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手術
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「それにしてもまたグルグル巻じゃのぅ。起き上がれんのか?」
「少し上げれるだけ。抜糸までダメって看護師さんが朝言ってた」
「飯が食えんではないか!」
「何とかなったよ?」
はい、と苺を渡され御見舞だから、おやつに食べなさいと渡され、冷蔵庫にしまってもらう。
「お爺ちゃん、京弥さんや幸さんに大丈夫ってちゃんと伝えてね?」
「分かった。それよりなんじゃ?南の那智のところに行くのなら帰りによればいいものを」
「何の話?」
「ほら、那智様と妖街の南に行くでしょう?でもそんなに長く行かないから、見て回ったらこっちに帰ってくるって話をしたの」
「でも、学校の休みには遊びに行くし……」
「あ!忘れておった。これを京弥から預かってきた」
丸められた紙を広げると地図になっていて、いろんな妖の国の地図が書き込んであった。
「広い……」
「これもまた貴重なものを。うちの宝がなくなってしまいますよ?」
「まだまだあるわい!雪翔ならば大切にするじゃろ?」
「確かに。前にもらったのも飾ってあります」
お昼すぎには時間の制限があるとのことで祖父母は帰っていったが、たまに祖父に会うと嵐が来て去っていったように感じる時もある。
「慌ただしい人です全く!」
そう言いながらもたまに冬弥も慌ただしいなどとは言えるはずも無く、久しぶりに翡翠や白と黒に金銀も戻り賑やかになった。
「しーちゃんは?」
「紫狐、拗ねてないで出てきなさい」
「はい……」
「どうしたの?」
「雪翔の手術の付き添いができなかったと拗ねましてねぇ、あの一件で泣きじゃくったので、漆達に怒られてたんですよ」
「紫狐は心配していただけですー!」
「雪翔について長いですからねぇ。かと言って、讓渡も出来ないのでたまに帰ってきてもらわないと困るんですが」
「紫狐の主は冬弥様ですー。そのお子のゆっきーに仕えるのも当たり前なのです!紫狐達みんな心配でしたけど、みんなで行くと機械がおかしくなったりするので、出られませんでした」
「という事でですね、泣き虫の紫狐と泣き虫の翡翠です!」
どうぞとばかりに横に置かれたが、ちょっと待ってとカーテンの陰に隠れている凛も呼ぶ。
「しーちゃんやみんなは良いけど、白と黒大人しくできる?」
「出来る。違う、出来ます」
「おおー!言葉がわかる!」
「琥珀がかなりしつけましたからねぇ。物覚えはかなり早いです。金と銀は漆に昔話を聞かされてまして、翡翠は出ようと逃げ回ってたそうですよ?」
「みんな大変だっただろうなぁ」
「あったことの無いものには翡翠は慣れなかったようです」
「人見知り?」
「ですかねぇ?」
ちょこんとしっかり膝に乗ってきた翡翠に、頼むから片足だけにしてくれとたのみ、左足に乗せる。
「いちごー」
「泣いたからダメ!」
「むー!」
「むーってしてもダメ!」
表情も豊かになり、苺はおやつまでいい子にしていたらと約束し、少し寝かせてくれと頼む。
「では、私たちは戻りますが、ちゃんと寝ててくださいね?」
「うん、みんなにも元気って伝えて」
「少し上げれるだけ。抜糸までダメって看護師さんが朝言ってた」
「飯が食えんではないか!」
「何とかなったよ?」
はい、と苺を渡され御見舞だから、おやつに食べなさいと渡され、冷蔵庫にしまってもらう。
「お爺ちゃん、京弥さんや幸さんに大丈夫ってちゃんと伝えてね?」
「分かった。それよりなんじゃ?南の那智のところに行くのなら帰りによればいいものを」
「何の話?」
「ほら、那智様と妖街の南に行くでしょう?でもそんなに長く行かないから、見て回ったらこっちに帰ってくるって話をしたの」
「でも、学校の休みには遊びに行くし……」
「あ!忘れておった。これを京弥から預かってきた」
丸められた紙を広げると地図になっていて、いろんな妖の国の地図が書き込んであった。
「広い……」
「これもまた貴重なものを。うちの宝がなくなってしまいますよ?」
「まだまだあるわい!雪翔ならば大切にするじゃろ?」
「確かに。前にもらったのも飾ってあります」
お昼すぎには時間の制限があるとのことで祖父母は帰っていったが、たまに祖父に会うと嵐が来て去っていったように感じる時もある。
「慌ただしい人です全く!」
そう言いながらもたまに冬弥も慌ただしいなどとは言えるはずも無く、久しぶりに翡翠や白と黒に金銀も戻り賑やかになった。
「しーちゃんは?」
「紫狐、拗ねてないで出てきなさい」
「はい……」
「どうしたの?」
「雪翔の手術の付き添いができなかったと拗ねましてねぇ、あの一件で泣きじゃくったので、漆達に怒られてたんですよ」
「紫狐は心配していただけですー!」
「雪翔について長いですからねぇ。かと言って、讓渡も出来ないのでたまに帰ってきてもらわないと困るんですが」
「紫狐の主は冬弥様ですー。そのお子のゆっきーに仕えるのも当たり前なのです!紫狐達みんな心配でしたけど、みんなで行くと機械がおかしくなったりするので、出られませんでした」
「という事でですね、泣き虫の紫狐と泣き虫の翡翠です!」
どうぞとばかりに横に置かれたが、ちょっと待ってとカーテンの陰に隠れている凛も呼ぶ。
「しーちゃんやみんなは良いけど、白と黒大人しくできる?」
「出来る。違う、出来ます」
「おおー!言葉がわかる!」
「琥珀がかなりしつけましたからねぇ。物覚えはかなり早いです。金と銀は漆に昔話を聞かされてまして、翡翠は出ようと逃げ回ってたそうですよ?」
「みんな大変だっただろうなぁ」
「あったことの無いものには翡翠は慣れなかったようです」
「人見知り?」
「ですかねぇ?」
ちょこんとしっかり膝に乗ってきた翡翠に、頼むから片足だけにしてくれとたのみ、左足に乗せる。
「いちごー」
「泣いたからダメ!」
「むー!」
「むーってしてもダメ!」
表情も豊かになり、苺はおやつまでいい子にしていたらと約束し、少し寝かせてくれと頼む。
「では、私たちは戻りますが、ちゃんと寝ててくださいね?」
「うん、みんなにも元気って伝えて」
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