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七泊八日
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お願いと頼むと二人目の前に音も立てずに降りてきて、頭の被り物をとる。
見た感じまだ二十代後半の青年にしか見えない。
「姿を見せてくれてありがとう。宜しくね」
「とんでもございません。御館様より雪翔坊ちゃんの命に従うよう言われております」
「物々しい感じだけど、何が起きてるの?」
「それがまだハッキリとしてないのです。昨晩までは何事もなく、今朝の一件ですぐに動き出したのですが……」
「そうなんだ……買い物に行ったみんなは大丈夫なの?」
「数人、町人に変装して見守っておりますのでご安心ください」
「うん……」
「キュゥ?」
「大丈夫だよ?みんなお友達だからね?」
そう言うとまた寝てしまったが、これからの生活がどうなるのかと心配になる。
「坊っちゃま。新たに行商人になり、我々が交代で出入りしますので、何も心配はいりません」
「うん、でも……こんな年末に何でだろうね?」
「よくある事です。特にこの界隈には野党等も出ますし、それを排除してきたのが我々ですから」
「強盗ってこと?」
「そうも言います」
家の中にいてくれると助かると言われ、庭だけは散歩がてら出たいとお願いし、二人には戻ってもらって書庫へと行く。
「何処だろう?しーちゃん、明かり貸してくれる?」
「紫狐が大きくなります」
上から明かりを照らしてもらい、新しく入った本を探す。
「あった!この辺り……かなり増えてる」
一つずつ見ていくと、テレビで見た九字の切り方や呪文の数々と言った本が並べられており、パラッと読むと呪文ではなくいろいろな形で結界を貼ったり、人が来たのがわかるように感知できたりと、映画や本で見たことが詳しく書かれていた。
「こちらの人から見たら呪文なんだ……」
三冊手に取り書庫を出る。
日はまだ高く天気もいいので庭に降りて台所を見に行くとまだみんな帰ってきていない。
裏の木戸がキィキィと鳴っているので閉めに行くと、ぬっと手が出てきて腕を掴まれる。
口元に臭い布を押し付けられ頭がぼーっとしているところに争うような音が聞こえたが、そのまま意識を手放してしまう。
「あ__」
「坊っちゃま、申し訳ありません。使用人の振りをし、一緒に捕まるしかなく……」
「ここどこ?」
「多分、農村近くの洞窟かと」
「出られる?」
「いつでも。ですが、坊っちゃまを担いでいかなければなりませんので、もう少しだけ助けを待ちたいと思うのですが」
「みんな場所知らないんじゃ……」
「ちゃんと目印は置いてきました。我らにはあのような薬品は効きません。ただ、車椅子までは……」
「立つことは出来るよ?少しなら掴まれば歩けると思う……」
見た感じまだ二十代後半の青年にしか見えない。
「姿を見せてくれてありがとう。宜しくね」
「とんでもございません。御館様より雪翔坊ちゃんの命に従うよう言われております」
「物々しい感じだけど、何が起きてるの?」
「それがまだハッキリとしてないのです。昨晩までは何事もなく、今朝の一件ですぐに動き出したのですが……」
「そうなんだ……買い物に行ったみんなは大丈夫なの?」
「数人、町人に変装して見守っておりますのでご安心ください」
「うん……」
「キュゥ?」
「大丈夫だよ?みんなお友達だからね?」
そう言うとまた寝てしまったが、これからの生活がどうなるのかと心配になる。
「坊っちゃま。新たに行商人になり、我々が交代で出入りしますので、何も心配はいりません」
「うん、でも……こんな年末に何でだろうね?」
「よくある事です。特にこの界隈には野党等も出ますし、それを排除してきたのが我々ですから」
「強盗ってこと?」
「そうも言います」
家の中にいてくれると助かると言われ、庭だけは散歩がてら出たいとお願いし、二人には戻ってもらって書庫へと行く。
「何処だろう?しーちゃん、明かり貸してくれる?」
「紫狐が大きくなります」
上から明かりを照らしてもらい、新しく入った本を探す。
「あった!この辺り……かなり増えてる」
一つずつ見ていくと、テレビで見た九字の切り方や呪文の数々と言った本が並べられており、パラッと読むと呪文ではなくいろいろな形で結界を貼ったり、人が来たのがわかるように感知できたりと、映画や本で見たことが詳しく書かれていた。
「こちらの人から見たら呪文なんだ……」
三冊手に取り書庫を出る。
日はまだ高く天気もいいので庭に降りて台所を見に行くとまだみんな帰ってきていない。
裏の木戸がキィキィと鳴っているので閉めに行くと、ぬっと手が出てきて腕を掴まれる。
口元に臭い布を押し付けられ頭がぼーっとしているところに争うような音が聞こえたが、そのまま意識を手放してしまう。
「あ__」
「坊っちゃま、申し訳ありません。使用人の振りをし、一緒に捕まるしかなく……」
「ここどこ?」
「多分、農村近くの洞窟かと」
「出られる?」
「いつでも。ですが、坊っちゃまを担いでいかなければなりませんので、もう少しだけ助けを待ちたいと思うのですが」
「みんな場所知らないんじゃ……」
「ちゃんと目印は置いてきました。我らにはあのような薬品は効きません。ただ、車椅子までは……」
「立つことは出来るよ?少しなら掴まれば歩けると思う……」
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