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天からの使い
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「何かあったのかな?幸さんの時は冬弥さん一人で加護ってやつしてたけど」
「俺もそこはよくわからん。俺のときは叔父上……当主の知り合いの天狐にしてもらったって聞いたが……」
「普通の家の子はどうするの?」
「城の近くに社があってな、東西南北とあるんだが、そこで加護を受ける。無理な場合は札を近くの社で貰ってくるってやり方だ」
「それじゃ、みんなに狐はつかないんじゃない?」
「それはそうなんだが……」
「雪翔よ、那智でもわからんことはある。みんなに付けばそりゃいいだろうが、やはりこの世界でも上下関係はあるのじゃ。本当ならあってはならんのじゃがな。それに、加護を受けても必ずつくとも限らんし、これだけは天狐と言えども好きにはできんのじゃ」
「難しいんだね……でもさっきの声……」
「儂にも分からん」
襖が開き、昴が出てきて「加護を受けてすぐに狐がつく子はいるんだがな……」と変な顔をしている。
「どうかしたんですか?まさか……付かなかったとか……」
「いや、すぐに降りてきたんだが……その……」
「はっきり言わぬか!妾達とてとても気になるではないか!義母上が失敗したのなら……」
「それは無い。胡蝶も天狐で力は半端なく強い。その、狐なんだがな……て……」
「て?」
とみんなが昴に向かって身を乗り出す。
「て、天の使いが二尾とその眷属が一尾の三尾がついた」
「えーーーーー!」
と両家の祖父母から、那智の両親までみんなが驚いていたが、航平と自分だけは意味がわからないでいた。
「こ、こ、こ……」
「お爺さん、顎でも外れました?」
と座り込んでいる祖母に言われ、「菫こそ腰が抜けておるではないか!」と言い返す祖父。
「ねえ、何かあるの?」
「う、宴じゃ!宴の支度をせよ!」
その一言でまた使用人たちが慌ただしく支度を始め、意味のわからないまま取り敢えずと冬弥と祖父、京弥以外別の部屋で待たされた。
「ねえねえ、天の何とかって何?」
「天の使いのことかえ?」
「蘭さん知ってるの?」
「話には聞いたことがあるだけで、見たとはないし、そもそも書物の中だけの話と思うておった」
「それで?」
「近い!それとその銀髪?金髪?そなたはまた良い男じゃのぅ。妾の……」
「待て待て、俺の子だ」
「なんと残念なことよ。飽いたら何時でも妾の所に来るのじゃぞ?雪翔も歓迎じゃ」
「は、はい……」
「はいって言うな!で、その加護の話を聞かせてくれ」
「生意気よの……文弥殿の甥でなければ散らすところじゃ」
「散らされてたまるか!で?なんか赤ん坊に影響あんのか?」
「あるともさ。天の使いは天狐の上、皆が神と思うておるものの使いとも言われておって、その姿は誰も見たことがないとされておる伝説のようなものじゃ」
「神様の使い?」
「そうじゃ。神にのみ使えると妾達は信じておった。まさか天狐の子とはいえ、赤子に降りるとは誰も思わんじゃろ?」
「蘭さん、そうなると何かダメなこととかあるの?赤ちゃん大丈夫なの?早く生まれたからとか、あと……」
「雪翔よ、心配するでない。見たであろ?可愛い男の子であったではないか。顔色もよく、元気に泣いておったし、母になった……」
「栞さん!」
「そう、栞殿の顔色も良かったから何も問題は無い。元仙人様の菫(すみれ)様と文弥殿、あと天狐には分かったのであろうが、妾では少し気が大きいくらいにしか感じなかったのでな……」
「要は珍しい赤ん坊の誕生ってことか?」
「簡単に言えばそうじゃ。しかし、この事は外部に漏らさぬほうが良い。もし力が強ければ強いほど、馬鹿な考えを持つものが狙うて来るのじゃ。そこなご夫婦、栞殿の親御様とお見受けするが、口外禁止ぞ?」
「も、もちろんでございます。娘も孫も私共にとって宝。仙様のお言いつけ通りに!」
