84 / 99
手術
.
しおりを挟む
夕飯の支度があるからと栞が帰り、夜も一度だけ痛み止めを使ってから寝る。
そのまま日が過ぎ、抜糸をしてからあまり無理に動かさないように言われ、久しぶりに車椅子に乗る。
「ちょっと痛いな……」
洗面台で頭を洗って乾かして、スッキリとしたところでナースセンターに行く。
「あの、早乙女ですけどー」
「あら、どうしたの?」
「売店行ってもいいですか?」
「痛みはどう?」
「ちょっと……でもシャンプーもできたし、ずっと寝てたから背中痛くて。中庭通るから散歩にもなるから……」
「気をつけていってきてね。何かあれば近くの看護師にいうのよ?」
「はい、行ってきます!」
鞄に白と黒の龍のキーホルダーもつけてあるから安心だろうと、車椅子のレバーを動かしてエレベーターで一階まで降りて売店へ行き、プリンやゼリー、稲荷のパックとジュースを買って中庭に行く。
お昼前だから人も少なく、日向ぼっこにとてもいい天気だと思いながら、コソッと稲荷を紫狐に渡してみんなで食べてと言う。
凛もうまく中に入れたようで、こたつで食べますと喜んでいた。
ジュースを飲んでウトウトとしていたら、ポンポンと肩を叩かれビクッと起きる。
「隆弘さん……ビックリしちゃった」
「病室にいないし、売店に行ったって聞いたから」
「やっと髪も洗えてスッキリしたし、寝てて背中痛くって」
「足はどうだ?」
「まだ痛みはあるけど、もう鎮痛剤いらないかな?夜は飲み薬一応飲むんだけど」
「これでリハビリが上手くいったらいいな」
「うん。隆弘さん大学は?」
「朝だけだったんだ。バイトまで時間あるし、帰るのもなぁと思って」
「新しい人の事でしよ?」
「なんだ、聞いてたのか」
キンコンとチャイムがなったので、昼ごはんだと部屋まで車椅子を押してもらって戻る。
「ほら、持ってきた!俺は弁当だけどな」
「たまにはラーメンとか食べたくなるよ?下宿のご飯が恋しい……」
「もうすぐ帰れるだろ?ラーメンぐらい今度連れてってやるよ。店はボロいけど上手いところあるんだ」
「楽しみ!それで何かあったの?栞さんも疲れてたみたいだし」
「賢司とさ、堀内さん社会人だろ?賢司は春からだけど。それを俺たち三人が夕方に飯食いながら酒飲んでたんだよ。そしたら、教育上良くないとか、高校生と時間を分けろとか、社会人が下宿にいるのはどうなんだとか言うおばさんがいてさ……賢司は教師になるから揉め事はまずいし、堀内さんも言うことは言うけどおっとりしてるだろ?とにかく俺達は聞いてるしかなかったわけ」
それで?とご飯を食べながら早くとせがむと、「冬弥さんが怒っちゃってさ……あんなに怖い冬弥さん初めて見たよ」
「怒ったって……人にはそんなに厳しく言わないのに」
「子供の素行調査の事言ってたぞ?やっぱり入るのに条件あるんだろうな」
しーちゃんが言ってた水君の調査のやつだとすぐにわかり、プリンを一つ隆弘に渡してデザートがわりに食べる。
「ねえ、ほかの下宿ってどんなの?」
「食堂とかないのが普通かな。安い学生アパートがほとんど。家賃に光熱費に食費で10万は超える。でも食事光熱費込みで85000円は安いだろ?俺達は安くしてもらってるけどさ」
「どんな子くるのか見た?」
「1人は今年大学生って言ってた。ジャラジャラとアクセサリーつけた金髪のやつ。だけど、ちゃんと挨拶もするし、見た目よりいいやつっぽいな。高校生は決まってるのが二人。新入生だから、扱いやすいだろ」
「残り13部屋か……」
「見てないけど部屋はもういっぱい見たい。その親が手付払ったのにって言ってきたのが最後。早い者勝ちじゃないって聞いてたし、冬弥さんのやり方でいいと思うんだよ」
そのまま日が過ぎ、抜糸をしてからあまり無理に動かさないように言われ、久しぶりに車椅子に乗る。
「ちょっと痛いな……」
洗面台で頭を洗って乾かして、スッキリとしたところでナースセンターに行く。
「あの、早乙女ですけどー」
「あら、どうしたの?」
「売店行ってもいいですか?」
「痛みはどう?」
「ちょっと……でもシャンプーもできたし、ずっと寝てたから背中痛くて。中庭通るから散歩にもなるから……」
「気をつけていってきてね。何かあれば近くの看護師にいうのよ?」
「はい、行ってきます!」
鞄に白と黒の龍のキーホルダーもつけてあるから安心だろうと、車椅子のレバーを動かしてエレベーターで一階まで降りて売店へ行き、プリンやゼリー、稲荷のパックとジュースを買って中庭に行く。
お昼前だから人も少なく、日向ぼっこにとてもいい天気だと思いながら、コソッと稲荷を紫狐に渡してみんなで食べてと言う。
凛もうまく中に入れたようで、こたつで食べますと喜んでいた。
ジュースを飲んでウトウトとしていたら、ポンポンと肩を叩かれビクッと起きる。
「隆弘さん……ビックリしちゃった」
「病室にいないし、売店に行ったって聞いたから」
「やっと髪も洗えてスッキリしたし、寝てて背中痛くって」
「足はどうだ?」
「まだ痛みはあるけど、もう鎮痛剤いらないかな?夜は飲み薬一応飲むんだけど」
「これでリハビリが上手くいったらいいな」
「うん。隆弘さん大学は?」
「朝だけだったんだ。バイトまで時間あるし、帰るのもなぁと思って」
「新しい人の事でしよ?」
「なんだ、聞いてたのか」
キンコンとチャイムがなったので、昼ごはんだと部屋まで車椅子を押してもらって戻る。
「ほら、持ってきた!俺は弁当だけどな」
「たまにはラーメンとか食べたくなるよ?下宿のご飯が恋しい……」
「もうすぐ帰れるだろ?ラーメンぐらい今度連れてってやるよ。店はボロいけど上手いところあるんだ」
「楽しみ!それで何かあったの?栞さんも疲れてたみたいだし」
「賢司とさ、堀内さん社会人だろ?賢司は春からだけど。それを俺たち三人が夕方に飯食いながら酒飲んでたんだよ。そしたら、教育上良くないとか、高校生と時間を分けろとか、社会人が下宿にいるのはどうなんだとか言うおばさんがいてさ……賢司は教師になるから揉め事はまずいし、堀内さんも言うことは言うけどおっとりしてるだろ?とにかく俺達は聞いてるしかなかったわけ」
