下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
93 / 99
四社巡り

.

しおりを挟む
夜からポツポツと雨が降り出し、危ないからいいと言われたので夕食を家で済ませて薬を飲み、パソコンで四社巡りと打ち込んだら、おすすめルートというのが表示されていたので、それをコピーする。

「全部のところに何かしらあるんだ。知らなかった……」

そのまま評判や、近くのお店などをチェックしてから寝る。

たまにズキッとすることもあるが、今は治ってきているのか表面より中が痒いと少し周りをポリポリと掻く。

「掻いてはダメですよ?」と桜狐が治療してくれ、ポカポカしてきたのてそのまま眠ってしまう。

「おはよう」とキッチンに行くと、かなりの雨が降っていて中まで音が聞こえてくる。

「雨すごいね……」

「雪翔、出ないでくださいよ?」

「うん。これなんだけど」と昨日コピーした紙を見せ、外れにある社を指さす。

「あぁ、ここは誰もいませんよ?昔はいたんですが、地元の方が行くくらいですねぇ」

「やっぱり、大きな神社とかにしかいないの?」

「そんなことは無いですよ?うちも最初はかなり小さな社でしたが、そこは頑張りどころです。運気が良くなるとか、豊作や厄除け、安産や交通安全。色んなお守りもあるでしょう?多少の願いは叶えますが、後はあの神社はいいとかの噂や信仰心が大きければ社も大きくなっていくものなんです」

「ここは小さいの?」

「ここは昔は街道沿いで、たくさんの人が通っていて栄えてましたが、この数100年で開拓されずに残ってる社ですからねぇ。それにすぐにみんないなくなるんですよねぇ」

「車椅子でも行けるかな?」

「山の中になるので無理ですねぇ。今は山菜採りの人がお参りするくらいですよ?」

「じゃぁ、こっちのこの寺は?」

「あ、ここは見ておいていいですよ?勉学の神様がいるとの話を聞いてます。それに建物も古いですが、建物の至る所にさりげなくある彫り物などとても素晴らしいです。」

「僕、明日行こうと思ってて。このお土産通りからの道を最後にしたいから……」と行くルートを話していると、忘れてましたと携帯を渡される。

「雨でやはりダメになってたので、保証期間内だったので同じものを取り寄せてもらったんです。データは残ってるそうなので、移してもらいましたよ?」

中を見ると前と変わらず使えるようになっていたので、そのままLINEを開く。

「あれ?壁紙が……そうか、新しくなったからだ……」

「何とかなりそうですか?」

「うん、大丈夫。地図に神社から神社へのかかる時間書いてあるけど、もっと時間はかかると思うんだ。朝早くに出ようと思うんだけど、帰り遅くなるかも……」

ご飯を食べ、明日の支度をしてバッテリーを充電しておく。使っているのは夜にすればいいと、一日教科書と参考書などを見て、問題集をとき、昼にウトウトと昼寝をして足を休め、夕方までまた勉強をする。

「雪、遊んでいい?」

「いいよ。家から出たらダメだよ?」

「本貸して」

「どれ?」

「あの絵のやつ……」

前に買った絵本集を出して渡す。
これを読んでいる時は大人しく、漢字に振り仮名もふってあるので、言葉の勉強にもなるだろうが、金と銀に読ませると、言ってはいけない謎を思いっきり言っているので、夢がなくなる。

「海の中にこんなに堂々と入れないよね」
「息できないよね」

などというので、頼むから翡翠に読んでやってと頼む事もある。

「何読むの?」

「前に紙挟んだところから。桃から人生まれないのにね」

「そ、そうだね……」

床にみんなが丸くなって寝そべり、本を開いて読んでいる時は大人しい。

たまに桜狐が読んであげているが、とんでもない質問にうろたえているのはなんとも可愛い。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄の花嫁~鬼の総領様と身代わり婚~

