下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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天からの使い

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次の日は流石にみんな飲みすぎがたたったのか、広間で雑魚寝をしており、散らかっていた部屋は綺麗に片付けられていた。

「周太郎さん」

呼ぶとすぐに来てくれ、祖父がどこにいるのかを聞くと、暇があれば侑弥を見に行っていると言う。

「明日にはみんな帰るのに起きられるのかな?」

「普段はこんなに飲まないですから、相当皆様嬉しかったんだと思います。昼には誰かが起きてくると思いますが」

「ならいいんだけど。ねえ、街に遊びに行っちゃダメ?」

「ダメです!あんな事があったばかりなので、流石に御館様も駄目だと仰います!」

「裏のお社は?結界とか張ってあるんでしょ?」

「どなたかに聞かないと……」

そんなやり取りをしていると、冬弥が珍しく欠伸をしながら歩いてきたので、先程の話をする。

「街はダメです……と言いたいところですが、近いので栞さんの実家にお使いに行ってください」

「うん!航平ちゃんも一緒でもいい?」

「良いですよ。三郎と周太郎も一緒に行ってください」

風呂敷包みをいくつか渡され、それを力持ちの周太郎が持ち、三郎が車椅子を押してくれる。

「良かった。外に出られて」

「雪翔、お前自覚しろよ?ひど目に遭ったのに……」

「だって、侑弥は可愛いけどみんなうるさいんだもん」

「確かに……」

「坊ちゃん、街でなにか買いたいものでも?」

「実はそうなんだ。カバンごと持ってきてくれて助かったよ。お財布あるから銀行によってね」

「あ、俺も何か変なカード渡された。どこでも使えるとかって」

「狐の国のお金に変わるんだよ。人間の国のお金でいいんだって」

「へぇ……いくら入ってるんだろ?」

「お小遣い?」

「だと思う。好きに使えって渡された」

「那智さんらしいね」

銀行に寄り、カードで一万円引き出して隣の航平を見ると、ボタンを押す手が固まっている。

「航平ちゃん?」

「あ、有り得ねぇ……」

「なにが?」

「無くなったらいつでもいえって言われて、とりあえずって渡されたんだけどさ、一千万入ってるんだよ!何考えてんだ?」

「凄い!」

「いる分だけにしておく……」

航平の引き出しもちゃんと終わり、街に行く前に栞の実家によると、店はまだ閉まって居たので玄関から声をかける。

「こんにちはー。お爺ちゃーん」

「おお、雪翔か。すまないね、散らかっていて」

「これ全部お祝い?」

「そうなんだよ。奥に運んでいてもキリがなくて……それよりどうしたんだい?出歩いたら危ないじゃないか」

「お使いだからいいの。冬弥さんから預かり物」

周太郎が持っていた荷物を渡し、祖父が確認すると、「上がっていくかい?」と聞かれたので、街に買い物に行くと伝えて、家を出る。

「えっと、お団子屋さんと、あの変なショッピングモールみたいなとこに行きたいんだ」

最初にショッピングモールに行き、雑貨屋を見つけて中に入り、目的のものを見つけて袋に入れてもらう。

その後は団子屋によってみんなの分のお団子も買い、少しだけ本屋にも寄ってもらってから家に戻る。

「航平ちゃん、何買ったの?」

「腰につけるチェーンだよ。ぱっと見て手に取ったらすぐにわかったんだけど、これブランドのヤツ。欲しかったからこんなとこで見つかるとは思わなかったし、値段がめちゃくちゃ安かった!こっちに来て見つける確率凄いかも」

「ブランド品なら高いでしょ?」

「千円だぞ?これ限定品で、ナンバーが彫られてるんだけどさ、ここ。007/100ってあるだろ?」

「限定100個が千円?」

「こっちと向こうの通貨って違うんですか?」と航平が三郎に聞くと、「同じです。千円は千円で変わらないですが、価値とかとなると、また考え方も違うので。こちらにはブランドというのはないですし、仕入れた者もどう手に入れてるのか定かではありませんから」

「盗品とかもあるってこと?」

「あちらで騒ぎになるようなものは持ち込めませんから、ちゃんとしてると思いますよ?」

「そうだよね……良いじゃん!お得で」

「得すぎる。でもラッキーだった」
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