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陰陽の守り神
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それから少しして戻ってきた時には、黒く蠢いていた影は消えていき、黒を撫でてから白も撫でて、冬弥を見る。
「小さいのに凄いですねぇ。いい戦いぶりでした。本能……何でしょうか?大きくなれば多分一薙ぎで蹴散らせるでしょう」
「翡翠は何が出来るんだろう?」
「翡翠も白龍に似てませんか?」
「敏感だけど……」
「この子達とはまた違うのかも知れませんねぇ」
そのままぐるりと一周すると、森の一部も結界内だとわかった。
「この結界内に翡翠がいたんですよねぇ」
「うん、そこの畑のところだけど。最初猫かと思ったもん」
「ですよねぇ。今は小さな犬に見えるかもしれないですねぇ」
「みんなには見えてないんだよね?」
「ええ。ですが、見える人間も稀にいますので、気をつけてくださいよ?」
「うん」
「さ、帰りましょうか。遅くなると怒られてしまいます」
「そうだね……栞さん心配性だから」
「ただ今戻ました」
パタパタと音が聞こえ、遅い!と言われてしまう。
「そんなに時間はたってませんよ?」
「心配で心配で……近くに居るのは気で分かってましたけど……」
「栞さんごめんなさい」
「悪いのは冬弥様です!かなり大きな悪い気がここまでわかりましたよ!危ないところに雪翔君を連れていったのが悪いのです!」
ツーンとしている栞に肩を落として謝っている冬弥が不憫になり、白と黒を出す。
「キシャッ!キィーッ」
栞の肩に乗って髪を引っ張り何か抗議している。
「きゃっ!何?なんで怒ってるの?」
「白!黒!」
「フゥーッ」
「や・め・て!」
「どういう事?」
「あの悪いものは偶然だと思うんだ。見たこともなかったし。多分だけど、放って置いたらいけなかったモノだったんじゃないかな?それを、退治?したからいいでしょ?って言いたいみたい」
「そう……ね。ごめんなさい、あなた達を怒ってるんじゃないの。私は危ない事はして欲しくなくて……」
何故か白が栞の頭を小さな手で撫で、黒はどうだとばかりに胸を張っている。
「あなた達強いのね。でも、こんな時間に外に出るのは良くないわ。お昼や、私たちがいないところで守ってあげてね」
満足したのか影に戻って行ったので、もう寝なさいと言われ部屋に戻る。
「ゆっきー?」
「何?」
「よく分からないですけど、ひーちゃんが眠りに入りました。金と銀の時と似てます」
「いつ?」
「部屋に入ってきた時に気づいたので、多分ですけど、眠り方が似てますー。どうしましょうか」
「たまに様子みてあげてくれないかな?僕は影の中は見れないから」
「それですそれ!冬弥様や那智様達はみんな影の中を把握出来てるみたいです。ゆっきーはできないのですか?」
「影の中を見る?」
「様子を見ると言った感じです。定期的に気が送られてきますから、その前に様子を見に来てくれてます」
「知らなかった……そんなこと出来るんだね。明日にでも聞いてみるね」
それから数日冬弥は天狐の仕事が忙しいのか、下宿を栞に任せ帰ってくるのも夜中でなかなか話す機会がなかった。
「栞さん心配じゃないの?」
「心配だけど、天狐様のお仕事でしょう?内容も話せないらしくて。でも、この地域の社のことらしいからそんなに心配してないの」
「そうなんだ」
「ねえ、それよりあの子達はどう?仲良くなれた?」
「大分と感情とかわかるようになってきて、少し人形に近づいてきてる気がするんだ。でも翡翠がまだ起きなくて……」
「金ちゃんたちの時も長かったから、様子みましょう」
「栞さんは……その、影の中って見れるの?」
「そうねぇ、なんて言えばいいのかしら。見るというよりも感じるって感じかしら?こればかりは時間をかけていくしかないみたいで、意識を集中する訓練ていうのかな?毎日毎日してて私もやっとそこまで。みんなの気配で元気かどうかわかるくらい。私と那智様とだいたい同じくらい社を守ってても、力の差は出てくるの。那智様はかなり力が強いから、中まで見えてる気がするわ」
