下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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七泊八日

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おはようと起きていくと、祖父しかまだいなかったので、お昼すぎには出来ると話すと、できたら持ってきて欲しいと言われた。箱があるそうで、ちゃんと包んで渡さないとと笑っていたが、それもすると言うと「実は細かいことは苦手なんじゃ」と照れくさそうに教えてくれた。

「そうだ。あのね、栞さんのお爺ちゃんが言ってたんだけど……」

温泉があるとの話をすると、明日みんなで行くか?と聞かれたので、楽しみにしてると話をしているとみんなが食事の部屋に入ってきた。

「雪翔早いな」

「うん。昨日早く寝たからかな?」

「早起きはいいことだが、リハビリとやらはやってるのか?」

「簡単な運動だけだからやってるよ。一応腫れた時のために湿布も持ってきてるけど大丈夫みたい」

「腫れたのか?」

「リハビリの後に1回だけ。話に聞いてたより大したことなかったんだけど、慣れてくればそれも無くなるみたいだよ?」

「無理はするなよ?冬弥に怒られるの何故か私だからねぇ」

「そうなの?お爺ちゃんかと思ってた」

「儂も怒られるぞ?それに帰ってくるまでの注意事項とか言ってくどくどと……。子を持つとみんな口うるさくてかなわんな」

「産まれたら私も注意とかすると思いますけど?」

「また増えた……今は育て方が違うとか、あれもこれも違うと言われるでのぅ」

「父上、時代が変わってきてるんですよ?」

「ねぇ、僕ずっと狐の姿で生まれると思ってたんだ。違うって教えてもらったけど、育つのも早いの?」

「あまり人の子と変わりませんよ?」

「良かったぁ。じゃあ僕おじさんになるの?」

「従兄弟になるよ。年齢的にはすぐに越されちゃうけどお兄さんかな?」

「その方がいい。おじちゃんとか呼ばれたら絶対に僕お兄ちゃんて教え込むと思う」

「儂は爺さん決定じゃがの。それよりも今日は遅くないか?」

「見てきます」

僕も行こうか?と言うと、待ってていいと言われたので任せる。

少ししてからお膳が運ばれてきて、ご飯は何故かお粥だった。

「えーと……」

「ごめんねぇ。鶏が産んでなくてねぇ……魚もなくて困ってたのよ……」

「いつもの行商人は?」

「朝一番で来るはずなんですけどねぇ、それが来なくて。体でも壊したのかしらねぇ」

「そうか。儂は構わんが……」

「僕も気にしないよ?」

ご飯を食べてからみんなで土間へと行くと、まだ行商人が来ていないとのことでみんな困っていた。

「周太郎、荷車を引いてみんなで買出しに行って来るのじゃ。乗せられるだけ乗せてきなさい」

「はい」

みんながバタバタとしているので、仕方なく部屋に篭って彫り物を続けようと支度していると、つや出しやヤスリなどを周太郎が持ってきてくれ、「今日は出かけないほうがいいかもしれません」と言われた。

昼まで彫り物をし、簡単にお昼を食べてから仕上げをして祖父に見せに行く。

「どうかな?」

「儂から見てもこれは立派なものじゃ。婆さんも喜ぶ。雪翔、この箱にこのリボンとやらを掛けてくれんか」

綺麗な箱に櫛を納めて丁寧にリボンをかける。

「出来たよ?お爺ちゃん、何かあったの?」

「調べさせておるが、今日は外に出ては行かんぞ?」

「周太郎さんにも言われたよ?」

「そうか……」

「何かあったから買い物沢山してこいって言ったんだよね?」

「雪翔には隠し事は出来んな……」
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