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七泊八日
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翌朝はご飯を食べてから二人を送りに神社へと行く。
「雪翔、いい子で待ってるんですよ?」
「そんなに子供じゃないもん」
「薬とリハビリの運動忘れちゃダメよ?」
「大丈夫だから楽しんできてよ」
みんなに見送られ人の世界……人間界へと向かった二人の後には四人の祖父母と京弥夫妻、周太郎が残った。
「さて、帰るとしようかの」
「僕、もう少し神社の周り散歩してから帰る」
「じゃあ、お昼にうちに来なさい。一緒にお昼でも食べよう」
いい?と祖父を見るとニコニコと笑っているので、お昼前に行くと伝え、いつものように周太郎が残りみんなが帰ったあとに、誰にも言わないでね?と彫り物の道具一式と、簪を出す。
「この形は櫛ですね。形によって言い方など変わりますが、御館様の年齢の方ですと一括りに簪と呼ばれる方が多いです」
「そうなんだ。これお婆ちゃんへの贈り物だから家で出来なくって……」
「大丈夫です。言いません。毎年私たち使用人からも贈り物を渡しているのですが、今年は女衆が張り切ってましたので私はまだ知らないんです」
「お祝いとかするんでしょ?」
盛大にしますと聞いてまた楽しみが増えた。
カリカリと集中して彫っている間、周太郎には暇をさせてしまうと思い、ひーちゃんと金と銀を出して紫狐と一緒に遊んでいてもらう。
「ンギューゥ!!!」
「何?今の声……」
「ひーちゃんメッなのです!ゆっきーは今大切なお仕事してるから遊べませんー!」
「ンギュー!!!」
「はいはい。もう少し待っててね……それ怒った声なんだ。初めて聞いたよ」
「坊ちゃん、この狐たちは……」
「金と銀は冬弥さんから。翡翠は僕が拾ったの」
「あちらにも居るんですね」
「狐?」
「我々でもなかなか出会えません。私で影が四匹です。それでも使用人の中では多い方なのと、この体格なので護衛を任されることが多いですが、この狐は……我々の影と違いますよね……?」
「そうみたい。僕もまだ詳しくわからないんだけど、式神がどうのこうの難しくて」
「陰陽道ですか?」
「陰陽道?陰陽師じゃなくて?」
「言い方の違いだけだと聞いてますが、それだとこの翡翠様、金と銀様はかなり徳の高い方かと」
「様はいらないって。まだ小さいからどんな力があるのかもわからないんだ。僕も色々調べてるんだけど……何か知ってる?」
「そういったものがあるとだけしか……悪狐や野狐などは退治されるとも聞いたことがあるくらいで他は……」
「星占いとかもするみたいだよ?」
「星読みですか。星でしたら夜はここからの眺めは良く見えて綺麗ですよ」
「それは夏にしておくよ。今は寒いんだもん……と。これで粗方削れたかな。細かいところは帰ってからして……うん、間に合いそう!」
「これはまた見事な」
「まだ大まかに削っただけだよ。ここから細かくなるから机がやっぱりいるかな」
「部屋でされるのが一番でしょう」
「昼寝って言って彫ろうかなって思ってるんだけど」
「何かありましたら呼んでください。前にも言いましたが耳だけは良いので」
「鼻もでしょ?」
「そうです。そろそろ行きましょうか」
無理やり翡翠を影に戻し、呉服問屋の前までくる。
「雪翔、いい子で待ってるんですよ?」
「そんなに子供じゃないもん」
「薬とリハビリの運動忘れちゃダメよ?」
「大丈夫だから楽しんできてよ」
みんなに見送られ人の世界……人間界へと向かった二人の後には四人の祖父母と京弥夫妻、周太郎が残った。
「さて、帰るとしようかの」
「僕、もう少し神社の周り散歩してから帰る」
「じゃあ、お昼にうちに来なさい。一緒にお昼でも食べよう」
いい?と祖父を見るとニコニコと笑っているので、お昼前に行くと伝え、いつものように周太郎が残りみんなが帰ったあとに、誰にも言わないでね?と彫り物の道具一式と、簪を出す。
「この形は櫛ですね。形によって言い方など変わりますが、御館様の年齢の方ですと一括りに簪と呼ばれる方が多いです」
「そうなんだ。これお婆ちゃんへの贈り物だから家で出来なくって……」
「大丈夫です。言いません。毎年私たち使用人からも贈り物を渡しているのですが、今年は女衆が張り切ってましたので私はまだ知らないんです」
「お祝いとかするんでしょ?」
盛大にしますと聞いてまた楽しみが増えた。
カリカリと集中して彫っている間、周太郎には暇をさせてしまうと思い、ひーちゃんと金と銀を出して紫狐と一緒に遊んでいてもらう。
「ンギューゥ!!!」
「何?今の声……」
「ひーちゃんメッなのです!ゆっきーは今大切なお仕事してるから遊べませんー!」
「ンギュー!!!」
「はいはい。もう少し待っててね……それ怒った声なんだ。初めて聞いたよ」
「坊ちゃん、この狐たちは……」
「金と銀は冬弥さんから。翡翠は僕が拾ったの」
「あちらにも居るんですね」
「狐?」
「我々でもなかなか出会えません。私で影が四匹です。それでも使用人の中では多い方なのと、この体格なので護衛を任されることが多いですが、この狐は……我々の影と違いますよね……?」
「そうみたい。僕もまだ詳しくわからないんだけど、式神がどうのこうの難しくて」
「陰陽道ですか?」
「陰陽道?陰陽師じゃなくて?」
「言い方の違いだけだと聞いてますが、それだとこの翡翠様、金と銀様はかなり徳の高い方かと」
「様はいらないって。まだ小さいからどんな力があるのかもわからないんだ。僕も色々調べてるんだけど……何か知ってる?」
「そういったものがあるとだけしか……悪狐や野狐などは退治されるとも聞いたことがあるくらいで他は……」
「星占いとかもするみたいだよ?」
「星読みですか。星でしたら夜はここからの眺めは良く見えて綺麗ですよ」
「それは夏にしておくよ。今は寒いんだもん……と。これで粗方削れたかな。細かいところは帰ってからして……うん、間に合いそう!」
「これはまた見事な」
「まだ大まかに削っただけだよ。ここから細かくなるから机がやっぱりいるかな」
「部屋でされるのが一番でしょう」
「昼寝って言って彫ろうかなって思ってるんだけど」
「何かありましたら呼んでください。前にも言いましたが耳だけは良いので」
「鼻もでしょ?」
「そうです。そろそろ行きましょうか」
無理やり翡翠を影に戻し、呉服問屋の前までくる。
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