下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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七泊八日

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「本来は御館様の命でなければ姿は出せないのですが……」

「ごめんね。どこにも出られないから……」

「何かお聞きになりたい事でも?」

「二人の名前は教えてもらえないんだよね?」

「申し訳ございません。ですが祭りの際に町民としていくので、その際は三郎・四郎と呼んでいただければ」

「わかった」

今話しているのが三郎、無口な少し体の大きい方が四郎と覚え、この狐の世界の地図を出して、一つ指を指す。

「ここなんだけど、これこの世界の世界地図じゃないよね?なんか大陸に見えるんだけど」

「それならば四郎の方が分かるかと」

「はい……この妖街は、その名の通り狐以外にも妖が住んでおります。その地図は狐のエリアの地図となり、雪翔様の仰っている大陸とは橋で繋がっております」

「狐エリア?他にもあるの?例えば犬エリアとか?」

「いえ、兎の妖は主に薬などを作っており、離れた小島に住んでおります。そこから問屋が買い付けなどして売っております。他は地図に書いていないだけで大陸で繋がっており、狸の里などあります。後は大抵妖怪が縄張りを持って住んでおりますが、行くことはないので地図に載っていないのでしょう」

「妖怪ってどんなの?」

「雪翔様がご存知かわかりませんが、ろくろ首にぬらりひょん、小豆洗いに河童に朧車。天狗は森の中におりまして、そこに覚(さとり)なども居ります」

「なんで地図に書いてないのかな?」

「三郎……」

「それは天狐様が禁止とされたからです。交流がないわけでも、行ってはいけない決まりも無いのですが、場所によっては入らない方がいい所もありますので」

「お祭りには来るの?」

「来ます。朧車も空を飛んでいるか、その変で誰かを乗せたりと稼ぎ時ですし、祭りはこの狐エリアが一番大きな祭りを各地の中ではしますので」

「みんな仲良くすればいいのにね?」

「昔の話ですが、この妖怪の世界といえばわかりやすいでしょうか……かなり大きな戦がありました。その時に結ばれた協定が、各地に干渉をしないとなり、時を経てかなり規則はゆるくなりましたが、出入りの際はやはり行くのも戻るのも厳しくなっております」

「兎さんとは仲いいんだよね?」

「兎は中立の立場ですので。それに、島自体が薬草の宝庫で、誰も手出しはしません」

「僕も兎になりたいよ……あれもダメこれもダメじゃみんな仲良く出来ないもん」

それからは行ったことはあるのかと聞いて、四郎が行ったことが有るというのでどんな街だったかと聞いたりして時間を過ごし、夕方になり冬弥と栞が部屋に来た時に二人が居たことに驚いていたが、そろそろ行くというので、社まで行きたいとごねて連れていってもらう。

「雪翔君、あっちで帰ってくるの待ってるわね」

「うん、着物も持って帰っていい?」

「良いわよ。私も畳み方くらい知ってるから」

「紫狐は連れていきますが、その二人からは絶対に離れないでください。三郎と四郎でしょう?私も何度か会いましたが、一族の中でも一番若い二人です。後周太郎と行動は共にしてくださいよ?それと、怪我と……」

「怪我しないもん。大丈夫だよ、みんな居てくれるから」

撫で撫で……

「兄にも色々と頼んでありますし、祭りには昴さんも来てくれるそうです。仲良くしてください」

「うん。昴さんて親戚のおじさんみたいだよね……」

「そんな感じですねぇ。でも頼りになる人ですから」

「二人共そんなに心配しないで?僕も気をつけるから」

「分かりました。では三郎、四郎。雪翔を任せました」

「はっ!」
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