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天からの使い
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その後宴会の続く部屋を通り越し、玄関へと向かうと、広い玄関にはたくさんの祝の品が届いており、厨房でまだジュースが残っているか聞いて、一缶ずつもらって庭に出る。
「雪翔、おかえり」
そう言われて乾杯し、昔と同じようにぼーっと二人でしながらジュースを飲んで日向ぼっこをしてウトウトとする。
「こりゃ、お前達何をしておる」
「ん?あれ?お爺ちゃん?」
「若いのにぼーっとして、悩み事か?」
「違うよ?遊んでたの」
「何もしておらんかったではないか」
「昔から航平ちゃんとぼーっとしてるのが好きだったんだ」
「それだけか?」
「そうだよ?」
「全く、のんびりしておるのぅ。それより、昴がそろそろ帰るそうじゃ」
「じゃあお見送りしなきゃ」
「もうそろそろ玄関に来るからそこから回ってきなさい」
「はーい」
玄関で、「またな」と言われたので、また来ますと言って手を振る。
「お爺ちゃん、みんなまだ料理運んでるけど……」
「あぁ、秋彪と玲がよう食べる。それに珍しく那智も食うておるからの、すぐに無くなるんじゃ」
「やっぱり心配させちゃったからだよね」
「それは否定はせんが、無事だったんじゃからいいではないか。それに侑弥も生まれた。みんな緊張の糸が解けたのじゃろう。暫くはこのままで良い良い」
「うん」
「それよりお前達遊んでおったと言っておったが、『てすと』はいいのか?」
「あぁぁぁ、こ、航平ちゃーん」
「はいはい。すいません、少し勉強見てきます」
「すまんの。航平も疲れたらみんなの所で飲むといい」
「だから未成年なの!」
プンプンとしながら部屋に行き、封筒の中身を見ると休んでいた分のコピーが入っていた。
それと教科書などを照らし合わせて、習っていないところを集中的にやる。
「雪翔は三年までのテキスト終わってるんだろ?」
「うん」
「だったらある程度わかるんじゃないのか?」
「理屈はね?でも教えて貰った方が頭に入りやすいの。覚えなきゃいけないのは何とかなるんだけど、数式見ると慌てちゃうんだ……」
「大学決めたのか?」
「学部のこと?」
「そう」
「もう迷ってる暇ないんだけどね、まだ僕歩けないし、あと四年で歩けるかもわからないから、法学部にしようと思うんだ。えっとね、社会福祉主事ってのが取れるみたいで、証明書とかないみたいなんだけど、福祉のこととか障害のこととか勉強できるし、今の僕なら役に立てないかなって思って」
「あれ、34科目中3科目取ればいいんだっけ?」
「そんなようなことは書いてあったけど、医学から看護や経済まで幅広く勉強できるから」
「そっか。雪翔がそう決めたんなら頑張れ!俺は応援する」
「ありがと!航平ちゃん」
「あと一年ないぞ?偏差値も高い……あ、お前推薦じゃないか?」
「わかんないよ。定時からだから……普通に受けなきゃいけないならもっと頑張らないといけないし」
「帰ったら資料もらってこいよ。隆弘さんと見てやるから」
「うん」
夕方まで勉強してから、宴会場まで行くと、みんなの狐も出てきて、お酌したり踊ったりとお祭り騒ぎがまだ続いていた。
「ねえ、寝てるの?」
近くにいた玲に聞くと、みんな適当に飲んで寝てると返ってきたが、起きたらまた飲むんだ!と匂いがすごいので障子を開けて空気の入れ替えをする。
「ゆ・き・と・くぅーん」と聞きなれた声がしたので避け、ジイジ飲み過ぎ!と言うと、バアバも酔って寝てるという。
「いいのかな?」
「俺、ここにいちゃいけない気がするんだけど」
「僕もそう思う……」
とにかくお腹がすいたからと、結局台所まで行って、お膳で用意してもらうことにした。
「坊ちゃん方お揃いで。祝には行かれないのですか?」と女中頭に聞かれるが、あの雰囲気とお酒の匂いで酔いそうだからと言って、ご飯を食べ、さっさとお風呂に入る。
「こうへーーーー!なんで戻ってこねーんだ!」
「那智さん!だってあの部屋くさいですって!那智さんも酒くっさ!」
「祝だからいいんだよ!ほら、お前達こい」
せっかくお風呂に入ったのにと宴会場まで連れていかれ、なぜだかみんなのお酌をさせられる。
