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陰陽の守り神
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「雪翔」
「あれ?那智さん……お社は?」
「影に任せてきた」
「あ、明けましておめでとうございます」
「おめでとう。今夜そっちに行こうと思ってたんだが……」
「儂はかまわんよ。那智が来るということは、他の連中も来るのじゃろう?」
「多分そうだと思います。明日は明日で、夕刻に終わりの儀式がありますので」
「終わりの儀式?」
「正月が終わりますって報告みたいなものだ。あちらに行ってたんだろう?祭りはどうだった?」
「神輿が大きくて屋台もいっぱいで楽しかった」
「そうか。何も無かった訳じゃないだろう?」
「那智よ。お主は地獄耳だのぉ」
「まぁ。毎年ある事ですが、今年は東の祭りが一番派手だと聞いてたので、影に見に行かせただけですが」
「ああ。天狐の出たところが一番派手じゃからのぅ。しっかりスリも殴っておいたし、さらった奴も捕まっておる」
「スリ?」
と久しぶりにジロッと見られ、お財布を取られたことを話すと口をポカーンと開けてこっちを見ている。
「でも、無事だったし……」
「歩いているものはよく狙われるが、座ってる者の財布をとるとはかなりの手練。雪翔、もっと気をつけろ」
「ごめんなさい」
「怪我が無かっただけで良しとするが……」
「何を言っておる。さらわれた時にしっかりと擦り傷だらけじゃったわ!もう治したがな」
撫で撫で……
「え?」
撫で撫で撫で撫で……
「泣かなかったのを褒めてあげますよ。あのような連中はすぐに殺すこともあるし、無事で何よりでした」
撫で撫で撫で撫で撫で撫で……
「那智さん……みんな見てるよ……」
「そうじゃ、お主の社も屋台が出ておるのか?」
「出てますが今日で終わりです。玲の所は新しい社とのこともあって、明日の夜までするそうです。秋彪のところも今日で終わりだったかと」
「こちらもまとめての祭りにすればいいのに面倒じゃのぅ。そういくつも回れんわ」
「そう言わずに今度来てください。季節ごとの祭りもあるので」
「そんなにあるの?」
「あるにはあるが、ここも夏祭りするだろう?それとよく似たものだ」
話しながら屋台を周りそれを夕食がわりにして、ご褒美の飴を買う。
「あ!お爺ちゃん、たこ焼き買ってきていい?」
「一人で大丈夫か?」
「うん、行ってくるね」
たこ焼きを三つ買って、ついでにとフランクフルトも買う。膝の上に置いて進むと、前にいた学校のクラスメイトが椅子に座っていたので引き返そうと車椅子を動かす。
「早乙女?」
ビクッと身体が跳ね上がったかのような感覚に、心臓がバクバクと外に聞こえるのではないかと言うくらい大きく鳴り、早くその場から離れたいのに身体が言うことを聞かない。
「やっぱり早乙女じゃん」
声をかけてきたのは不良達が居なくなってから、クラスで一番強い存在になったグループの人。少し目立つ程度だが、男女とも髪を染めてピアスをし、みんなから一目置かれていた人たち。
「あー。ほんとだぁ。早乙女だ!何してんの?そんなに買ってさ、親と一緒とか?ウケるんだけど」
「あ、あの。僕急ぐから……」
「良いじゃん。お前もこっち座れよ!ってもう座ってるか!」
ゲラゲラと笑われて、意味の無い会話を繰り返し馬鹿にする。
学校でのことを思い出し、吐き気がしてきたところで「なんかこいつおかしくね?」と女子生徒に言われ、みんなが笑いながら頭を軽く叩いたり、わざと車椅子を揺らしてきたりしてきた所で、買ってきたものを取られる。
「あれ?那智さん……お社は?」
「影に任せてきた」
「あ、明けましておめでとうございます」
「おめでとう。今夜そっちに行こうと思ってたんだが……」
「儂はかまわんよ。那智が来るということは、他の連中も来るのじゃろう?」
「多分そうだと思います。明日は明日で、夕刻に終わりの儀式がありますので」
「終わりの儀式?」
「正月が終わりますって報告みたいなものだ。あちらに行ってたんだろう?祭りはどうだった?」
「神輿が大きくて屋台もいっぱいで楽しかった」
「そうか。何も無かった訳じゃないだろう?」
「那智よ。お主は地獄耳だのぉ」
「まぁ。毎年ある事ですが、今年は東の祭りが一番派手だと聞いてたので、影に見に行かせただけですが」
「ああ。天狐の出たところが一番派手じゃからのぅ。しっかりスリも殴っておいたし、さらった奴も捕まっておる」
「スリ?」
と久しぶりにジロッと見られ、お財布を取られたことを話すと口をポカーンと開けてこっちを見ている。
「でも、無事だったし……」
「歩いているものはよく狙われるが、座ってる者の財布をとるとはかなりの手練。雪翔、もっと気をつけろ」
「ごめんなさい」
「怪我が無かっただけで良しとするが……」
「何を言っておる。さらわれた時にしっかりと擦り傷だらけじゃったわ!もう治したがな」
撫で撫で……
「え?」
撫で撫で撫で撫で……
「泣かなかったのを褒めてあげますよ。あのような連中はすぐに殺すこともあるし、無事で何よりでした」
撫で撫で撫で撫で撫で撫で……
「那智さん……みんな見てるよ……」
「そうじゃ、お主の社も屋台が出ておるのか?」
「出てますが今日で終わりです。玲の所は新しい社とのこともあって、明日の夜までするそうです。秋彪のところも今日で終わりだったかと」
「こちらもまとめての祭りにすればいいのに面倒じゃのぅ。そういくつも回れんわ」
「そう言わずに今度来てください。季節ごとの祭りもあるので」
「そんなにあるの?」
「あるにはあるが、ここも夏祭りするだろう?それとよく似たものだ」
話しながら屋台を周りそれを夕食がわりにして、ご褒美の飴を買う。
「あ!お爺ちゃん、たこ焼き買ってきていい?」
「一人で大丈夫か?」
「うん、行ってくるね」
たこ焼きを三つ買って、ついでにとフランクフルトも買う。膝の上に置いて進むと、前にいた学校のクラスメイトが椅子に座っていたので引き返そうと車椅子を動かす。
「早乙女?」
ビクッと身体が跳ね上がったかのような感覚に、心臓がバクバクと外に聞こえるのではないかと言うくらい大きく鳴り、早くその場から離れたいのに身体が言うことを聞かない。
「やっぱり早乙女じゃん」
声をかけてきたのは不良達が居なくなってから、クラスで一番強い存在になったグループの人。少し目立つ程度だが、男女とも髪を染めてピアスをし、みんなから一目置かれていた人たち。
「あー。ほんとだぁ。早乙女だ!何してんの?そんなに買ってさ、親と一緒とか?ウケるんだけど」
「あ、あの。僕急ぐから……」
「良いじゃん。お前もこっち座れよ!ってもう座ってるか!」
ゲラゲラと笑われて、意味の無い会話を繰り返し馬鹿にする。
学校でのことを思い出し、吐き気がしてきたところで「なんかこいつおかしくね?」と女子生徒に言われ、みんなが笑いながら頭を軽く叩いたり、わざと車椅子を揺らしてきたりしてきた所で、買ってきたものを取られる。
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