下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
47 / 87
再び

.

しおりを挟む
音楽が流れたのであっという間にみんなが揃い、配食の手伝いをして自分の分も持って隆弘の横に座る。

「お、今日はこっちなのか?」

「たまには。それに、今日の魚好きなんだもん」

「今お婆さんたち来てるんじゃないのか?」

「うん。侑弥見に来てるよ?まだ栞さん一人じゃ大変だからって」

「今日は来ないのか?俺達も楽しみにしてるんだけど」

「機嫌のいい時だけじゃないんですか?もしかして隆弘さんて子供好きとか?」

「嫌いじゃないよ?航平もパパって感じに見えるんじゃないか?」

「パパ……あ!忘れてた……」

「何を?」

糠漬けのきゅうりを頬張りながら、航平が頭を抱えだしたので何事かと思ったら、那智たちの朝の食事を作るように言われていたと言って「怒られるー」と言いながらも急いで食べていた。

「航平、那智たちのなら、お稲荷を持たせましたから。安心していいですよ」

「冬弥さん……ありがとうございます。放っておいたらパン一枚も焼かないんですよ?何なんですか?あのタカビーは……」

「でも、那智さんの南の家に行ったとき、料理してたよ?」

「俺には包丁も握れないって言ってたけど……」

「甘えたいんじゃないのか?那智さん」

「隆弘さんまで……男に甘えられてもなぁ」

「でも、那智さんと航平なら目立つよな。スーパーとか似合いそうにないし。去年だっけ?賢司の居酒屋行った時も微妙に馴染んでるようで、日本酒飲んでるの目立ってたし」

「そう!目立つんですってば。いつもスーツだし、大学に来た時なんて女子がキャーキャー言ってて……『誰あの人ー。カッコイイー』って。そこで声掛けられて父親発言されたからしばらく大学でからかわれるし……」

「那智さん嬉しいんじゃないの?ダディって呼んだらもっとご機嫌になるのに」

「無理!そんな事したら一生言わされる。雪翔もだろ?」

「うん、お父さんじゃダメなのかな?」

「だ・め・で・す!」

後ろからいきなり言われたので、周りのみんなにも笑われたが、なんでパパにこだわるのかがまだいまいち分かっていない。

「なんでパパがいいの?」

「え?いきなり聞きます?前にも言いましたけど……パパがいいんです!ほら、侑弥もそのうちパパって呼ぶでしょう?その時に雪翔だけ冬弥さんて呼んだら侑弥がビックリしますよ?」

「僕、高校生だし、お父さんでいいじゃん」

「俺なんて大学生なのにダディだぞ?笑われるってよりも俺が恥ずかしい……」

そんな話をしていると、もうみんな時間になったのか、高校生組が学校に行きだし、厨房の奥の扉からはまた侑弥をおんぶした祖父が慌てて入ってくる。

「雪翔ー!」

「おじいちゃんうるさい!」

「侑弥が泣き止まんのだ。栞さんでも泣き止まんし、何とかしてくれぃ」

「何とかって……」

侑弥をおんぶ紐から離して抱っこすると、背をのけぞって泣くので、どうしたものかと、あやして見るが全然泣き止まず、抱っこしているこちらが汗をかくほどだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...