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天からの使い
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多分、と前置きした上で、冬弥と那智がその空間での出来事が一月に値するとなると、時間軸が違ったのだろうと言い、様子を見るためにも二三日滞在していくと言う。
「下宿は?」
「隆弘に任せました。勿論術ですが。それと、司法試験に合格したそうです」
「凄い!お祝いしたよね?」
「はい。下宿の子としましたが、雪翔は調子が悪く、空気のいい祖父母のところで療養していると嘘つきましたからねぇ」
「あ、テストの時期だ……」
「お前ちょっとくらい自分の心配しろよ。テストじゃなくて!航平に教えてもらえばいいだろ?」
「秋じゃ無理だもんな」
「兄貴は余計なこと言うな!なんで松竹梅出したんだよ!大人出せよな大人の狐」
「咄嗟だったからな。それに社にも置いて来てたし、あれが精一杯だ」
「何にせよ、車椅子投げた那智よりは役に立ったと思いますよ?」
「お前達四人がかりでなんで助けられなかったんだ?」と昴が聞いたので、見えない壁のようなものがあって、なんとか割れたと思ったら間に合わなかったとみんな下を向いてしまった。
「今度からは我等をお投げください」と三郎たちが馬鹿なことを言い、車椅子が当たってたら怪我してた等、段々と話がいつものように逸れてしまった。
「あれ、栞さん?」
「あ、何でもないの。ちょっとお腹が……」
「栞、あなたもしかして産まれるんじゃないの?」
「でもまだ早いと思うけど」
「「どれ、妾が見て……」」
「蘭、邪魔をするでない!」
「義母上様こそ!妾は安産の社狐。天狐様のお子を取り上げたとあらば、義母上も鼻が高かろ?」
「妾も子を司る狐じゃ!」
「あのー。産まれるなら病院行かなくていいのかな?」
「どれ?」
と、栞の腹の上に手を置いたのは胡蝶。
「駄目じゃ。もう産まれる……ジジイ、ここで産ませるが良いか?」
「じじい呼ばわりするのはお前くらいじゃ。構わん、必要なものは用意させる。冬弥、生まれてからのあちらのことは上手くやるのじゃよ?」
「はい。私は何をしたらいいですかねぇ?」
「男は全員廊下じゃ!」
「え?」
「当たり前の事じゃ。妾達とすみれ殿でなんとかなるであろ?栞殿の母君は、手を握って声を掛けて……あぁ、もう邪魔じゃな!男共は外で待てぃ!邪魔じゃ!ボケッ!」
まさかあんなに綺麗な人からボケッて言葉が出るとはとポカーンとしていたら、みんなに担がれて違う部屋に移動させられる。
その間、何故かみんな熊のようにウロウロと歩き回り、普通に座って待っていたのは自分と航平だけだった。
「ね、ねえ。座ったら?」
「そ、そうですよね。父上もほら……」
「う、うむ」
「那智さんもジイジも!」
「そうだよな。うん、大丈夫だよな」
「どうして昴さんまでウロウロしてるの?」
「いや、実はな……って冬弥話してなかったのか?」
「はい」
「栞さんにも?」
「栞さんは知ってます」
「息子にも伝えておけよ。あのな、天狐の子を産むってことは、生きるか死ぬかだ」
「え?でもみんな普通に産んでるし……」
「力が強いんだよ。赤ん坊の……だから早く生まれたり遅く産まれたりの差も激しいし、腹の中の水も天狐の気で出来ていると一説にはあって、取り上げる狐は大抵気に当てられて仕事が出来なくなるか、良くて腕の一本なくなる覚悟がいる」
「何……それ。だったら胡蝶さんや蘭さんもおばあちゃん達も危ないってこと?」
「簡単に言えば。だが、胡蝶と蘭は天狐と仙。すみれの婆さんも元仙狐。栞さんの母上はみんなが守るだろうが、とにかく栞の体力次第だな」
