下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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天からの使い

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みんなの準備が整ったと連絡が来たので、玄関に集まるように言われて那智を見ると、那智もなにか考えているようで、心配になってのぞき込む。

「那智さん?」

「大丈夫だ。航平も言えないことはあるだろうしな……」

「航平ちゃんて、昔からあんな感じなんだよ?いつも一人で悩んでたりするの。その後はまた普通に戻るけど」

「雪翔がいうなら大丈夫だとは思うが、多分バイト先のことが不安なのかもしれんな」

「薬屋さんの?」

「あそこは人以外のものがほとんどだし、中立地帯だから何も起こらんが、最初は見に行った方がいいかもしれんとは思ってる」

「それ伝えた?」

「いや?」

「言わないとわからないこと多いよ?僕も言えなくて栞さんと喧嘩したことあるもん」

撫で撫で撫で撫で……

ありがとよ。と言われ、急ごうと玄関まで押してもらう。

「みんな揃ったか?」

祖父が周りを見渡して確認した後、裏の社から一気に城の近くの社まで飛ぶ。

「あ!蘭さんは?」

「栞さんを見ておる。産後は一月かけてゆっくりと起きていくのじゃが、今回は早かったでの、ちょいとゆっくり目の方が良いみたいじゃ」

「体、悪くなっちゃったの?」

「一応じゃ。どこも悪くは無いから心配することは無い。それにしても酒臭いのぅ」

「お爺さんからもプンプン臭いますよ?」

「そうか?」

祖父についていき、社の前で手を合わせたあとに隣の社務所によく似た建物にみんな入る。

「ここで何するの?」

「雪翔、足伸ばしてていいぞ?」

「うん。でも、みんな正座してるし。那智さんも……」

「ちゃんとした所ではするさ。ほら、もう始まる」

目の前にある大きな祭壇に、侑弥の名前が額に入れてかけられ、祈祷師のような格好をした人が、わからない言葉でお経のようなものを読み上げて、祖父がお札をもらって終了した。

外に出てから、それが健康のお守りなのかと聞くと、そうだとの事で、へその緒と共に閉まっておくと聞いた。

「ただいまー」

帰ってすぐに、栞さんの部屋に行くと、栞の父が来ており、侑弥を抱っこしていた。

「お爺ちゃん、いつ来たの?」

「少し前にな。やっと玄関先のものが片付いたんで、栞にこれからどうするのか聞きに来たんじゃ」

「どうするって?」

「ここにいるか、里帰りするか。とは言っても近いんだけどね」

「どっちにいるの?」

「一旦実家に帰ろうと思うの。その後、冬弥様が迎えに来る前にもう一度こっちに戻るんだけど」

「そうなんだ。えっと、今が10月だから、11月には帰ってくる?」

「そのくらいかな?」

「なんじゃ、寂しいのか?」

「そ、そんな事ないもん!」

「雪翔にも居ってくれと言いたいんじゃが、一月もこっちにいた事になってるし、一旦帰らないとみんなが不思議がるから、週末にまた冬弥君に連れてきてもらったらいい」

「そうする。家で何かしておくことない?」

「特には。一応病み上がりってことで帰るんだから、無理しちゃダメよ?学校も誰かと一緒に……あらやだ、檪様がいるから安心よね」

「栞さん心配しすぎ」
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