それで?とご飯を食べながら早くとせがむと、「冬弥さんが怒っちゃってさ……あんなに怖い冬弥さん初めて見たよ」
「怒ったって……人にはそんなに厳しく言わないのに」
「子供の素行調査の事言ってたぞ?やっぱり入るのに条件あるんだろうな」
しーちゃんが言ってた水君の調査のやつだとすぐにわかり、プリンを一つ隆弘に渡してデザートがわりに食べる。
「ねえ、ほかの下宿ってどんなの?」
「食堂とかないのが普通かな。安い学生アパートがほとんど。家賃に光熱費に食費で10万は超える。でも食事光熱費込みで85000円は安いだろ?俺達は安くしてもらってるけどさ」
「どんな子くるのか見た?」
「1人は今年大学生って言ってた。ジャラジャラとアクセサリーつけた金髪のやつ。だけど、ちゃんと挨拶もするし、見た目よりいいやつっぽいな。高校生は決まってるのが二人。新入生だから、扱いやすいだろ」
「残り13部屋か……」
「見てないけど部屋はもういっぱい見たい。その親が手付払ったのにって言ってきたのが最後。早い者勝ちじゃないって聞いてたし、冬弥さんのやり方でいいと思うんだよ」
0
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
生贄の花嫁~鬼の総領様と身代わり婚~
硝子町玻璃
キャラ文芸
旧題:化け猫姉妹の身代わり婚
多くの人々があやかしの血を引く現代。
猫又族の東條家の長女である霞は、妹の雅とともに平穏な日々を送っていた。
けれどある日、雅に縁談が舞い込む。
お相手は鬼族を統べる鬼灯家の次期当主である鬼灯蓮。
絶対的権力を持つ鬼灯家に逆らうことが出来ず、両親は了承。雅も縁談を受け入れることにしたが……
「私が雅の代わりに鬼灯家に行く。私がお嫁に行くよ!」
妹を守るために自分が鬼灯家に嫁ぐと決心した霞。
しかしそんな彼女を待っていたのは、絶世の美青年だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あやかし婚活姫と霊感従者の恋結び
ちづ
キャラ文芸
あやかしと駆け落ちしたいお姫様と、そんなお姫様に片想いしている従者との平安風ホラーラブコメ。
短編ですのでもしよろしければ。
内大臣家の末娘の結姫は、父親に望まない輿入れを迫られていた。嫌気が差したある日、幼馴染の従者に、幽世で駆け落ちしてくれるあやかしを探してきて欲しいと頼み込む。けれど、従者はずっとそんな姫君に片想いをしていて──
平安和風ファンタジー主従ものです。
廻り捲りし戀華の暦
日蔭 スミレ
恋愛
妖気皆無、妖に至る輪廻の記憶も皆無。おまけにその性格と言ったら愚図としか言いようもなく「狐」の癖に「狐らしさ」もない。それ故の名は間を抜いてキネ。そんな妖狐の少女、キネは『誰かは分からないけれど会いたくて仕方ない人』がいた。
自分の過去を繫ぐもの金細工の藤の簪のみ。だが、それを紛失してしまった事により、彼女は『会いたかった人』との邂逅を果たす。
それは非ず者の自分と違う生き物……人の青年だった。
嗜虐癖ドS陰陽師×愚図な狐 切なめな和ファンタジーです。
下宿屋 東風荘 4
浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。
天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!?
ほのぼの美味しいファンタジー。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
表紙・挿絵:深月くるみ様
イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。
☆マークの話は挿絵入りです。
あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~
菱沼あゆ
キャラ文芸
令和のはじめ。
めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。
同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。
酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。
休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。
職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。
おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。
庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
後宮の星詠み妃 平安の呪われた姫と宿命の東宮
鈴木しぐれ
キャラ文芸
旧題:星詠みの東宮妃 ~呪われた姫君は東宮の隣で未来をみる~
【書籍化します!!4/7出荷予定】平安の世、目の中に未来で起こる凶兆が視えてしまう、『星詠み』の力を持つ、藤原宵子(しょうこ)。その呪いと呼ばれる力のせいで家族や侍女たちからも見放されていた。
ある日、急きょ東宮に入内することが決まる。東宮は入内した姫をことごとく追い返す、冷酷な人だという。厄介払いも兼ねて、宵子は東宮のもとへ送り込まれた。とある、理不尽な命令を抱えて……。
でも、実際に会った東宮は、冷酷な人ではなく、まるで太陽のような人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる