下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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星のマーク

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藍狐の持つ明かりを頼りに先へと進むが、脇道などは通らずずっと真っ直ぐに進む。

「突き当り?」

「ここがそうですよ?」

「壁にしか見えないけど……」

「木の枠でおおってありますからねぇ。誰が作ったのか、脇道もトンネルのようにこんなふうに所々木で補強のようにしてありますが、ここ見てください」

近くによって明かりで照らされて初めてわかる岩の切れ目。見用によっては岩戸に似ているとも言える。

「風?」

「少し出てるでしょう?ただ開かないんです。壊せるならいいんですけどねぇ」

「それ、やったことある言い方だよね?」

「昔は私も若かったので」

「やったんだ……」

「まぁ、社も無事でしたし、びくともしませんでした。もう700年は前ですけどね」

「えっと、秋彪さんが来る前?」

「そうです。いつからこれがここにあるのかも分かっていません」

冬弥に分からないのなら自分にもわからないと思うのにと言いながら、藍狐に明かりを近づけてもらって、隅から隅まで見る。

「この木の枠……」

「枠がどうかしました?」

「ほら、ここの所。枠から少しはみ出してなにか彫り物のあとがあるみたい」

「坊ちゃん、ちょっといいですか?」

周太郎が枠に近づいて、何かを確認したあと、「この枠カラクリになってるので外せるかも知れません」と言う。

「こんな細い枠がですか?」

「この前、御館様のカラクリ箱を開けさせられた時に、煙管入れを外したことがあるんです。何でも市で買ったのに開かないと仰って。それに似てるんです。ほら、横に少し筋が入ってますでしょう?」

「周太郎に任せます。もし無理なら壊してしまっていいですよ?」

「もう、壊せばいいってものじゃないと思うし。それに、これがカラクリなら誰かがやっぱり入れないようにしてるんだよ」

「だからです。ここから先の気もなにも私でもわかりません。分からないところだからこそ秋彪に繋がると思ったんです」

カタカタといくつもの細い木の番のようなものを外すと、カタッと音がして縦だった枠の一部が横になる。

「これでいいと思うんですが」そう言って横の枠を右にずらすと、一部が完全に外れて岩肌が見える。

「周太郎、でかしました!」

「冬弥さん……これって……」

「ええ、星のマークですねぇ」

「知ってたの?」

「いえ。雪翔に言われるまで知りませんでしたし、そのような気も感じてません。通りで開かないわけです」

「もしかしてだけど、あの本みたいに僕が触ったら開くのかな?」

「それもやってみないことには」

壁になっているところや、星のマークに手を触れたり押したりしても何も起こらないので、「ひらけゴマ」と言ってみるも何も起こらず、どうしたものかともう一度周りをよく見てみると、ほかの場所にも周太郎が解いたからくりと同じようなものをを見つけ、全てを解いてもらう。

「全部で五つ……」

真ん中に手を置くと、ゴゴゴッと音がし、五つの星マークから光の筋が出て五芒星のマークになり、岩戸がフッと消えた。

「急ぎましょう」

中はさらに暗く、かろうじて足元がわかる程度だったので、冬弥が追加で明かりを作ってくれたので、その提灯を持ち辺りを見回す。
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