下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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四社巡り

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「なんだか切ない遊びですねぇ」

「そう?みんなゲームしてる時話してなかったし、そんなものかなって思ってた」

「雪翔、幼稚園からやり直してくるか?」

「ちびだからって那智さん酷い……」

「会話だ会話」

「でも、いじめられた時に横にいてくれるだけで安心できたんだ。突然いなくなって寂しくて……」

「幼なじみと再開とは良いですねぇ」

「冬弥さん達は幼なじみとかいないの?」

そう言うと二人がお互いを指さしているので、栞と二人で叫んでしまった。

「だって、東と南って……」

「実はですねぇ。本当に雪翔の叔父さんにあたるんですよ」

「冬弥様?」

「私の父の弟が南に行くことになりまして、そこで結婚して生まれたのが那智です」

「おい!」

「そろそろ隠さなくてもいいでしょう?」

「隠すって?」

「天狐の親戚ともなれば狙われやすくなります。なので普通は普段から素性は隠すんですよ」

「そうだったの?だから優しくしてくれたの?」

「俺の可愛い甥っ子だから当たり前だ!」

「だから、南に遊びに行くのも反対しなかったんだ」

「そういう事です。それに那智も次男なのであまり縛りもありませんし、何より本家は家ですからねぇ」

「まぁな。俺の父が兄なら南が本家だったが、うちの一族はあまり拘らないんだ。で、冬弥のような放蕩息子が出来たと」

「那智は硬いですからねぇ。それに、上学校で同じ学校だったじゃないですか」

「お前は飄々と昼寝ばかりしていたのに、首席だったのが気に入らん!」

「学年は違うじゃないですか」

「関係ない」

「那智もお利口さんでしたよ?」

「その言い方をやめろ!全く……お前が引き取らなかったら俺が雪翔を引き取ってたところだ」

「え?那智さんならパパって感じ」

「雪翔ー!なんで?何でですか?」

「冬弥さんはイメージが着物だからお父さんぽいけど、那智さんは20代後半にしか見えないからパパ?」

「負けた……」

「勝った!」

「お二人共、何争ってるんですか?嫁の私にくらい教えておいてくださいよ!心臓が鼻から出るかと思いました」

「栞さん、それ口だから……」

「あら、やだ!」

「他のものには内緒にしておいてくださいよ?」

「だが、天狐の戸籍上調べはついてるんだろう?」

「ええ。なのであと一席の天狐の座は那智が有力ですよ?今の所」

「次の千年はまだ居ないのか?」

「聞きませんねぇ」

「後200年か……」

「すぐですよ」

「その頃僕もういないよ……」

撫で撫で撫で撫で……

「さて、雪翔は薬飲んでください、紫狐は今日は戻って桜狐と変わってください。凛も戻っていいですよ」

「そっか!だから冬弥さんの言うこと聞くんだ!」

「はい?」

「冬弥さんの家が本家だから、分家は言うことを聞くって事?」

「まぁ。それはありますけど、個々の契約でもありますからねぇ。那智の狐は私には逆らいません。天狐だからというのもあります。それよりも昔からいたので、余計に絆ができてますから聞いてくれるですよ」

「へぇ」

「栞さんの言うことは那智さんの狐は聞くの?」

「聞くように言ってある。従兄弟の嫁だからな」

「と言うことで、もう父の前でも他人のフリはしなくて構いませんよ?」

「最初からしておいてくれ!」
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