下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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「術者が死ぬって……」

「いや、すまん」

「とにかくだ、一先ずは冬弥に任せるしかないだろう?雪翔、護法童子を出してる間は疲れないのか?」

「うん。大丈夫だよ」

「それにしても……これなにで出来てるんだろうな」

那智がコンコンと入れ物を叩いているが、音も乾いた音なので、何で出来ているのか想像もつかない。

「御札で割れないかな?」

「紙でできたやつか?」

「あの人と僕が同じ術師なら出来ないのかな?」

「試してみるか……玲どうする?」

「今は何でもやってみて欲しい。なに、秋なら多少怪我したところで文句も言わないだろ」

絶対に言われると思いながらも、そう言えば全部あの九堂って男に投げてしまったんだと、金を呼ぶ。

「何?」

「札持ってない?『破』ってやつなんどけど」

「あるよ?僕達が書いたのでいいの?」

「何か違いはある?」

「ほとんど無いけど、字が汚いから」

「大丈夫。何枚か欲しいんだ」

札を貰って、何をしてもダメと聞いていたので直接貼り、強く念じるとボン!とすごい音がしたのでつい耳を塞いでしまう。

「おい、強すぎじゃねーか?」

「ご、ごめん。使い慣れて無くて……」

砂埃が消えて見てみると少しヒビが入った程度で、割れるとまでは行かなかった。

「このヒビから割れるんじゃないか?」

「私がやってみます」

周太郎と玲の二人が入ったヒビの部分を集中的に殴っていると、ヒビ割れが大きくなり、バリッという音とともに割れる。

「秋!」

玲が秋彪を抱き起こし声を掛けると、暫くして秋彪の目が開き、「兄貴?」と弱々しいながらも声を出したのでやった!と喜ぶが、冬弥がまだ帰ってきていない。

「白、黒に連絡つく?冬弥さん連れて帰ってきてもらってほしいんだけど」

「もうこちらに来られます」

「え?」

「おまたせしました」

冬弥が黒に抱えられて戻ってはきたが、着物はボロボロになっており、顔にも切り傷が出来ている。

「ひーちゃん、冬弥さん治して!」

「あいっ!」

座り込んだ冬弥の膝の上にちょこんと乗って、いつもと同じようにまた唸るのかと思ったら、何も言わずに手をいくつかの場所に当てている。

見ているとすぐに傷は塞がり、見た目は治ったように見えるが、「ひーたんはここまで。中はできないのー」

「中?」

「すいませんねぇ。あちらにもかなりの深手は追わせたんですけど、倒しきれなくって。中の方は神気を使いすぎたので少し休めば平気です。秋彪は出られたんですね」

「雪翔がな、札で割ってくれたんだ」

「玲さん違うよ。周太郎さんと玲さんが割ったんだよ?」

「いや、お前のあの術が無かったら割れてなかった……ありがとう」

撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で……

「うっ、なんでみんなで撫でるの……」

「雪翔、よく頑張りましたね。玲、狐の国の医師に見せた方がいいかもしれません。家で休ませてあげてください。桜狐、ついて行きなさい」

桜狐と玲が秋彪を連れて消え、白龍と黒龍にも戻ってとキーホルダーに戻ってもらい、那智が今いる社から飛ぶと言うので、それに付いていく。

戻ったのは誰の社でもなく、自宅。

「冬弥!」

「どうなったんじゃ?」

「えーと、まず休んでいいです?」

「栞さん布団を……」

「は、はい」
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