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陰陽の守り神
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「ただいまー」
玄関が開いていたので声を掛けると、エプロン姿の栞がお帰りなさいと出迎えてくれた。
リビングでお茶を飲んで寛いでいると「冬弥はどうした?」と祖父が栞に聞く。
「お社の方がまだ参拝の方が多くて、もう一日いると言ってました」
「あそこもなかなか大きな社じゃからのぅ」
「ほかの社も大きいよ?那智さんの所はとても綺麗なんだ。改築?したんだって」
「補修工事というやつか。まぁ、古くなれば仕方ないの」
「秋彪さんのところは紅葉が綺麗って言ってたし、玲さんの所は海が近いから朝日がとてもいいって言ってた」
「その中心がここというわけじゃの?」
「はい。明日には下宿の子達も帰ってくる子が増えますし、年明けで受験が決まった子達が部屋を見に来るだろうって言ってました」
「二人で大丈夫なのかね?その、人が増えると賄いも大変じゃろう?」
「食堂の奥に、業務用のスチームオーブンを付けたので、20人分もいっぺんに焼けるんですよ。冬弥様は手際もいいですし、雪翔君も手伝ってくれますし」
「それなんじゃが、雪翔は学校に編入できんのか?一年遅れになるが。頭もいいしやはりこの世界に則って教育は受けた方がと話しておったんじゃが」
「それはお医者様に聞かないと……」
「僕……まだ行くの怖いから……通信の学校なら行けるかなって。月に一二回行けばいいだけみたいだし、家でも勉強してたし。今なら一年生で間に合わないかなとは少し思ったんだ」
「そうね、相談してみましょうか」
「栞さん、じじ馬鹿と思って聞いてほしいんじゃが、なるべく雪翔の思う通りにさせてやってくれんかね。雪翔はまだ若い。傷も癒えておらんから不安じゃろうが、その……気持ちを大事にだな……」
「はい。そうします」
「まだ誰も帰ってきてないんだよね?」
「ええ。明日堀内さんが帰ってくるのは知ってるんだけど、賢司君ももしかしたらって言ってただけだし」
「仕事かな?」
「多分そうだと思うけど、今年は6日から仕事って聞いてるわよ?」
「また慌ただしい一年になりそうだね」
「そうね。でも楽しいでしょ?」
「うん。お爺ちゃんはいつまでいられるの?」
「儂か?儂は明日には帰ることになっておる。今から冬弥の社を見に行こうと思うておるが、雪翔も行くか?」
「行く!待ってて。荷物置いてくるから」
洗濯物だけ出していってと言われ、洗濯機の横のかごに洗うものを入れて、いつもの鞄の中を確認する。
向こうに行く時と使い分けているので、こちらの財布にはこちらのお金、ハンカチにティッシュ。薬が入っている。携帯はポケットに入れてリビングに戻り、行ってきますと言って祖父と社までのんびりと行く。
「あれ?まだ出店出てる」
「こちらはそんなに長くするのか?」
「街によって違うけど……。あ、ポスターだ」
『新年祭』と書かれたポスターの下に、出店は3日までと書かれていた。
「お爺ちゃん、僕階段無理だから回っていかなくちゃ……」
「そうじゃの、前の下宿から行くとするか」
まだ建物も残っていて、その裏道から神社に入ると沢山の屋台が並び、冬弥は眠そうに屋根の上でお神酒を飲んでいた。
「金、銀。冬弥さんに知らせてきてくれる?」
「また綿あめ買ってくれる?」
「うーん、飴でもいい?」
「よし、銀行くぞ!」
二人がふわっと浮いて冬弥の方に行き、こちらを指さすと、手をブンブンと振っている。姿が見えないので、こちらから手を振るとおかしな人に見えてしまうと思い笑って誤魔化すが、参拝に来ている人はかなり多い。
「かなりの混みようじゃな」
「僕も受験の前にここでお参りしたんだよ?」
「ほう。どれどれ……」と絵馬などを見て、ここは受験の神様じゃないんじゃが……とブツブツ言っているので、多分みんな近いからきてるだけだと思うと言うと、そんなものなのか……と肩を落としていた。
