下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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四社巡り

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「雪翔、お前子供いたのか?」

「那智さん……僕まだ子供だけど」

「やけに詳しいな」

「弟が……居たから」

頭をポンポンと叩かれ、これで会計しようという事になり、かなりの大きな袋に一杯。四つの袋が出来上がってしまった。

流石に戻ってきた冬弥も、ベビーカーまでは無理だといい、今度送るからと約束させられ、そのままご飯を食べに行く。

「幸さんの食べたことの無いものにしましょうか」とピザの美味しいと評判の店に入る。

入ってすぐの横の窯でピザを焼いているのを見て、家でもできないかと言っていたので、冬弥が今度試すから絶対にいじるなと釘をさしていた。

「僕、何にしよう……パスタがあるのはわかるけど、なんでステーキまであるの?」

「さぁ……幸さん決まりました?」

「この海鮮のものだったら……」

「みんなで分け合えばいいので、それも含めて頼みますね」

パスタに三人分ある大きなステーキ。
海鮮とモッツァレラチーズとトマトのバジルピザ。
サラダにスープ……

食べれないかもと思いながらも、6人いたのですべて食べ、コーラを飲みながら、いつ南に行くのかを聞く。

「お前、四社回ってないだろ?」

「うん。回ってから行く」

「何かあるんですか?」

「いや?特には。まずはもう少し痛みが引いてからだな。向こうでの治療は凛しか出来んから。それと診察が終わって薬貰ってから」

「分かった。どうやって行くの?」

「那智の社と南の那智の屋敷の社を繋ぎます。伯父さんに会わせるんですか?」

「分からん。気づけば呼んでくるだろ?それまでは船に乗ろうと思ってるが」

「船?」

「あぁ、少し先に島があるんだが、そこの環境がいいと思ってな」

「あそこ何かありましたっけ?」

「面白い老人がいるだけだ」

「あぁ、まだ住んでたんですね」

「雪翔、もし那智のお父さんにあったら……」

「会ったら?」

「逃げなさい!」

「なんで?」

いいから逃げろという冬弥に、ムスッとしている那智。笑っている祖母と幸。わけがわからないまま家に帰り、栞は早速翡翠の寸法を図っている。

金と銀も一部サイズを図られ、栞は夕飯は温めるだけだからと呑気に裁断している。
冬弥は二人を送っていっていたので、足を伸ばしてテレビを見る。

「あ、明日は雨だって。最近よく降るよね」

「洗濯物乾かないから嫌だわ。それに、乾燥機って静電気が痛くってあまり好きじゃないの」

「あれ痛いよね。たまに扉とかパチってくると、ビクってなっちゃうもん」

「ねえ、雪翔君は冬弥様と那智様似てると思う?」

「言われると似てるよね?那智さんが髪伸ばしたら冬弥さんに似るのかな?」

「言われてじっくり見ないとわからないわよね。あまり見るのも失礼だし。でも幸さん幸せそうでよかった。お腹も大きくなってきてたし、もう安心ね」

「生まれたら抱っこしたいな」

「会いに行きましょうね」

「うん!」
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