下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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手術

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「先生もこういった昔の本が好きなんだよ」と挨拶をすっ飛ばし本の話をし、手術の時の話や、雨の日の話をする。

「動悸止めはまだ持っていた方がいいね。春から学校行くのなら、持ってるだけでも安心ということもあるからね」

「はい」

「普段はどう?」

「家の手伝いとか、間に新しい学校の問題集したりしてて。でも二年は何とかわかるけど三年になったらもっと難しくなるのかなぁって」

「星ヶ丘の定時制だったよね?」

「そうです」

「あそこは通信も普通科も、三年になったらほとんど受験の勉強だったと思うよ?だからだいたい二年までで三年生近くの科目が終わってしまうんだ」

「そうなんですか?」

「授業はあるけど、普通科は半分が授業で半分は受験対策って感じじゃなかったかな」

「先生詳しいんですね」

「実は息子が行ってたんだよ。今はもう大学生だけどね。内緒だよ?」

「はい」

「まずは月数回の登校ができるようにすることだね。薬はいきなりやめられないから、量を減らそうか。そしたらまた体も楽になると思うよ」

「やった!」

「でも、夜はまだためだからね?今は体を休めることが先決。雪翔君は頑張りすぎて疲れちゃうだけなんだ。本以外で何かしたいことも見つかるといいんだけど」

「大工の棟梁に習って彫り物してますけど」

「また難しい事を。なにか出来たのかい?」

「栞と、棟梁の家の欄間の枠に嵌める所を彫らせてもらいました」

「外はやっぱり苦手かな?」

「お爺ちゃんと釣りに行きました。なかなか釣れなくて、網で囲んでとったけど釣れるようになったら面白いかなって」

「うん、自然はいいよ?楽しめることを沢山したらいいと思う。まだ若いからこれからもっと楽しみなさい」

「はい」

先生と話していると、栞が入ってきて先生から薬の説明を聞いている。

「先生、薬を使わなくてもいい日が来ますか?」

「勿論。最近の雪翔君は明るくなりましたね。本人の前で言い難いですが、これから思春期。反抗期もあります。それは自然のことなので、ダメなことはダメいい事は褒めるそのメリハリは大切にしてくださいね」

「はい、分かりました」

診察が終わって、夢の話が現実になって白と黒がキーホルダーになったことを話す。

「僕、なんだか寂しくて」

「そうね、あんなに元気な子たちがふとキーホルダーになったら驚くわよね?でも、声は聞こえてると思うわよ?」

「そうかな?」

「そうよ。それにその夢、私の影の中にも部屋はあるわよ?」

「え?」

「ある程度の力があればそのくらい出来るし、天狐や仙狐ともなると影の中にお屋敷が建つって噂まであるのよ?」

「お屋敷?」と紫狐をみると、ブンブンと横に首を振っている。

「好みの問題とか、大きなものを作るとそっちに力が行くから維持出来ないとか色々あるみたい。これがそうよって見せてあげれたらいいんだけど、お手本はないの。私も沢山力を影の中に使えないから質素だけど」

「その力の配分とかってあるの?」

「そうねぇ……影は主に縛られてるから、必要な分だけ持っていくけど、ほとんど何も影響ないわよ?たくさん与えすぎても行けないけど、それは意識してする時ね」

「難しい……」

「慣れだと思うわよ?」
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