下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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白い空間

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「僕では何も聞こえない……前に、金と銀が僕の目を通して冬弥さん達に白龍たちの事見せたでしょ?そんな感じでここの外とかわからない?」

「白たちが見てるものなら出来るけど、近くに冬弥様居ないから出来ないよ」

「そっかぁ。そんなに上手くいかないよね……」

「雪、もしかしたらなのですが、上の屋根の部分の一部が一番薄いかも知れません。そこならば突き破れるかも知れませんが、我等二人の力を併せてすると、体力が……」

「白……それって僕にはできないのかな?」

「何か術を覚えておいでですか?」

「本に載ってたのは覚えてるんだけど、書くものがないし、紙もないから」

「直接書くのはどうだ?」

「でも、それじゃ指に傷をつけないといけないじゃん」

「そっか、僕の血で書けばいいんだ!みんな出てきて!」

そこからは一か八かの作戦と言っていいのかわからないが、みんなが飛べるかどうかを確認し、黒に支えてもらい、天井らしきところに覚えてる術を書く事。上手くいったら、白が車椅子を持ってみんなで上に飛んで外に出ることなどを話し、やってみなければわからないからと、すぐに行動に移す事にした。

黒に抱き抱えてもらい、目的の位置まで来て、「ごめん、僕の指に傷をつけて」と頼み、チクッと針でついたかのような痛みはあったが、その血で思い出しながら書いていく。

「もう少しなのに……」と、傷口を爪で引っ掻いてまた血を出してなんとか書き終え、一旦下に降りるが、そこからどうしていいのか分からない。

「念じてください。多分それであの術は発動すると思うので」

「うん!」

壊れろと強く念じると、ドン!と大きな爆発する音が聞こえ、パラパラっと白い粉のようなものが落ちてきていて、ヒビが入っているのがわかる。

「みんな着いてきて!松君、白も攻撃してみて」

そう言い、自分も上に手を翳して壊れろと強く念じると、手の平から大き目の白い玉が壁に向かって飛び出す。

松も同じようなことをしており、なんとか人一人が通れるくらいの穴が空いたので、急いで白い空間から出る。

「ここ、どこだろう?」

辺り一面木で囲まれ、目の前には川が流れており、振り向くと白い空間はどこにも見当たらなかった。

「翡翠、出ておいで」

ぴょこんと出てきた翡翠は、鼻をスンスンとさせ、「お外!」と喜んでいるので、地上に出たのは間違いないと確信できる。

車椅子に座り直して、周りを見に行きたいというと、黒が押してくれ、川の近くまで降りていってくれる。

「こ、これどこかに置けないかな?」

ペットボトルを二本ずつ抱えた松竹梅が重そうに持っていたので、車椅子の後ろと太ももの横とに分けて置き、よく持ってこれたねと頭を撫でる。

「玲が、水は大事っていつもいうから」

「うん、お水は大事だよね。僕もそう思うよ」

梅にそう言って川を見ていると、反対岸にあの男が三体いたので「本物は?」と聞き返す。

「あんな出方をしてくるとは思わなかったけど、ちゃんと本は読んでたみたいだね」

「ここはどこなの?」

「見ての通り森の中。あぁ、本体の私はまだまだ先にいるよ?辿り着けるといいね」

「そんなの知らない!僕、ここから帰るから」

「帰れるかな?」

「帰る!」

では暫くそこで楽しんでいたらいいと言われて頭にきたが、まずはココがどこなのかを知らなければいけない。
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