「小さいのに凄いですねぇ。いい戦いぶりでした。本能……何でしょうか?大きくなれば多分一薙ぎで蹴散らせるでしょう」
「翡翠は何が出来るんだろう?」
「翡翠も白龍に似てませんか?」
「敏感だけど……」
「この子達とはまた違うのかも知れませんねぇ」
そのままぐるりと一周すると、森の一部も結界内だとわかった。
「この結界内に翡翠がいたんですよねぇ」
「うん、そこの畑のところだけど。最初猫かと思ったもん」
「ですよねぇ。今は小さな犬に見えるかもしれないですねぇ」
「みんなには見えてないんだよね?」
「ええ。ですが、見える人間も稀にいますので、気をつけてくださいよ?」
「うん」
「さ、帰りましょうか。遅くなると怒られてしまいます」
「そうだね……栞さん心配性だから」
「ただ今戻ました」
パタパタと音が聞こえ、遅い!と言われてしまう。
「そんなに時間はたってませんよ?」
「心配で心配で……近くに居るのは気で分かってましたけど……」
「栞さんごめんなさい」
「悪いのは冬弥様です!かなり大きな悪い気がここまでわかりましたよ!危ないところに雪翔君を連れていったのが悪いのです!」
ツーンとしている栞に肩を落として謝っている冬弥が不憫になり、白と黒を出す。
「キシャッ!キィーッ」
栞の肩に乗って髪を引っ張り何か抗議している。
「きゃっ!何?なんで怒ってるの?」
「白!黒!」
「フゥーッ」
「や・め・て!」
「どういう事?」
「あの悪いものは偶然だと思うんだ。見たこともなかったし。多分だけど、放って置いたらいけなかったモノだったんじゃないかな?それを、退治?したからいいでしょ?って言いたいみたい」
「そう……ね。ごめんなさい、あなた達を怒ってるんじゃないの。私は危ない事はして欲しくなくて……」
何故か白が栞の頭を小さな手で撫で、黒はどうだとばかりに胸を張っている。
「あなた達強いのね。でも、こんな時間に外に出るのは良くないわ。お昼や、私たちがいないところで守ってあげてね」
満足したのか影に戻って行ったので、もう寝なさいと言われ部屋に戻る。
「ゆっきー?」
「何?」
「よく分からないですけど、ひーちゃんが眠りに入りました。金と銀の時と似てます」
「いつ?」
「部屋に入ってきた時に気づいたので、多分ですけど、眠り方が似てますー。どうしましょうか」
「たまに様子みてあげてくれないかな?僕は影の中は見れないから」
「それですそれ!冬弥様や那智様達はみんな影の中を把握出来てるみたいです。ゆっきーはできないのですか?」
「影の中を見る?」
「様子を見ると言った感じです。定期的に気が送られてきますから、その前に様子を見に来てくれてます」
「知らなかった……そんなこと出来るんだね。明日にでも聞いてみるね」
それから数日冬弥は天狐の仕事が忙しいのか、下宿を栞に任せ帰ってくるのも夜中でなかなか話す機会がなかった。
「栞さん心配じゃないの?」
「心配だけど、天狐様のお仕事でしょう?内容も話せないらしくて。でも、この地域の社のことらしいからそんなに心配してないの」
「そうなんだ」
「ねえ、それよりあの子達はどう?仲良くなれた?」
「大分と感情とかわかるようになってきて、少し人形に近づいてきてる気がするんだ。でも翡翠がまだ起きなくて……」
「金ちゃんたちの時も長かったから、様子みましょう」
「栞さんは……その、影の中って見れるの?」
「そうねぇ、なんて言えばいいのかしら。見るというよりも感じるって感じかしら?こればかりは時間をかけていくしかないみたいで、意識を集中する訓練ていうのかな?毎日毎日してて私もやっとそこまで。みんなの気配で元気かどうかわかるくらい。私と那智様とだいたい同じくらい社を守ってても、力の差は出てくるの。那智様はかなり力が強いから、中まで見えてる気がするわ」
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