「そんな……早く言ってよ。いつも大切な事は後回しにするんだから!もし、もし僕の事で早まったんなら……僕どうしよう」
「大丈夫だ。雪翔のせいじゃない」
「那智さん」
「下宿は?」
「隆弘に任せました。勿論術ですが。それと、司法試験に合格したそうです」
「凄い!お祝いしたよね?」
「はい。下宿の子としましたが、雪翔は調子が悪く、空気のいい祖父母のところで療養していると嘘つきましたからねぇ」
「あ、テストの時期だ……」
「お前ちょっとくらい自分の心配しろよ。テストじゃなくて!航平に教えてもらえばいいだろ?」
「秋じゃ無理だもんな」
「兄貴は余計なこと言うな!なんで松竹梅出したんだよ!大人出せよな大人の狐」
「咄嗟だったからな。それに社にも置いて来てたし、あれが精一杯だ」
「何にせよ、車椅子投げた那智よりは役に立ったと思いますよ?」
「お前達四人がかりでなんで助けられなかったんだ?」と昴が聞いたので、見えない壁のようなものがあって、なんとか割れたと思ったら間に合わなかったとみんな下を向いてしまった。
「今度からは我等をお投げください」と三郎たちが馬鹿なことを言い、車椅子が当たってたら怪我してた等、段々と話がいつものように逸れてしまった。
「あれ、栞さん?」
「あ、何でもないの。ちょっとお腹が……」
「栞、あなたもしかして産まれるんじゃないの?」
「でもまだ早いと思うけど」
「「どれ、妾が見て……」」
「蘭、邪魔をするでない!」
「義母上様こそ!妾は安産の社狐。天狐様のお子を取り上げたとあらば、義母上も鼻が高かろ?」
「妾も子を司る狐じゃ!」
「あのー。産まれるなら病院行かなくていいのかな?」
「どれ?」
と、栞の腹の上に手を置いたのは胡蝶。
「駄目じゃ。もう産まれる……ジジイ、ここで産ませるが良いか?」
「じじい呼ばわりするのはお前くらいじゃ。構わん、必要なものは用意させる。冬弥、生まれてからのあちらのことは上手くやるのじゃよ?」
「はい。私は何をしたらいいですかねぇ?」
「男は全員廊下じゃ!」
「え?」
「当たり前の事じゃ。妾達とすみれ殿でなんとかなるであろ?栞殿の母君は、手を握って声を掛けて……あぁ、もう邪魔じゃな!男共は外で待てぃ!邪魔じゃ!ボケッ!」
まさかあんなに綺麗な人からボケッて言葉が出るとはとポカーンとしていたら、みんなに担がれて違う部屋に移動させられる。
その間、何故かみんな熊のようにウロウロと歩き回り、普通に座って待っていたのは自分と航平だけだった。
「ね、ねえ。座ったら?」
「そ、そうですよね。父上もほら……」
「う、うむ」
「那智さんもジイジも!」
「そうだよな。うん、大丈夫だよな」
「どうして昴さんまでウロウロしてるの?」
「いや、実はな……って冬弥話してなかったのか?」
「はい」
「栞さんにも?」
「栞さんは知ってます」
「息子にも伝えておけよ。あのな、天狐の子を産むってことは、生きるか死ぬかだ」
「え?でもみんな普通に産んでるし……」
「力が強いんだよ。赤ん坊の……だから早く生まれたり遅く産まれたりの差も激しいし、腹の中の水も天狐の気で出来ていると一説にはあって、取り上げる狐は大抵気に当てられて仕事が出来なくなるか、良くて腕の一本なくなる覚悟がいる」
「何……それ。だったら胡蝶さんや蘭さんもおばあちゃん達も危ないってこと?」
「簡単に言えば。だが、胡蝶と蘭は天狐と仙。すみれの婆さんも元仙狐。栞さんの母上はみんなが守るだろうが、とにかく栞の体力次第だな」
「そんな……早く言ってよ。いつも大切な事は後回しにするんだから!もし、もし僕の事で早まったんなら……僕どうしよう」
「大丈夫だ。雪翔のせいじゃない」
「那智さん」
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