玄関が開いていたので声を掛けると、エプロン姿の栞がお帰りなさいと出迎えてくれた。
リビングでお茶を飲んで寛いでいると「冬弥はどうした?」と祖父が栞に聞く。
「お社の方がまだ参拝の方が多くて、もう一日いると言ってました」
「あそこもなかなか大きな社じゃからのぅ」
「ほかの社も大きいよ?那智さんの所はとても綺麗なんだ。改築?したんだって」
「補修工事というやつか。まぁ、古くなれば仕方ないの」
「秋彪さんのところは紅葉が綺麗って言ってたし、玲さんの所は海が近いから朝日がとてもいいって言ってた」
「その中心がここというわけじゃの?」
「はい。明日には下宿の子達も帰ってくる子が増えますし、年明けで受験が決まった子達が部屋を見に来るだろうって言ってました」
「二人で大丈夫なのかね?その、人が増えると賄いも大変じゃろう?」
「食堂の奥に、業務用のスチームオーブンを付けたので、20人分もいっぺんに焼けるんですよ。冬弥様は手際もいいですし、雪翔君も手伝ってくれますし」
「それなんじゃが、雪翔は学校に編入できんのか?一年遅れになるが。頭もいいしやはりこの世界に則って教育は受けた方がと話しておったんじゃが」
「それはお医者様に聞かないと……」
「僕……まだ行くの怖いから……通信の学校なら行けるかなって。月に一二回行けばいいだけみたいだし、家でも勉強してたし。今なら一年生で間に合わないかなとは少し思ったんだ」
「そうね、相談してみましょうか」
「栞さん、じじ馬鹿と思って聞いてほしいんじゃが、なるべく雪翔の思う通りにさせてやってくれんかね。雪翔はまだ若い。傷も癒えておらんから不安じゃろうが、その……気持ちを大事にだな……」
「はい。そうします」
「まだ誰も帰ってきてないんだよね?」
「ええ。明日堀内さんが帰ってくるのは知ってるんだけど、賢司君ももしかしたらって言ってただけだし」
「仕事かな?」
「多分そうだと思うけど、今年は6日から仕事って聞いてるわよ?」
「また慌ただしい一年になりそうだね」
「そうね。でも楽しいでしょ?」
「うん。お爺ちゃんはいつまでいられるの?」
「儂か?儂は明日には帰ることになっておる。今から冬弥の社を見に行こうと思うておるが、雪翔も行くか?」
「行く!待ってて。荷物置いてくるから」
洗濯物だけ出していってと言われ、洗濯機の横のかごに洗うものを入れて、いつもの鞄の中を確認する。
向こうに行く時と使い分けているので、こちらの財布にはこちらのお金、ハンカチにティッシュ。薬が入っている。携帯はポケットに入れてリビングに戻り、行ってきますと言って祖父と社までのんびりと行く。
「あれ?まだ出店出てる」
「こちらはそんなに長くするのか?」
「街によって違うけど……。あ、ポスターだ」
『新年祭』と書かれたポスターの下に、出店は3日までと書かれていた。
「お爺ちゃん、僕階段無理だから回っていかなくちゃ……」
「そうじゃの、前の下宿から行くとするか」
まだ建物も残っていて、その裏道から神社に入ると沢山の屋台が並び、冬弥は眠そうに屋根の上でお神酒を飲んでいた。
「金、銀。冬弥さんに知らせてきてくれる?」
「また綿あめ買ってくれる?」
「うーん、飴でもいい?」
「よし、銀行くぞ!」
二人がふわっと浮いて冬弥の方に行き、こちらを指さすと、手をブンブンと振っている。姿が見えないので、こちらから手を振るとおかしな人に見えてしまうと思い笑って誤魔化すが、参拝に来ている人はかなり多い。
「かなりの混みようじゃな」
「僕も受験の前にここでお参りしたんだよ?」
「ほう。どれどれ……」と絵馬などを見て、ここは受験の神様じゃないんじゃが……とブツブツ言っているので、多分みんな近いからきてるだけだと思うと言うと、そんなものなのか……と肩を落としていた。
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