下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
67 / 99
手術

.

しおりを挟む
「コンビニにあったわよ?この前行ったら隆弘くんがいて、驚かれちゃった」

「中にあるの?」

「レジのところにあったけど。切手いるわよね?まとめて買っておこうかしら」

「うん」

「教科書は見た?」

「少し。何とかついていけそうだけど、あっちの高校の三年の分が二年のところにある感じ」

「無理しちゃ駄目よ?」

「うん、心配しないで。しーちゃんて怖い見張りがいるから」

ぬっと影から出てきて、紫狐は怖くないですー!と反論していたが、翡翠を連れてまた出てきた。

「ん?どうしたの?」

「栞様、もしやと思うのですが、金と銀の時みたいにまた起きるの面倒くさがってるだけではないかと思いまして」

「ご馳走様でした!どれどれー?うん、少し重くなったかしら?でも体はあまり変化はないわよねぇ」

「そうなのです。でもたまに目を開ける時もあるのですー」

「もう起きるんじゃないの?」

ご馳走様と箸を置いて翡翠を見る。

ポポンと金と銀も出てきて、みんなで翡翠を見ていると、パチッと目があいた。

「あ、起きた……」

「起きたわねぇ」

ふぁーとあくびと伸びをした翡翠はピョンと膝から飛び降りてテクテクとリビングの暖炉の前に行きまた丸まって寝ようとしている。

「冬眠みたいなんだけど」

「私の膝からぴょんて降りたわよ?」

「ちゃんと大きくなってるんだね。りんご食べるかな?」

待っててねと栞がりんごを剥いてくれて、みんなに仲良く食べてねとお皿に置き、残りをもらって翡翠に食べる?と鼻先まで持っていくと、チョコんと座って前足で上手に持って食べている。

「ひーちゃん、もうおっきなのです!」

「やーの。ねうの!」

「それはお昼寝と夜ですよ?」

「やーの!」

「やーのって、やだってことだよね?かわいー!」と抱き上げる。

「服も少し小さくなった?また買いに行かないとね?明日お散歩行く?」

「うー。にんごー!」

「あ、ごめん。はい、リンゴ」

「翡翠ちゃん美味しい?」

「うー。あいあとー。おなか、ポンポンだよ?」

「お腹いっぱいなの?」

「しーさんポンポン」と翡翠まで栞のお腹に指をさす。

「ただ今帰りました……何かありました?」

ぴょこんと翡翠が冬弥の足元にしがみつき、「しーさん、ポンポン」とずっと言っていて、白と黒もお腹に指をさす。

「冬弥様……私そんなに太ったでしょうか?」

「ちょっと待ってください、私も少し気になってたんです。この子達の指をさす所はですねぇ、丹田と言って気の集まる場所なんですけど……」と栞のお腹に手を当て、やっぱりと言う。

「栞さん、最近力が増えた感じしませんか?」

「あまり感じませんけど……」

「お社を飛んだことで、力が増えたんですよ。それがかなり溜まってますねぇ。狐たちにも行き渡ってますから、お社に気を置いてくるといいです。そしたら楽になると思いますよ?」

「分かりました。でも何の位置けば?」

「枯渇しないくらい置いていてもいいと思います」

「良かったです。みんながお腹を指してくるので太ってお腹が出てきたのかと思っちゃいました」

「まだ、言葉がハッキリしてませんからねぇ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄の花嫁~鬼の総領様と身代わり婚~

硝子町玻璃
キャラ文芸
旧題:化け猫姉妹の身代わり婚 多くの人々があやかしの血を引く現代。 猫又族の東條家の長女である霞は、妹の雅とともに平穏な日々を送っていた。 けれどある日、雅に縁談が舞い込む。 お相手は鬼族を統べる鬼灯家の次期当主である鬼灯蓮。 絶対的権力を持つ鬼灯家に逆らうことが出来ず、両親は了承。雅も縁談を受け入れることにしたが…… 「私が雅の代わりに鬼灯家に行く。私がお嫁に行くよ!」 妹を守るために自分が鬼灯家に嫁ぐと決心した霞。 しかしそんな彼女を待っていたのは、絶世の美青年だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あやかし婚活姫と霊感従者の恋結び

ちづ
キャラ文芸
あやかしと駆け落ちしたいお姫様と、そんなお姫様に片想いしている従者との平安風ホラーラブコメ。 短編ですのでもしよろしければ。 内大臣家の末娘の結姫は、父親に望まない輿入れを迫られていた。嫌気が差したある日、幼馴染の従者に、幽世で駆け落ちしてくれるあやかしを探してきて欲しいと頼み込む。けれど、従者はずっとそんな姫君に片想いをしていて── 平安和風ファンタジー主従ものです。

廻り捲りし戀華の暦

日蔭 スミレ
恋愛
妖気皆無、妖に至る輪廻の記憶も皆無。おまけにその性格と言ったら愚図としか言いようもなく「狐」の癖に「狐らしさ」もない。それ故の名は間を抜いてキネ。そんな妖狐の少女、キネは『誰かは分からないけれど会いたくて仕方ない人』がいた。 自分の過去を繫ぐもの金細工の藤の簪のみ。だが、それを紛失してしまった事により、彼女は『会いたかった人』との邂逅を果たす。 それは非ず者の自分と違う生き物……人の青年だった。 嗜虐癖ドS陰陽師×愚図な狐 切なめな和ファンタジーです。

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

後宮の星詠み妃 平安の呪われた姫と宿命の東宮

鈴木しぐれ
キャラ文芸
旧題:星詠みの東宮妃 ~呪われた姫君は東宮の隣で未来をみる~ 【書籍化します!!4/7出荷予定】平安の世、目の中に未来で起こる凶兆が視えてしまう、『星詠み』の力を持つ、藤原宵子(しょうこ)。その呪いと呼ばれる力のせいで家族や侍女たちからも見放されていた。 ある日、急きょ東宮に入内することが決まる。東宮は入内した姫をことごとく追い返す、冷酷な人だという。厄介払いも兼ねて、宵子は東宮のもとへ送り込まれた。とある、理不尽な命令を抱えて……。 でも、実際に会った東宮は、冷酷な人ではなく、まるで太陽のような人だった。

処理中です...