下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
62 / 87
星のマーク

.

しおりを挟む
「雪翔、逃げなさい」

「でもっ……」

「護法童子を呼んで逃げなさいっ!」

「無理だよ……」

車椅子で戦っている二人の横を抜けることは、一人では難しい。

手をポケットの中に入れて札を何枚か出し、九堂に当たれ!とダーツを投げるように紙を投げると真っ直ぐに飛んでいく。

「冬弥さん避けて!」

これでもかと言うほどの爆発する札をまとめて投げたので、声に出して叫んだが、札が爆発するまでの時間は短い。

ガン__ダダダダン!!!

自分が思っていたよりも爆発が大きく、砂埃に交じって壊れた木材等も上から降ってくる。

手を頭の上に置いたと同時にフワッと体が浮いたと思ったら、車椅子ごと冬弥が持ち上げており、すぐに景色が海に変わる。

「雪翔、いいですか?よく聞いてください」

「うん」

「私はあの男を……懲らしめてきます。すぐ側に玲の気も感じますから青狐に呼びに行かせました。すぐに来てくれます。那智と玲の言うことを聞いて安全なところまで逃げなさい」

「わ、分かった」

頭を軽く撫でられたと思ったらまた冬弥の姿が消えたので、周りをよく見る。

砂浜ではなく岩場。
位置的には海水がかからない場所ではあるが、車椅子を動かすのは難しい。

このまま満潮まではいられないなとキーホルダーを握りしめ、白、黒と呼ぶ。

「雪翔!」

「玲さん!白も!」

「すぐに移動しよう。近くの社にみんないるから」

「でも冬弥さんがまた戻っちゃって……」

「冬弥にはなんて言われた?」

「安全なとこに行けって。二人の言うこと聞きなさいって」

「だったらまずは社に行こう。周太郎もそこにいる。えーと、白だっけ?悪いんだか車椅子の方を頼む。雪翔ちょっと我慢しろ」

脇に手を入れられ、ヒョイッと持ち上げられたと思ったら肩に担がれ、そこからはどこをどう走ったらこんなに移動できるんたろう?と言うくらいの速さで言っていた社についた。

「坊ちゃん!」

「周太郎さん。怪我ない?」

「坊ちゃんこそご無事で……」

「何がご無事でだ。さっきまで腕の怪我を治してやってただろうが」

「那智様、内緒にと言ったのに……」

「怪我したの?どこ?」

「凛に治させた。頑丈な身体だよ周太郎は。なんせ釘が腕にいくつも刺さってたからな」

「なんで?どこでそんな怪我……」

「木箱を投げた時に横から飛び出してた釘に当たっただけです。それより……」

「そうだ!黒、黒は?」

「ここに」

「冬弥さんの所に行って助けてきて!」

「御意」

黒が居なくなって、白が車椅子をトンと置いてくれたので座り直し、秋彪を見る。

「眠ってる……のかな?」

「何しても割れないし、声も聞こえてないみたいでな……秋が暴れてくれたら中から割れないかと思ったんだが、全然起きねー!なにかの術かと思うんだが雪翔、心当たりないか?」

「僕も全部の本が読めたわけじゃないから……巻物に書いてあったのもこんなの書いてなかったし」

「その白にも壊してもらおうとしたんだが無理だったんだ。やっぱり術者が解くか死ぬしか……「玲!」」

「あ、すまん……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...