硝子町玻璃
キャラ文芸
旧題:化け猫姉妹の身代わり婚 多くの人々があやかしの血を引く現代。 猫又族の東條家の長女である霞は、妹の雅とともに平穏な日々を送っていた。 けれどある日、雅に縁談が舞い込む。 お相手は鬼族を統べる鬼灯家の次期当主である鬼灯蓮。 絶対的権力を持つ鬼灯家に逆らうことが出来ず、両親は了承。雅も縁談を受け入れることにしたが…… 「私が雅の代わりに鬼灯家に行く。私がお嫁に行くよ!」 妹を守るために自分が鬼灯家に嫁ぐと決心した霞。 しかしそんな彼女を待っていたのは、絶世の美青年だった。

【完結】召しませ神様おむすび処〜メニューは一択。思い出の味のみ〜

四片霞彩
キャラ文芸
【第6回ほっこり・じんわり大賞にて奨励賞を受賞いたしました🌸】 応援いただいた皆様、お読みいただいた皆様、本当にありがとうございました! ❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。. 疲れた時は神様のおにぎり処に足を運んで。店主の豊穣の神が握るおにぎりが貴方を癒してくれる。 ここは人もあやかしも神も訪れるおむすび処。メニューは一択。店主にとっての思い出の味のみ――。 大学進学を機に田舎から都会に上京した伊勢山莉亜は、都会に馴染めず、居場所のなさを感じていた。 とある夕方、花見で立ち寄った公園で人のいない場所を探していると、キジ白の猫である神使のハルに導かれて、名前を忘れた豊穣の神・蓬が営むおむすび処に辿り着く。 自分が使役する神使のハルが迷惑を掛けたお詫びとして、おむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりをご馳走してくれる蓬。おにぎりを食べた莉亜は心を解きほぐされ、今まで溜めこんでいた感情を吐露して泣き出してしまうのだった。 店に通うようになった莉亜は、蓬が料理人として致命的なある物を失っていることを知ってしまう。そして、それを失っている蓬は近い内に消滅してしまうとも。 それでも蓬は自身が消える時までおにぎりを握り続け、店を開けるという。 そこにはおむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりと、かつて蓬を信仰していた人間・セイとの間にあった優しい思い出と大切な借り物、そして蓬が犯した取り返しのつかない罪が深く関わっていたのだった。 「これも俺の運命だ。アイツが現れるまで、ここでアイツから借りたものを守り続けること。それが俺に出来る、唯一の贖罪だ」 蓬を助けるには、豊穣の神としての蓬の名前とセイとの思い出の味という塩おにぎりが必要だという。 莉亜は蓬とセイのために、蓬の名前とセイとの思い出の味を見つけると決意するがーー。 蓬がセイに犯した罪とは、そして蓬は名前と思い出の味を思い出せるのかーー。 ❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。. ※ノベマに掲載していた短編作品を加筆、修正した長編作品になります。 ※ほっこり・じんわり大賞の応募について、運営様より許可をいただいております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あやかし婚活姫と霊感従者の恋結び

ちづ
キャラ文芸
あやかしと駆け落ちしたいお姫様と、そんなお姫様に片想いしている従者との平安風ホラーラブコメ。 短編ですのでもしよろしければ。 内大臣家の末娘の結姫は、父親に望まない輿入れを迫られていた。嫌気が差したある日、幼馴染の従者に、幽世で駆け落ちしてくれるあやかしを探してきて欲しいと頼み込む。けれど、従者はずっとそんな姫君に片想いをしていて── 平安和風ファンタジー主従ものです。

廻り捲りし戀華の暦

日蔭 スミレ
恋愛
妖気皆無、妖に至る輪廻の記憶も皆無。おまけにその性格と言ったら愚図としか言いようもなく「狐」の癖に「狐らしさ」もない。それ故の名は間を抜いてキネ。そんな妖狐の少女、キネは『誰かは分からないけれど会いたくて仕方ない人』がいた。 自分の過去を繫ぐもの金細工の藤の簪のみ。だが、それを紛失してしまった事により、彼女は『会いたかった人』との邂逅を果たす。 それは非ず者の自分と違う生き物……人の青年だった。 嗜虐癖ドS陰陽師×愚図な狐 切なめな和ファンタジーです。

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...