下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
65 / 99
手術

.

しおりを挟む
何日がすぎ、那智が物凄く怒った顔で「なぜ誕生日を教えなかった!」と怒鳴り込んできて、強制的にに買い物に連れていかれ、たくさんの服を買ってくれる。

「もう16だ!服にも気を使え!」

そう言ってインナーから下着、靴下に至るまで全てを買い、かなりの荷物を部屋に運び込まれ、開けたクローゼットを見てため息を付かれる。

「これだけしか無かったのか……」

ガラガラのクローゼットに狐ちゃんたちが値札を外してハンガーにかけ、しまうものは閉まってくれ、長袖から半袖までオールシーズンも使わなくていい位いっぱいになった。

「あの、ありがとうございます……でもこんなに着れな……」

「週に二度は学校へ行くんだろう?病院は動きやすい格好でいいが、出かける時には少しはお洒落をしろ。冬弥は着物ばかりだし、栞は質素だし、あの兄弟に任せたらとんでもない格好にされる……」

「こんなにあったらどう着ていいかわかんない……」

「杏香。コーディネートして掛けておけ」

「畏まりまして」

杏香と呼ばれた綺麗なお狐のお姉さんぽい人が、ハンガーにかけ直してくれている。

「掛けてあるまま着ればいい。サイズが変わったらまた買いなおせばいいしな」

バタン!と戸の開く音がし、冬弥が「また贅沢をさせるんですから!」と文句を言いながらもニコニコとしている。

「あれも買ってきてくれました?」

「隅に掛けてある」

「何?」

「裁判の傍聴行くんでしょう?いつもの格好ではと思いまして。それに、通信でも入学式ありますよ?あと説明会が。二年からの編入なので、一応来てくださいと言われてますし、これでも那智的に地味に買ってくれてます」

「そうなの?」

「子供と大人の間だからな。それに雪翔は童顔だし……これでもかなり迷った」

ポイポイと店員さんに渡していた記憶しかないが、選んでくれていたのかと返って驚く。

「それでですねぇ、来月から出かけることが多くなるんですけど、今月に校舎を見れるそうです。行けますか?」

「う、うん……」

「俺も行く!」

「え?良いですよ?来なくても」

「黙れ!行くと言ったら行くからな」

そのまま消えたのでポカーンとしていると、あれが那智の精一杯の照れ隠しですと言われてしまった。

日にちだけがすぎていき、まず最初に向かったのは裁判所。

たって話すことが出来ないので車椅子のままだったが、口頭で裁判官から聞かれたことに答え、何とか思っていることを言えた。その後弁護士さんから次はいつ判決が出ると教えてもらい、それ迄ゆっくりと休みなさいと言われた。

「あー、緊張した……でもやっぱりドラマと違うね」

「そうですねぇ。あのような所には一生のうち立つことがない人がほとんどですから」

「後、細かいのは俺が聞いておく。他の奴は既に更生施設に行っているし、次で最後だろう」

「那智さん、僕はあと何回来ればいいの?」

「後は判決聞くだけだ。通知にしてもらってもよかったんだぞ?」

「聞くって決めたから……」

「そうか」

「では、私と雪翔は学校に寄ってきます」

「何故俺を外す?」

「教科書取りに行くだけなので」

「ならいいが……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄の花嫁~鬼の総領様と身代わり婚~

硝子町玻璃
キャラ文芸
旧題:化け猫姉妹の身代わり婚 多くの人々があやかしの血を引く現代。 猫又族の東條家の長女である霞は、妹の雅とともに平穏な日々を送っていた。 けれどある日、雅に縁談が舞い込む。 お相手は鬼族を統べる鬼灯家の次期当主である鬼灯蓮。 絶対的権力を持つ鬼灯家に逆らうことが出来ず、両親は了承。雅も縁談を受け入れることにしたが…… 「私が雅の代わりに鬼灯家に行く。私がお嫁に行くよ!」 妹を守るために自分が鬼灯家に嫁ぐと決心した霞。 しかしそんな彼女を待っていたのは、絶世の美青年だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あやかし婚活姫と霊感従者の恋結び

ちづ
キャラ文芸
あやかしと駆け落ちしたいお姫様と、そんなお姫様に片想いしている従者との平安風ホラーラブコメ。 短編ですのでもしよろしければ。 内大臣家の末娘の結姫は、父親に望まない輿入れを迫られていた。嫌気が差したある日、幼馴染の従者に、幽世で駆け落ちしてくれるあやかしを探してきて欲しいと頼み込む。けれど、従者はずっとそんな姫君に片想いをしていて── 平安和風ファンタジー主従ものです。

廻り捲りし戀華の暦

日蔭 スミレ
恋愛
妖気皆無、妖に至る輪廻の記憶も皆無。おまけにその性格と言ったら愚図としか言いようもなく「狐」の癖に「狐らしさ」もない。それ故の名は間を抜いてキネ。そんな妖狐の少女、キネは『誰かは分からないけれど会いたくて仕方ない人』がいた。 自分の過去を繫ぐもの金細工の藤の簪のみ。だが、それを紛失してしまった事により、彼女は『会いたかった人』との邂逅を果たす。 それは非ず者の自分と違う生き物……人の青年だった。 嗜虐癖ドS陰陽師×愚図な狐 切なめな和ファンタジーです。

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

後宮の星詠み妃 平安の呪われた姫と宿命の東宮

鈴木しぐれ
キャラ文芸
旧題:星詠みの東宮妃 ~呪われた姫君は東宮の隣で未来をみる~ 【書籍化します!!4/7出荷予定】平安の世、目の中に未来で起こる凶兆が視えてしまう、『星詠み』の力を持つ、藤原宵子(しょうこ)。その呪いと呼ばれる力のせいで家族や侍女たちからも見放されていた。 ある日、急きょ東宮に入内することが決まる。東宮は入内した姫をことごとく追い返す、冷酷な人だという。厄介払いも兼ねて、宵子は東宮のもとへ送り込まれた。とある、理不尽な命令を抱えて……。 でも、実際に会った東宮は、冷酷な人ではなく、まるで太陽のような人だった。

処理中です...