下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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七泊八日

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居ないと思っていたら、祖母二人が「こっちよ!」と手を振っている。

「ここは?」

「ちょっと大きな屋台のようなものじゃ。休憩所に使われておる。周りの屋台のものも持ち込めるから何か買いに行くか?」

「うん!」

「儂は残っておるから近くを見て回ってくるといい」

「爺さん、俺がいるからっていいのか?」

「構わん。お主は裏切らんじゃろう?」

「確かに。栞殿の爺さんはどうする?」

「儂は着いていくぞ?たしか酒の屋台があったはずだからの」

「儂の分も頼む」

「行ってくるね!」

神輿周りの屋台はいろんな店が出ていて、人種も様々だった。

「熊が焼きそば焼いてる……」

「祭りの時期は色々なところから集まるんだよ。あそこの屋台はイカ焼き。たこ焼きもあるし、串魚もある。薬膳粥も人気でうさぎが来てるはずなんだが……」

何を買おうかなと見ていると、やはり持ち運びやすいたこ焼きや焼きそばになってしまう。

「お爺ちゃん」と栞の祖父を呼び、 いらっしゃい!と元気に掛け声している屋台を指さす。

「あれは何?」

「ああ、見たことなかったか?あれは薄い皮に焼いたうどんが巻かれておるんじゃ」

「見ただけだとクレープみたい……」

「くれえぷ?」

「うん、薄い皮に生クリームとか果物が沢山乗ってて巻いてあるの。美味しいんだよ」

「次に行った時に食べてみようかの。甘いものは好きなんじゃ」

三郎と四郎がみんなの分の焼きそばなどを持ってくれたので、フランクフルトならぬウインナーの詰め合わせなども買って戻る。
祖父はしっかりお酒を持っており、戻るとお茶やジュースなどが置かれていた。

みんなに配って、周太郎と三郎達にも渡す。

「我々は……」

「いいから!同じようにしてないと変に思われるし、お腹空くでしょ?」

それに対して祖父はケラケラと笑っていたが、奥の方にあった射的などもしたいと言うと、時間はあるからゆっくりと行けばいいと言われ、ご飯を食べる。

「雪翔、お薬は飲まなきゃね」

「うん。眠くならないといいんだけどなぁ」

「帰りは遅くなるけど、日付が変わる時に花火が上がるからびっくりして起きるわよ」

「花火上がるの?」

「今年はかなり期待できると聞きましたよ?お客さんが言ってたから」

「儂も聞いたな。城の方で上がるらしい」

「お爺さん、見に行きましょうよ」

「昴よ、お主聞いておったか?」

「まぁ。新たな天狐も来ましたから余計にでしょうね。城の裏手からなのでもう少し前に行くだけで見れると思いますよ?」

「お爺ちゃん」

「そんな顔をするな。ちゃんと見に行く。だからちゃんと食べなさい」

「やったぁ!あ、周太郎さん、たこ焼き一個頂戴!」

みんなでつついて食べて、お腹いっぱいになったところで射的に行く。

三回で的に当たるのかな?というほど小さなものから大きなものまであるが、倒れないとダメだというので、一番手前の軽そうなものを狙う。
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