「これ、一人孫が減っておるではないか!」
とこちらを見られ、「僕?」と指をさしてしまった。
「俺もそこはよくわからん。俺のときは叔父上……当主の知り合いの天狐にしてもらったって聞いたが……」
「普通の家の子はどうするの?」
「城の近くに社があってな、東西南北とあるんだが、そこで加護を受ける。無理な場合は札を近くの社で貰ってくるってやり方だ」
「それじゃ、みんなに狐はつかないんじゃない?」
「それはそうなんだが……」
「雪翔よ、那智でもわからんことはある。みんなに付けばそりゃいいだろうが、やはりこの世界でも上下関係はあるのじゃ。本当ならあってはならんのじゃがな。それに、加護を受けても必ずつくとも限らんし、これだけは天狐と言えども好きにはできんのじゃ」
「難しいんだね……でもさっきの声……」
「儂にも分からん」
襖が開き、昴が出てきて「加護を受けてすぐに狐がつく子はいるんだがな……」と変な顔をしている。
「どうかしたんですか?まさか……付かなかったとか……」
「いや、すぐに降りてきたんだが……その……」
「はっきり言わぬか!妾達とてとても気になるではないか!義母上が失敗したのなら……」
「それは無い。胡蝶も天狐で力は半端なく強い。その、狐なんだがな……て……」
「て?」
とみんなが昴に向かって身を乗り出す。
「て、天の使いが二尾とその眷属が一尾の三尾がついた」
「えーーーーー!」
と両家の祖父母から、那智の両親までみんなが驚いていたが、航平と自分だけは意味がわからないでいた。
「こ、こ、こ……」
「お爺さん、顎でも外れました?」
と座り込んでいる祖母に言われ、「菫こそ腰が抜けておるではないか!」と言い返す祖父。
「ねえ、何かあるの?」
「う、宴じゃ!宴の支度をせよ!」
その一言でまた使用人たちが慌ただしく支度を始め、意味のわからないまま取り敢えずと冬弥と祖父、京弥以外別の部屋で待たされた。
「ねえねえ、天の何とかって何?」
「天の使いのことかえ?」
「蘭さん知ってるの?」
「話には聞いたことがあるだけで、見たとはないし、そもそも書物の中だけの話と思うておった」
「それで?」
「近い!それとその銀髪?金髪?そなたはまた良い男じゃのぅ。妾の……」
「待て待て、俺の子だ」
「なんと残念なことよ。飽いたら何時でも妾の所に来るのじゃぞ?雪翔も歓迎じゃ」
「は、はい……」
「はいって言うな!で、その加護の話を聞かせてくれ」
「生意気よの……文弥殿の甥でなければ散らすところじゃ」
「散らされてたまるか!で?なんか赤ん坊に影響あんのか?」
「あるともさ。天の使いは天狐の上、皆が神と思うておるものの使いとも言われておって、その姿は誰も見たことがないとされておる伝説のようなものじゃ」
「神様の使い?」
「そうじゃ。神にのみ使えると妾達は信じておった。まさか天狐の子とはいえ、赤子に降りるとは誰も思わんじゃろ?」
「蘭さん、そうなると何かダメなこととかあるの?赤ちゃん大丈夫なの?早く生まれたからとか、あと……」
「雪翔よ、心配するでない。見たであろ?可愛い男の子であったではないか。顔色もよく、元気に泣いておったし、母になった……」
「栞さん!」
「そう、栞殿の顔色も良かったから何も問題は無い。元仙人様の菫(すみれ)様と文弥殿、あと天狐には分かったのであろうが、妾では少し気が大きいくらいにしか感じなかったのでな……」
「要は珍しい赤ん坊の誕生ってことか?」
「簡単に言えばそうじゃ。しかし、この事は外部に漏らさぬほうが良い。もし力が強ければ強いほど、馬鹿な考えを持つものが狙うて来るのじゃ。そこなご夫婦、栞殿の親御様とお見受けするが、口外禁止ぞ?」
「も、もちろんでございます。娘も孫も私共にとって宝。仙様のお言いつけ通りに!」
「これ、一人孫が減っておるではないか!」
とこちらを見られ、「僕?」と指をさしてしまった。
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