かなり遅い時間に、冬弥が「薬飲んでます?」と言いに来たので、航平と後ろに隠れて「もう部屋に戻りたいよ……」とおねだりすると、撫で撫でとされこっそりと部屋に戻してくれた。
「雪翔、おかえり」
そう言われて乾杯し、昔と同じようにぼーっと二人でしながらジュースを飲んで日向ぼっこをしてウトウトとする。
「こりゃ、お前達何をしておる」
「ん?あれ?お爺ちゃん?」
「若いのにぼーっとして、悩み事か?」
「違うよ?遊んでたの」
「何もしておらんかったではないか」
「昔から航平ちゃんとぼーっとしてるのが好きだったんだ」
「それだけか?」
「そうだよ?」
「全く、のんびりしておるのぅ。それより、昴がそろそろ帰るそうじゃ」
「じゃあお見送りしなきゃ」
「もうそろそろ玄関に来るからそこから回ってきなさい」
「はーい」
玄関で、「またな」と言われたので、また来ますと言って手を振る。
「お爺ちゃん、みんなまだ料理運んでるけど……」
「あぁ、秋彪と玲がよう食べる。それに珍しく那智も食うておるからの、すぐに無くなるんじゃ」
「やっぱり心配させちゃったからだよね」
「それは否定はせんが、無事だったんじゃからいいではないか。それに侑弥も生まれた。みんな緊張の糸が解けたのじゃろう。暫くはこのままで良い良い」
「うん」
「それよりお前達遊んでおったと言っておったが、『てすと』はいいのか?」
「あぁぁぁ、こ、航平ちゃーん」
「はいはい。すいません、少し勉強見てきます」
「すまんの。航平も疲れたらみんなの所で飲むといい」
「だから未成年なの!」
プンプンとしながら部屋に行き、封筒の中身を見ると休んでいた分のコピーが入っていた。
それと教科書などを照らし合わせて、習っていないところを集中的にやる。
「雪翔は三年までのテキスト終わってるんだろ?」
「うん」
「だったらある程度わかるんじゃないのか?」
「理屈はね?でも教えて貰った方が頭に入りやすいの。覚えなきゃいけないのは何とかなるんだけど、数式見ると慌てちゃうんだ……」
「大学決めたのか?」
「学部のこと?」
「そう」
「もう迷ってる暇ないんだけどね、まだ僕歩けないし、あと四年で歩けるかもわからないから、法学部にしようと思うんだ。えっとね、社会福祉主事ってのが取れるみたいで、証明書とかないみたいなんだけど、福祉のこととか障害のこととか勉強できるし、今の僕なら役に立てないかなって思って」
「あれ、34科目中3科目取ればいいんだっけ?」
「そんなようなことは書いてあったけど、医学から看護や経済まで幅広く勉強できるから」
「そっか。雪翔がそう決めたんなら頑張れ!俺は応援する」
「ありがと!航平ちゃん」
「あと一年ないぞ?偏差値も高い……あ、お前推薦じゃないか?」
「わかんないよ。定時からだから……普通に受けなきゃいけないならもっと頑張らないといけないし」
「帰ったら資料もらってこいよ。隆弘さんと見てやるから」
「うん」
夕方まで勉強してから、宴会場まで行くと、みんなの狐も出てきて、お酌したり踊ったりとお祭り騒ぎがまだ続いていた。
「ねえ、寝てるの?」
近くにいた玲に聞くと、みんな適当に飲んで寝てると返ってきたが、起きたらまた飲むんだ!と匂いがすごいので障子を開けて空気の入れ替えをする。
「ゆ・き・と・くぅーん」と聞きなれた声がしたので避け、ジイジ飲み過ぎ!と言うと、バアバも酔って寝てるという。
「いいのかな?」
「俺、ここにいちゃいけない気がするんだけど」
「僕もそう思う……」
とにかくお腹がすいたからと、結局台所まで行って、お膳で用意してもらうことにした。
「坊ちゃん方お揃いで。祝には行かれないのですか?」と女中頭に聞かれるが、あの雰囲気とお酒の匂いで酔いそうだからと言って、ご飯を食べ、さっさとお風呂に入る。
「こうへーーーー!なんで戻ってこねーんだ!」
「那智さん!だってあの部屋くさいですって!那智さんも酒くっさ!」
「祝だからいいんだよ!ほら、お前達こい」
せっかくお風呂に入ったのにと宴会場まで連れていかれ、なぜだかみんなのお酌をさせられる。
かなり遅い時間に、冬弥が「薬飲んでます?」と言いに来たので、航平と後ろに隠れて「もう部屋に戻りたいよ……」とおねだりすると、撫で撫でとされこっそりと部屋に戻してくれた。
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