と赤を混ぜたような気持ち悪い色の空間になっている。

「ここは俺も初めての場所だ」

「来たことあるの?」

「天の庭の一角にも異空間は存在している。人間界に行く岩戸と狐の国をつなぐ空間のことを異空間と呼んでいる。ただ、ここは気が違う。早く出るに越したことは無い」

「でも、どう進んでいいのか。それにこれって浮いてるの?」

「雪は白が抱えているから浮いているが、他のものはこれが地に足がついている状態と思っていい。それに、ここに何かあるのであれば、雪ならば分かる筈だが……」

「何か感じないか?」

「そう言われても」

「やっぱり翡翠探知機がいりましたねぇ」

「あんなに嫌がってたから。ちょっと進んでみる?」

「どうやって進むんだよ。それに入口とか見えてないし、帰り方までわからん」

「仕方がありません。とにかく動いてみるしかないでしょう。那智、私の気の欠片を渡しておくので、身につけたままにしていてくださいよ?」

「これが無かったら既に俺は終わってるよ」

「僕は白に守ってもらってるけど……檪は?」

「まだ大丈夫。進むのならば纏まって行った方がいい。このような空間はばらばらになったら探せなくなることもあるから……」

「どうしたの?」

檪の見ている方を見ると、クネクネと動く細い紐のようなものが、だんだんと大きな黒い塊になり、人形に変わる。

「九堂……」

「いつの間に……」

「航平ちゃんは日本にいないって言ってたのに」

ジュルッと舌なめずりをしたあとにニヤリと笑い、「雪翔君、あなたの車椅子の後ろのポケットにずっといましたよ?ここに来たあとはこっそりとでて、付かず離れず付いてきました。ここには本体でしか入れませんし、術を使い続けないと私も壊れてしまいますから」
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